19万人登録VTuber音霊魂子さん ASMR配信で人気獲得、支援者限定の1対1通話が好評 「ファンが喜んでくれることをやる」
クリエイターエコノミーと呼ばれる、個人が創作で収益を得られる経済圏が、あらゆるクリエイティブの領域で拡大しています。
そんな中、さまざまなクリエイターの事例をインタビューしている当メディア・クリエイターエコノミーラボが今回話を聞いたのは、VTuberグループ・あおぎり高校さん。
現在は卒業生を除くと6人の“生徒”が所属し、今ではグループ全体で64万人以上のYouTubeチャンネル登録者を抱える中堅VTuberグループです。
2018年10月にチャンネルを開設し、バラエティ色の強いさまざまなジャンルの動画を投稿して人気を集めてきました。
そんなあおぎり高校さん、pixivFANBOX(ファンがクリエイターを月額課金で支援でき、返礼としてプランの金額に応じたコンテンツを楽しめるサービス)などのクリエイター支援サービスをうまく活用し、売り上げに繋げているそうです。
個人クリエイターにとってさまざまな点で参考になるお話を、個人チャンネルでも19万人以上の登録者を抱える音霊魂子(おとだま たまこ)さんと、グループの代表者である“あおぎり高校の校長”が、活動を原点から振り返りつつ、話してくれました。
業界を騒がせた“事件”を乗り越え、「ASMRコンテンツ」が大きな転換点に
あおぎり高校さんは、活動当初「あおぎり高校ゲーム部」という名前で、ゲーム実況動画を中心に投稿するYouTubeチャンネルとして始まりました。
しかし、活動を開始して半年が経過した2019年4月、同系列のVTuberグループ「ゲーム部プロジェクト」の運営をめぐって事務所が炎上してしまうという事件が起きます。
先行して活動していた「ゲーム部プロジェクト」の人気に乗じて初動の数字を伸ばしていたあおぎり高校さんにもその影響は大きく、当時は何をやっても「純粋にコンテンツを楽しめない」というコメントが届く状態が数ヶ月続いたそうです。
そんな状況の中でも、とにかく再生数が伸びるコンテンツを模索し、がむしゃらに動画を投稿していったと校長は話します。
分岐点となったのは、プロジェクト開始から1年が過ぎた2020年2月、魂子さんの個人チャンネルを設立し、ASMR配信を始めたことでした。
ASMRとは、「Autonomous Sensory Meridian Response」の略称で、「人が、聴覚や視覚への刺激によって感じる、心地良かったり、脳がゾワゾワしたりする感覚」を指します。
例えば焚き火などの環境音をイヤホンで聴くことで、まるでその場にいるような感覚が得られたり、人の声であれば実際に耳元で囁かれているような体験ができます。
こういった動画や音声は、主に癒しや安眠効果などの点で人気を得ており、2022年現在、VTuberだけでなくさまざまな配信者がASMRコンテンツを発信し、盛り上がっています。
2019年末は動画から配信への過渡期だった
ASMR配信への挑戦は、ある意味では、VTuber業界のトレンドに乗った形でもありました。
あおぎり高校さんが活動を始めた当初は、1本ずつ動画を企画し、ひとつのチャンネルでそれを投稿する体制でしたが、そのやり方では限界があったと校長は言います。
「2019年末頃、他事務所で人気を得ているVTuberを見て、配信が主体になったコンテンツを出さないとダメだと感じるようになっていました。
当時は、VTuberのコンテンツの主流が、編集された動画からライブ配信へと移行していく過渡期でもあって、あおぎり高校の生徒たちにも、配信者として育ってもらうことが急務だったんです。」
そこで魂子さんのやりたいことを汲み取っていくうちに生まれたアイデアが、ASMR配信だったわけです。
メインチャンネルでの動画投稿と合わせて、配信に注力したこともあり、2020年は魂子さんの個人チャンネルが大きく成長する一年になりました。
一方で、それまでのイメージと異なる配信を始めたことで、離れてしまうファンも少なくなかったそうです。魂子さんはこう話しています。
「ASMRを始めてからは、やればやるほど登録者数が伸びるので、やったー!という気持ちでした。
一方で、元々はゲーム実況動画が中心コンテンツだったのが、ASMRや雑談、企画系の配信をメインに行っていったので、それまでのファンの方が離れてしまうこともありました。
離れていく既存ファンより新しく見てくれるようになった新規視聴者の方が多かったので、ファン数自体は増え続けていましたが、メンタル的には辛い時期でもありましたね。」
SNSから批判が直接寄せられることも多く、ファンとのコミュニケーションの距離感がとても大変だったと言います。
数字が伸びる実体験が、配信者としての自信に
しかしそういった経験を通して、魂子さんはものすごい勢いで成長していきました。
「配信をするうちに『これをやったら喜んでくれるだろうな』というのがだんだん分かってきて、自信がついていったんです。
調子に乗ってたくさん配信しているうちに、チャンネルも伸びていったという感じでした。」
最初期から活動を共にしてきた“教員”の一人は、今の魂子さんを見て、「それこそ人が変わったように成長した」と話しています。
あおぎり高校の活動を始めた当初の魂子さんは、かなりの引っ込み思案だったのだとか。
性格も明るくなく、自分に自信を持てなかったそうですが、配信を始めて以降は「自分が作るコンテンツで数字を伸ばせた」という実体験が自信につながったと魂子さんは話します。
「最初は先生たちから、拾われてきた猫みたいだって言われていました(笑)。
人見知りで、本当はこういうインタビューもすごく苦手だったんですが、今ではだいぶ慣れましたね。
あおぎり高校の新メンバーが増えていく中で、先生たちに任せるだけじゃなく自分ももっとしっかりしなきゃと、一緒にどうやったらチャンネルが伸びるかをより考えるようになりました。
だから、人のために頑張ろうというのが成長のきっかけだったんだと思います。」
FANBOX開設から2年以上にわたって、支援を続けるファンも
あおぎり高校さんが、本格的にマネタイズに乗り出したのはプロジェクトが1周年を迎えた2019年10月から。
まず、pixivFANBOXのアカウントを開設。あおぎり高校に所属する各生徒の日記や、シチュエーションボイスなどのコンテンツを限定公開すると、熱量の高いファンからの支援が集まりました。
また、最高額のプランでは毎月一度、生徒と二人きりで15分間通話することができ、これがファンから特に好評だそうです。
二人きりで通話というと、少し身構えてしまいそうに思いますが、魂子さんは楽しいだけだと笑います。
「ファンの人たちが好きだから、通話中も特に難しいことは考えず、本当に楽しく話しているだけなんです。
意識することと言えば、相手にちゃんと寄り添うことくらい。私の場合は基本的にずっと自分から喋り続けます。
1秒も空かないくらいずっと喋り続けるので、驚く人もいるみたいです。友だちと話すような感覚でいるからかもしれませんね。」
15分間だけでは話し足りないからと、「追い課金」をして月に複数回の通話をする人もいるそうです。
中には2年以上にわたって、途切れずにFANBOXでの支援をし続けている人もいるのだとか。
3年以上もVTuber活動をしている魂子さんには長年応援している熱量の高いファンも多く、毎月かなりの量の通話をこなしています。
また、BOOTHでは、ASMRボイス作品の売り上げが好調だそうです。YouTube上でのASMR配信から「声」を好きになってもらい、作品の購入に上手く繋がっているとのこと。
校長曰く、「YouTubeでの配信でファンの方々と直接コミュニケーションし、生徒たちのことを知ってもらいつつ、ファンの方々にはFANBOXやBOOTHでお金を落としていただく良いサイクルが生まれました。」
「あなたのためと伝え続ける」 ファンとのやり取りで大切なこと
クリエイターエコノミーが発展するにつれて、SNSを通じてクリエイターが直接ファンとやり取りする機会は増え続けており、これはクリエイター視点での課題の一つです。
魂子さんの場合、SNSだけでなくFANBOXの支援の返礼であるファンとの二人きりでの通話など、かなり直接的なコミュニケーションを取っています。
そんな通話の際には、好きで応援してくれているからこそ、ファンの方からお叱りを受ける場面もあるのだと言います。
「過激な動画を出したとき、こういう動画は好きじゃないと言われてしまうことがあるんです。
そういうとき、私はその人がその動画を好きじゃないということは受け入れつつ、黙っていられないから思ったことは全部伝えちゃう。
大切なのはファンの方への愛情で、あなたが喜んでくれると思ったからこういう動画を撮ってみたんだよと伝えると、分かってくれる人もいるんです。」
このような意見はもちろん通話時だけではなく、TwitterなどのSNSでもたくさん届きます。
そういった場合、魂子さんは、ネガティブな内容であってもあえて心情をそのまま吐き出すのだと言います。
魂子さんは、それこそがうまくファンとコミュニケーションする秘訣だと考えています。
「私は常に思ったことを正直に言うようにしています。
活動に対する不満が届けば、そのまま従うのではなく、『こういう考えであなたたちのためにやった活動だから受け入れてほしい』と伝えると、ほとんどの人が応援する側に回ってくれます。
批判されても、相手のことを嫌いにならないで受け止める愛情が大切なんです。私、めっちゃ良い子だと思います(笑)。」
ファンへの感謝を忘れない
この考え方は、事務所としての方針でもあるのだと校長は話してくれました。
「生徒たちには、ファンのことを思っての行動だったら例え失敗しても応援してくれる人はいるから、何でもやってみるといいよと言っています。
ただし何でもとは言っても、『私はこれをやりたいから応援してね』ではなく、全てのコンテンツはファンが喜んでくれそうなことを考えて作る。
もちろん、『やりたいことをやる』だけで伸びていくカリスマ的なクリエイターもいますが、それで誰もがうまくいくわけじゃありませんからね。」
最後に、校長に促され、魂子さんは活動に臨む上でのポリシーを語ってくれました。
「繰り返しになりますが、とにかくファンの人たちに愛情を持つこと。
自分が活動できているのはファンの人がいるからであって、感謝の気持ちは常に忘れないようにしているし、今後もし活動の規模が大きくなっていったとしてもみんなとの距離感は変えたくないなと思います。」
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