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農薬は本当に危険なのか(後編)

前編で農薬登録制度と農薬の必要性について、中編では農薬の作用メカニズムについて書いてきました。
このシリーズもいよいよクライマックスです。

農薬を直接口にする訳ではない

中編で紹介した農薬たちについても、インターネットで検索すると必ずと言っていいほど「危険性」や「中毒」といったアブナイ香りのする関連ワードが並んで出てくる。

しかし、よくよく見てみると「飲み込んだり吸い込んだりすると中毒症状が現れる」と書いてある。
農薬というのは本来、原液を直接飲んだり吸ったりするものではないから、こうした事例を根拠に農薬を危険なものとして否定するのは見当違いだと言えるだろう。

残留農薬とは

むしろ、われわれ消費者が農薬の毒性について気にかけるべきは残留農薬だが、それについても安全性は担保されていると考えて良いだろう。
※残留農薬…農産物に残っている農薬

残留農薬については、以下の2つの値を両方みたす基準値が国によって定められており、基準値を超えた農作物は出荷できないことになっている。

①許容一日摂取量(毎日一生涯にわたって摂取し続けても健康への悪影響がないと推定される一日当たりの摂取量)
②急性参照容量(24時間又はそれより短時間の間に摂取しても健康への悪影響がないと推定される量)

この基準値には科学的根拠が十分あって、安全だと考えていいのではないかとぼくは思う。

普段食べている野菜に化学物質が少しでも残っている、というのは感情論的には気持ち悪いかもしれないが、科学的に考えるとそんなことはないと言える。

日本は海外の国に比べて残留農薬の基準値が緩い、と言われることがある。

だが、そもそも日本と海外では食生活が異なる。
例えば小麦1つとっても、日本と欧米では1日の摂取量は違う。
だからこの場合、小麦の残留農薬の基準値が欧米の方が厳しくても、結局の摂取量は変わらないだろう。

さらに言うと、人種による体質の違いもあるから急性参照容量も国によって違ってくるのは当然のことだ。

農薬の基準値が国ごとに違うのは、ちゃんとした理由がある。

日本の農作物は海外に比べて危険だとか、安全だとか一概に言えた話ではないのだ。

そもそも有機農業とは

そもそも有機農業とは何なのか。
法律上は以下のように定義されている。

「有機農業」とは、化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこ と並びに遺伝子組換え技術を利用しないことを基本として、農業生産に由来する環境への負荷 をできる限り低減した農業生産の方法を用いて行われる農業をいう。

「有機農業の推進に関する法律」

あれ、有機農業って安全で高品質な農作物を提供するためのものじゃなかったの?

消費者目線の農業かと思いきや、環境目線だったという、、
でも、化学肥料や農薬を使わないことで環境に優しいなら何も問題はない。むしろ大歓迎ですよね。

さいごに

農薬の安全性と必要性について、たっぷりと気が向くまま書いた。

「農薬は危険ではない」「農薬は危険だ」どちらの立場に立つにしても、感情論や受け売りではなく、いわゆる“エビデンス”に基づいた意見を言える人でありたいと思う。

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