平尾霊園で

「タクシー運転手の間の噂」

 これは福岡の年配のタクシー運転手の間ではかなり有名な話らしいのだが、あるタクシー運転手が深夜に平尾霊園の前を走っていたら、制服姿の女子中学生がそのタクシーを止めた。ちなみに平尾霊園というのは、福岡市の中心部にある大きな霊園です。

 「こんな深夜に中学生が一人で?」と不信に思ったが、言われるままに走りはじめた。かなりの遠距離で、久留米まで行ったらしい。女子中学生はある家の前でタクシーを止め「お金をもらって来ますから」と言ってその家に入ったきり、いつまでも出て来ない。

 タクシー運転手がその家の呼び鈴を鳴らし、出て来た人に事情を説明すると、「その子というのはこの子ですか」と写真を見せられたが、それは確かにその女子中学生だった。

 その写真は遺影で、その日に平尾霊園に納骨したばかりだったという。もう午前3時頃になっており、そのまま朝までその家に引き留められて、夜が明けたらその子の母親を乗せてもう一度平尾霊園まで送った。そしてそのタクシー運転手さんは、その一件のあと、タクシーの仕事を辞めたそうだ。

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