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とある絵描きの回顧録(5年目ver)

帰り道、バスに揺られながらTwitterのTLを眺めていたら『#私の絵柄変化5年紀』というハッシュタグが回ってきた。
2019年から始まり、2023年までの絵柄の変遷を見て楽しもうという絵描き向けの企画だ。
5年紀。2019年から始まるそれを見たとき、私の中に何ともよくわからない感情が沸き上がるのを感じた。
それは喜びであり、悲しみであり、寂しさであり、焦りであり、恐怖であった。

(2019年から!? 参加できるじゃん!!)
ずっと見かけはしていたものの、なかなか参加できなかった年代を跨いだ遡り系のハッシュタグ。
2018年10月6日。私がデジタルで初めて絵を描き始めた日。
遡って2018年3月9日。私がアナログで初めて模写を始めた日。
そう、私が意識して絵を描き始めてから丸5年という月日が経っていたのだ。
丸5年という月日が、経ってしまっていたのだ。

この話は一人の絵描きの自己中心的な回顧録であり備忘録である。
あまり面白いものではないかもしれない。おまけに長いし。ごめんね。
でもこの節目に、この記憶を忘れ去ってしまう前にどうしてもどこかに纏めておきたかったのだ。

とりあえず5年間の変遷はこちら


全員同じキャラ、各年2~4月のイラスト

顔だけでも成長が見える、気がしますね。
もうちょっと遡って、詳しく見ていきますよー。

神絵師になりたがった0年目

あの日私は、一次創作の文章畑にいた。
掌編や短編をTwitterで発表し、仲間内で読み回したり、優しいフォロワーたちと感想を言い合ったりして楽しく活動していた。
正直人には恵まれていたし、このころから失踪癖はあったものの、真剣に文章に取り組んでいた。

その頃の私の絵に対する考え方は、
【どっかの天才とか神様みたいな人が作り出す魔法みたいなもの】
こんな感じだった。

ところがその認識を改めさせる出来事があった。
詳しくは以前語った気がする。

とにかく、もしかして私だって必死に頑張れば絵が描けるようになれるんじゃないか!?
美術の評価が万年2だった私だって、棒人間しか描けないような私だってもしかしたら!
あんな絵が、私の手であんなキャラクターが、世界が描けるのかもしれない……。

そんな考えは浮かんでは消えまた浮かぶものの、なかなか一歩が踏み出せない。
だって私だよ!?
これだけ絵が下手で、絵がコンプレックスで、もういい歳で。言い訳ばかりが浮かんで絵への憧れを引きずりおろす。

そんなとき、全く関係のない容件でちょうど絵を描いている友人と初めて通話する機会があった。
「絵、描いてみたら? 見てやるからさ」
多分相手も軽い気持ちだったと思う。絵を描きたいなんて言った覚えもないもん。
「せやなー、描いてみよかな。適当に」
出たのは軽口だったが、私はあの時少し肩が軽くなった気がしたのを覚えている。

絵を描き始めるときに、私は何となく目標を立てた。
『10年で神絵師になる』
自分で言うのもなんだが、もともと努力とか勉強とかはちょっと好きなタイプだ。目標に向かって頑張るのが好きだ。だからとりあえず、適当に。10年で、神絵師。何もわかってなかったあのころだからこそ立てられたであろう、そんな目標を立てた。
今考えると笑っちまうような目標だが、なぜだろう、今でもずっと頭の隅の方に居座って離れない。

とにかく楽しかった1年目

伸びしろしかねえ。

本邦初公開! 5年前の本気絵!!

まず半年はがっつり摸写をしました。
当時勧められてハマってたアイドルマスターシリーズ、FGOというゲームのキャラクター。はたまた買ってきた画集の模写。

3月から8月まで6カ月、ほぼ毎日絵を描いてました。えらすぎ。
まず変わったのはスピード。1枚の模写に3時間とかかかっていたのが気がつけば2時間、1時間とスピードが上がっていく。
気が付かなかったけれど上がったのはクオリティ。今見返すと雲泥の差である。
摸写をネットにあげるのは罪悪感があるので残念ながらここでは割愛させてもらうが、とにかくもりもり描いていた。
この時ありがたかったのは、あの日声をかけてくれた友達が絵を毎回見てくれたことである。
ただただ「ええやんけぇ」と返してくれた。
たまに「お、よくなったやんけぇ」とも返してくれた。
今見返すとどうお世辞にも「ええやんけぇ」な絵ではない。
ホントに感謝しかない。

今見たら「え?」ってなるような絵でも、紙の上に自分が顕現させていることに感動していた。

半年絵が続いたので、液タブを買った。
ペンタブを一度借りたのだが、設定がわからず断念した機械音痴だったのだ。円を描いたら楕円になる!?
それからデジタルで摸写を始めた。手探りでやった。レイヤーってなんや……。レイヤー効果ってなんや……。そもそもペンはどれを使えばええんや……。

あれこれいじること2か月。10月6日。初めて模写以外でオリジナル絵を描いてみようと思った。
そして翌日10月7日、出来上がったものがこちら。

2018、ハロウィンに向けて描いた初デジタル

……いやあ、でもこれ、今見返しても好きなんですよね。
整ってる。立派に影もつけてるし、すごく頑張ってて好き。
多分8時間くらいで描いたと思います。
そしてこの日、うちの子『ひばなちゃん』が誕生したのでした。(10/7)

実際、この後描いた絵は全然いい感じに描けませんでした。
絵ってたまにポン、と自分の今のレベルより良いものができて、また元の実力に戻されてそのレベルまで這い上がる、みたいな現象ありません??
私だけかなあ。

そして年は明け2019年。4月10日ごろに描き始めた作品が今回のタグのまず1作目となります。

2019.4比較イラスト

これもかなりうまくいった方の絵です。
今見ても目を逸らさずに見れる……絵ですね。

良くも悪くも、描くのが楽しい! 描くのが楽しい! って頃で、描きながら『自分の絵、めっちゃいいんじゃないかな!』なんて思ってました。目が全然育ってなかったのでそこは救いでした。
いわゆる最初の、『自分の絵、下手すぎて描くの辛い……』ゾーンを悠々飛び越え、楽しく絵を描いていました。この時点ではまだ。

親友と出会えた2年目

幸運なことに順調は続きます。
一番の幸運は、一緒に絵を描くリアルの友達ができたことです。
2年目は主にその人とめちゃめちゃ遊んだし、めちゃめちゃ絵を教えてもらいました。

教えるのが上手いんですよね。
例えば絵を描いて見せた後、全体的にめっちゃ褒めてくれて、そしてうちの子を試しにさらさら描いてくれるんですよね。
そしたら素人なりに『めっちゃうまっ!?なんで!?』ってなるんです。

それはもちろん、顔です。
顔の描き方は一番のネックでした。
摸写も、制作も、ずっと全身を描いてきました。
それは偉いことではあるんですが、顔に対する経験値と意識が相対的にも絶対的にも足りてなかったんですよね。
このころから意識して顔の練習を何度も何度もやり始めました。

顔の意識があまりないが背景まで描いてやがる……っ。

背景、描くの好きだったんですよね。
正確には見るのが好きなので描きたかったんですよね。
実は2枚目の絵から、稚拙ながら背景描いてたりして
でもこうして初期の頃に、苦手意識を持つ前に取り組めたのは偉いと思います。
まだ楽しく好き勝手に描いてました。

そして年は明け2020年。4月下旬に描いた絵がこれ。

2020.4比較イラスト

目への意識が微妙に出ている……ような?
体の方はまあまあバランス取れてきましたね。
若干顔周りが整いだした分逆に気になりますがいいとしましょう!
アイス食べたいなあー……そっかあ3年前もそう思ってたのかあ。

背景に傾注した3年目

2020年4月末日。

これ今もう描ける気がしない

とあることがきっかけで、写真を参考にすることを覚えました。
あんぎゃー!? 今これ描けって言われたら震えますね……。

他の友達に、この写真で絵を描いてよってある写真を渡されたのがきっかけでした。
それを楽しみながら2、3回やってたらなんか立派そうな背景が描けてしまいました。

これに味をしめたみもさん、この年は背景をたくさん頑張ります。
写真をもとに背景を描く、なんて感じで練習を進めていきました。
ここだけの話、練習のつもりだったけれどめちゃめちゃ褒められてどうしようってなってしまったという経験もありました。贅沢な悲鳴。

私の代表作その1になるのかなあ

この絵は年明け2021年に、嬉しいご縁があって作品展に展示させていただいたものの一枚です。いやあ、今これ描けない……なあ。

そんな年明け2月ごろに描いた絵がこちら。

2021.2比較イラスト

このころから厚塗りというものへの憧れが前面に出はじめました。
着物の柄もテクスチャとかを使わず自分で描き込んだ力作で好きな一枚でもあります。
目の塗りがちょっと浮いちゃってますね。まだ顔の配置は甘い気がします。
りんご飴食べたいなー、そうかあ2年前もry

ついに悩み始めた4年目

さてさて、2021年になってついに失速が始まる。
人によっては「やっとかよ」という感じかもしれない。
自分としてもよくぞここまで持ったなという感じなのだ。

原因というか、つまりどういうことかというと
『うまくなりたいという思いだけでここまで来てしまった』
ということなのだ。

かんたんに要約すると、
『何のために絵が上手くなりたいの?』
『絵が上手くなってどうしたいの?』

そういうことに悩み始めた時期であります。
まるで私の中が空っぽで、なにもない。
なんで絵を描いてたんだっけ。こんなに苦しいのに。
あまりこういうことを言いたくはないけれど、絵を描くこと、練習することには楽しさだけではなくそれなりの苦痛が伴う。
うまくいかないときは尚更だ。

そういう苦労話は血を吐くような努力をずっと逃げずにやってきた人がすべきだと思うので省略する。私はこの年逃げに徹してしまった。
逃げて逃げて、それでもよくうなされた。

『絵を描かなくちゃ』『でもなんで?』
『逃げるなよ』『へたくそ』『お前が描かなくても誰も困らない』
『でも絵を描かなくちゃ』『なんのために?』

焦燥感。虚無感。無力感。恥ずかしい。無価値。
本気で絵を辞めようと思った時もあった。

そんな時に救いになったものが2つある。記録しておく。

ひとつめ。仲間の存在。
友人、親友、Twitterのフォロワー、絵描き交流会の仲間。アトリエの店主や仲間(私の住んでいる地域には、絵を描くのに特化した小さなコワーキングスペースのようなアトリエ営業所が複数ある)。

絵の話は楽しい。忘れがちになってしまうし混同しがちのだが、私は絵が嫌いになったわけではないのだった。
思い切って話してみると、みんないろんなことを考えていて、いろんな悩みを持っていて。そしてだからこそ親身になって聞いてくれることが多い。
「待ってるよ」「楽しみにしている」
その一言と笑顔で少し頑張れるような気がするのだ。

今だったらいろんな集まりやらSNSやらがあるかもしれないが、思い切って飛び込んでみるのもいいのかもしれない。挑戦してみるのもいいことなのかもしれない。(といいつつ、私が一番苦手なことなのだが)


ふたつめ。音楽。
私は昔からずっと音楽を聴くのが好きだ。自分としてはジャンルは気にせず雑食にいろんなものを聞いていると思う。
といっても、一度気に入ったらずっと、100回も200回も聞いてしまう癖はあるのだが。

私は特に日本語歌詞のいわゆる歌メロが好きだ。
歌詞が好きだ。
歌詞が好きだといっても、歌詞カードを読み込んだり、自分なりのストーリーの解釈をしたりするわけではない。
曲のさなかにポン、っとフレーズが飛び込んでくるのが好きだ。
それが嘘みたいな話だが、ずっと自分が探していた、待ち望んでいたワンフレーズだったりするのだ。

作者はそういう意味で歌ってないこともあるかもしれないが、それで視界が開けたことがよくある。
私は音楽とはずっと友達でいたい。だから音楽の勉強や作曲はしたくない、野田が、これはまた別の話。

2021年は8月に夏特訓をした。
これは結構功を奏したと思う。

最終回更新してないじゃん!!
近々公開します(2敗)

そんなこんなで年明け2022年3月に描いた絵はこちら。

2022.3比較イラスト

弾けてますね。このころは目とか顔が描けるようになったと錯覚していました。(なお現在はまた迷走している模様)
ちょこちょこ怪しい部分もありますがなかなか元気でいい絵になったと思います。

なんとなく吹っ切れた5年目

さて、4年目悩みまくった2021年でしたが、2022年の秋ごろ、更なる難敵が登場します。
そう、イラストAIくんの台頭。
正直参りました。筆折りそうになりましたもん。

『ねえ、私が描く意味ある?』

うるせえ!!!!! 私は私の描きたい絵を描くんだよおおおおおおおお!!!!!!!!!
AIより絶対うまくなってやるんだからなあああああああああああ!!!!!!!!!!!!!

最近は絵を描くことを楽しむ、これを最重点にしています。
それから、挑戦。というか、良い人のふりしてちゃつまんないな、なんて思いも沸いてきまして。

今までずっと明るい絵を描いてきたような気がします。
基本的には元気いっぱい、笑顔、キラキラの世界。

でも私の中に、いろいろ好きな表現が別に存在することに気づいてしまいました。
例えば、暗い絵。闇、病み、暗さ。例えば、タバコ、酒、だらしなさ。不健全。自堕落。退廃感。

正直、怖かったです。
それはこういう絵のの人だと思ってフォローしてたのに! ひどい! みたいな自意識過剰。

でも挑戦しちゃおうと思ったのは2022年4月。

不健全?を目指して

裏ひばなちゃん、うらばなちゃんの登場。
怖かったのと同時に、すっごくわくわくしました。
だって、絵は、表現は自由じゃなきゃ! でしょ?

まあ、こういう絵に転向したわけでもなく、元に戻ったりもしましたが。
なんだかんだでこの年はあまり描いてた期間は少ない気もします。

ということで年が明けて2023年の最新絵がこちら。

2023.4比較イラスト

うらばなちゃん!
実は今4月から3ヶ月上達法ってものをやろうとしているので、その一枚目の全力絵になります。
顔についてはだいぶうまくいったと思ってます。
全体的に好きを出せたと思っています。今のところ!

さあどうなる6年目

さて、あと5年で神絵師です。笑
ああ、半分。もう半分が過ぎてしまった。

今年一年は、わくわくと楽しさを手掛かりに自分の好きを追求していきたいと思います。
もしかしたら暗い絵やうらばなちゃんが増えちゃうかもしれない。
ま、いっか。
それが楽しいなら、そうでしょ?

そう、あと5年。
あと5年で神絵師になるまで(ここ笑うところ)、どんな一年一年が、毎日が待っているのかわくわくしています。
10年目には残り半分を高みの見物で書いてやらあ!!!
見てろよ!!!!!!!

長い長い自己紹介終わりです。
ここまで読んでくださった優しいあなたに、何かひとつでもいいことがありますように。

唐突ですが、私の大大大好きなバンド、ヨルシカさんのチノカテって曲でお別れしましょう。

これから先のもっと先を描いた地図はないんだろうか?
迷いはしないだろうか
それでいいから そのままでいいから
 
貴方の夜をずっと照らす大きな光はあるんだろうか?
それでも行くんだろうか
それでいいから そのままでいいから
全部を読み終わった後はどうか目を開けて
この本を捨てよう、町へ出よう

ヨルシカ/チノカテ

ありがとうございました。


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