ニューヨーク

「ニューヨーク (2001年9月10日の話)」

 僕が買物をしている途中、一年に一度通るか通らないかというくらいに時々しか行かない、福岡の新天町という商店街を偶然横切っていたら、知り合いの女の子とバッタリ会った。その半年前まで僕と一緒にテレビ番組の仕事をしていて、その仕事をやめて英語を勉強するためにニューヨークに行った子だった。帰国したばかりだと言う。
 しばらく立ち話をしていると、そこにもうひとり僕の知り合いの女性が通りかかった。こちらは大学の同級生で、3年前からニューヨークで通訳の仕事をしている人だ。聞けば日本には年に2日か3日しか戻らないということだった。
 当然女性2人は面識がなかったのだが、ニューヨークつながりということで、3人でしばらく立ち話をして別れた。その日一日、僕の頭の中には、普段は何の縁もない「ニューヨーク」という言葉が印象深く残っていた。
 その日の夜の事なのである。アメリカで同時多発テロが起き、ニューヨークの貿易センタービルが倒壊したのは。だからといって、僕に未然にその事件を防いでほしくてそんな情報がもたらされたわけではない。ただ、必要な情報というのは、例えばこのような形でもたらされますよ、という例なのであった。

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