5stepで分かる投資判断のための財務分析手順

この記事は「財務諸表の基礎的な読み方は勉強したけど、実際に企業分析を行ったことがない人」を想定して書かれています。企業の財務分析から投資候補を選別するまでの一連の流れを解説していきます。

Step 1 - 企業に興味を持つ

まずはきっかけ作りです。自分が興味を持った企業を調べることから始めます。
インターネット記事、テレビ、新聞、会社四季報、友人や家族との会話、職場の取引先などから気になった企業を調べてみましょう。

この時、調べる企業についての自分なりの「仮説」を立てておくと良いでしょう。初めは「最近よく聞くし、業績が良さそう!」程度の仮説で大丈夫です。企業分析について数をこなしてくるうちに、自分が立てる「仮説」の深さや質が洗練されていきます。優れた投資家になるためには、この「仮説」を立てる能力が欠かせません。企業分析の際には常に意識するといいでしょう。

Step 2 - 財務データをざっと見る

所要時間:5分〜30分

気になった企業のHPを確認して決算書を確認してみます。初心者の方は決算短信や四半期報告書などの簡易なものから読むことをおすすめします。
決算書の漢字と数字の羅列をみるだけで身の毛がよだつ方もいると思いますが、気楽にいきましょう。決算書は数を読んでいくうちに、自然と企業の経済活動についてイメージができるようになります。「習うより慣れろ」の精神でまずは読んでみましょう。

この段階では貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書をさらっと流し読みします。

▪️貸借対照表を読む
まずは貸借対照表を眺めましょう。貸借対照表とは、企業のその時点での状況を示しています。
ここで見るべきポイントは資産、負債、純資産の金額の規模と割合です。「たくさん銀行から借金をしているデカイ会社だなぁ。」「規模は小さいけど無借金に近いな」といったイメージが湧けばOKです。

▪️損益計算書を読む
次に損益計算書をチェックしましょう。損益計算書は企業が一定期間に稼いだお金に関する成績表です。
漢字と数字がびっしり書いてあり威圧感がありますが、ポイントを抑えれば簡単です。売上高と各利益の変化に注目しましょう。売上や利益が上がっているのか、下がっているのか大まかな企業の流れをイメージすることが大切です。
損益計算書は成績表なので、成績が上がっている(売上や利益が伸びている)に越したことはないですね。

▪️キャッシュフロー計算書を読む
最後にキャッシュフロー計算書を見てみましょう。キャッシュフロー計算書は企業の一定期間の活動をキャッシュの動きで表したものです。
キャッシュフロー計算書では営業、投資、財務の3つのキャッシュフローから企業のお金の流れを感じ取りましょう。
「営業キャッシュフローが増えてるからお金が流れ込んでるんだな」「投資キャッシュフローがマイナスだから積極的に投資してるんだ」「財務キャッシュフローがマイナスだから借金の返済にお金が出ていったんだな」といったように、企業のお金の流れをイメージしましょう。

Step 3 - 財務データを詳しく分析する

所要時間:1時間~10時間

先ほどまでに、財務データをざっと確認したことで企業の大雑把なイメージを掴むことができました。
しかしこのままでは投資判断に活かせるほどの情報は得られていません。そのためStep3で徹底的に深掘りしていきます。
この段階では「収益性」「効率性」「安全性」「成長性」といった4つの観点から、企業を深く分析していきます。
「収益性」「効率性」「安全性」「成長性」の高低を調べるとともに、その結果をもたらしている要因について突き止められるようになると格段に企業についての理解が深まります。
具体的な分析方法については、書くと長くなるので別記事で追って解説します。

Step 4 - 会計方針や注記をチェックする

所要時間:5~20分

初心者が最も見落としがちですが、とても重要な項目です。
会計方針とは企業が個別に採用している会計ルールのことです。
代表的なものに費用として計算する減価償却費を定額法と定率法の2種類の方法から選べるものがあります。
会計方針が違うということは収益や費用に関しての計算方法が変わることになります。同じ企業活動をしていても、貸借対照表や損益計算書の数値が変わってしまうのです。
また財務諸表には注記が多く示されています。小さい文字で書かれていて読みたくなくなりますが、会社が出した損失をどのように計算したかなど、重要な項目が含まれていることが多々あります。
会計方針や注記を確認することは企業の実態を見極めるための非常に重要なステップとなります。

Step 5 - 投資候補に加えるか判断する

最後に投資判断です。資産の安全を重視する投資家であれば、財務指標の中でも「安全性」に関わるものを重視し、安定的に成長している企業を投資候補に加えていきます。成長性を重視する投資家であれば、「収益性」や「成長性」の指標を見て自身の投資候補リストに加えていきましょう。

今回は財務分析から投資候補を絞るまでの流れを紹介しました。より慎重な投資家であれば、この投資候補リストをもとに、各企業のビジネスモデルの強みや経営陣の評価などの定性的要素を調査していきます。そして「現時点での株価を評価」し納得がいけば投資をします。

財務分析の初心者はこの投資候補リストを作成していくことが、投資家としての地力をつける非常にいいトレーニングとなります。ぜひ1度やってみてください。



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