NHKについて改めて考えてみた

ここ一ヶ月あまり、実家で母の介護を手伝いながら、父と一緒に暮らしていたのだが、実は僕の父は定年までNHKでカメラマンをしていた。

それで、実家に滞在している間は、基本的にテレビはNHKが点いているのだ。逆に僕は父への反発心もあって、大学生くらいの時から、基本的にNHKの番組は見ていない。

フリーの映像ディレクターをしていた時に、友人の派遣会社からの依頼で、2年間ほどNHKの松山放送局で働いたことがあるが、これは父とは全く関係のないルートからの話であった。

それで父と一緒に実家でテレビを見ていて、「ワイドナショー」のゲストコメンテーターで神田愛花が出ていたのだが、父が「この子は前はうち(NHK)でアナウンサーをしていたんだよ」と言った。

もう定年して20年くらい経つのに、まだNHKのことを「うちの会社」と思っている。そして未だにNHKの番組を見続け、NHKの番組を基準にして色々なことを認識している。例えば神田愛花のことを「NHKを退社してフリーになって、今はこんなところ(ワイドナショー)に出ているのか」と認識している。有働由美子さんが「ニュースゼロ」のキャスターをやっていることも知らない。「ブラタモリ」のアシスタントをしていた桑子さんや近江さんや林田さんというアナウンサーのことを当然僕も知っているだろうという前提で話して来る。

そして、基本的にNHKしか見ないから、神田愛花や有働由美子のことを「最近さっぱり姿を見かけない」と思っているのだ。そして放送局の中でNHKのことを一番上位と思っているので、NHKを辞めたりするから最近さっぱり姿を見かけなくなった、と思っているのだ。

「チコちゃんに叱られる」のチコちゃんの声も「これは男がやっているんだろう?」と言う、木村祐一のことも知らない。「日本人のおなまえっ!」を見て、「NHKの番組はなかなかよく調べて作っている」と感心したりする。

父はもう80代後半だから、この程度の認識でもいいかもしれないが、世の中にはこんな風に、NHKのことをとても立派な会社だと思っており、NHKの番組のことを、ちゃんとしたいい番組だと思っている人が、一定数いるんだろうなと思うと、気が遠くなるような思いだ。

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