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【もえたん】“元祖“萌え絵師、パトロン250人の支援受け、新たなヒット目指す

クリエイターエコノミーと呼ばれる、個人が創作で収益を得られる経済圏が、あらゆるクリエイティブの領域で拡大しています。

そんな中、さまざまなジャンルのクリエイターに事例をインタビューしている当メディアが今回お話を聞いたのは、『萌える英単語 もえたん』のイラストを担当したことで知られるイラストレーター・POPさんです。

『もえたん』は、その名の通り、萌えるイラストで英単語が学べる英語学習書であり、2003年12月に発売されると2ヶ月で10万部を超え、シリーズ累計で40万部発行される、参考書としては異例のベストセラーに。

アニメ・ゲーム化をはじめ、さまざまなグッズも販売されるなど、大ヒットコンテンツとなりました。

そんなPOPさんは、イラストレーターとして活動する上で、単に依頼された絵を描くだけでなく、自身が主体となったヒットコンテンツを作ることを目指しています。

ゼロからコンテンツを作るとなると、お金も時間もかかって大変ですが、2021年からはpixiv FANBOXやBOOTH(※)といったクリエイター支援サービスを活用し、ファンから金銭的なサポートを受けながら活動しているそうです。

※pixivFANBOXは、ファンが月額制の課金でクリエイターが公開する限定コンテンツを楽しめるサービス。BOOTHは個人で運営できる創作物の総合ECマーケット。ともにピクシブ株式会社が運営。

これまでのお仕事について振り返ってもらいつつ、今クリエイターとして活動する上で大切にしていることや、クリエイター向けサービスの活用法について聞きました。

活動の始まりはネットから SNSで原点回帰

ーー最近はどういったお仕事をされているのでしょうか?

POP:相変わらずイラストの仕事を続けつつ、最近ではYouTubeを始めたりと新しい取り組みをしています。

この数年は、『装甲娘』というゲームのイラストを描く仕事がメインで、2014年から2019年くらいまでで合計400枚くらいのイラストを描きました。

『装甲娘』は人気作品『ダンボール戦機』から派生したPC / スマートフォン用ゲーム。現在はサービスを終了している。画像はプレスリリースより。

POP:その仕事がパツパツで、仕事を後回しにして同人誌を作るのも違うなと思い、コミケなどにもしばらく出ていなかったんですよね。

その後もイラストの仕事を受けていたんですが、最近まとまった仕事がひと段落ついたところなので、次はSNSやYouTubeなどに力を入れようと思っています。

私は絵だけでなくコンテンツ全般を作るのが好きで、過去にもアニメーションを作っていた時期があるんです。

POPさんのYouTubeチャンネル「そこそこホリデー」では、絵を描く様子の配信などの動画が投稿されている。動画はこちら

POP:もともと、SNSで直接ファンの方とコミュニケーションを取ることはあまりしていなかったんですが、『装甲娘』プロジェクトに関わったことがきっかけで、近年は流れが変わっているなと感じて。

私の活動は、ネットから始まっているので、原点回帰的な意味でも、SNSを使ったり、ネットでものを売ったりをしていきたいと考えています。

今って、さまざまなコンテンツがDL販売やサブスクがメインになってきていて、在庫を作ること自体にリスクがあるじゃないですか。

だから、pixivFANBOXなどでコンテンツを出したり、BOOTHなどのグッズも受注生産でオーダーが届いた分だけ作って売ったりということをやっています。

商業デビューの『もえたん』で大ヒット

ーーそもそもPOPさんは、イラストの活動自体はいつからされているんでしょうか?

POP:一回、就職したことがあるんですが、家業の関係で仕事を辞めなければいけなくなって。

その後、絵の仕事をやりたい気持ちはずっとあったので、チャレンジしようと、ゲーム関連の仕事をしている知人の紹介でいくつか単発のイラストを描いたりするようになりました。

当時は下積みというか、お手伝いくらいの感じで、デフォルメのキャラクターのイラストを1枚だけ描いたりしていました。

ーー絵のお仕事は、知人の紹介が最初だったんですね。

POP:それもネットが原点にあって、今よりも繋がりは細い感じだったんですが、オフ会をしたりするコミュニティがあったんです。

そういった場に顔を出していたので、人づてにさらに紹介してもらったりして、CGのお手伝いをやったりもしていました。

当時は貯金が一年分くらいあったので、他の仕事をせず、なんとか絵で食えないか挑戦していた感じです。

そんなときに『もえたん』のお話をいただいたんですよね。

ーーそこから、いきなり『もえたん』で商業デビューして、大ヒットというのはすごいストーリーですね。

POP:そうですね。当時は私の実績も乏しかったので、原稿料がゼロで、代わりに印税でお支払いしますというお話でした。

どうしようか考えたのですが、イラストの枚数が60枚くらいで書籍にもなるということだったので、実績にもなりそうだなと、やらせてもらったんです。

そうすると、Amazonで年間一位を取ったり、最終的にはシリーズで40万部売れたりと、ドカンと当たったんですよね。

ーー『もえたん』のヒット後は、仕事がどっと増えたりしました?

POP:そもそも発売前に『もえたん』のことが発表された時点で、他の出版社の編集さんが挨拶に来てくれたりして、お仕事に繋がりましたね。

『もえたん』の発売後は、とにかく『もえたん』関連の仕事に忙殺されていましたね。フィギュアなどのグッズの描き下ろしのお話とか、アニメ化やゲーム化のお話をいただいたりとか。

当時はコミケにも出ていたんですが、出版社さんの懐が広く、『もえたん』関連の同人誌を出しても怒られなかったので、イラスト集を出したりとか。

あとはこの時期、アニメーションを作ることも始めて、企業さんと一部の地域限定のアニメを作ったりもしましたね。

「一般ウケしたい」 活動を模索し、絵本イラスト担当も

ーーPOPさんは単に絵を描くだけでなく、すごく幅広く活動されているんですね。

POP:『もえたん』で知ってもらえていることが多い私ですが、オタクっぽいジャンルだけじゃなく、広く一般的にウケる作品を生み出したい気持ちがあって、特に子ども向けの作品を作りたいんですよね。

2006年頃から3年くらい、半年で2冊ペースで計6冊、『POP WONDERLAND』というシリーズものの絵本を出版社から出したことがありました。

POPさんがイラストを手がけ、赤ずきん、しらゆきひめ、シンデレラ、にんぎょひめ、おやゆびひめ、ふしぎの国のアリスの6冊が刊行された。

POP:なんですけれど、当時は私のような萌え形の絵柄って世間的にはあまり良いイメージを持たれないことが多くって。

今ではだいぶ変わりましたが、アニメっぽい絵柄がそこまで受け入れられない時代だったこともあり、なかなか思ったようには成功しませんでしたね。

「オタクは気持ち悪い」というようなイメージを払拭したいからこそ、自分の絵柄で一般受けするようなコンテンツを生み出したいという気持ちがあったんです。

こういう考えは、子どもの頃から大好きなジブリ作品に影響を受けている面がありますね。

ーーなるほど、幅広い層の人に受け入れられる作品を描きたいというわけですね。

POP:一度何かやると似たようなお話をもらえるもので、その後もいろいろな出版社さんからお仕事をいただいて、子ども向けのイラストや漫画を描いたりしました。

ただ正直、絵本の収入だけだと生活できないというのもあって。本来、絵本って何十年もかけて、少数ずつ売っていくようなものですしね。

もちろん大ヒット作品になったら、話は違うと思うんですが。

入院をきっかけにクリエイター支援サービスを開始

ーーそこから、現在ではpixivFANBOXやBOOTHなどのクリエイターが個人でお金をもらえるようなサービスを活用されています。

POP:私の場合、イラストレーターとして、依頼をもらって納品するだけじゃなく、自分のコンテンツを作りたい気持ちが強いんです。

その分、自分でお金や時間をかけないといけないので大変な面もありますが、とにかく自分が主体のコンテンツを作って、IP(※)化したいという野望があります。

※Intellectual Propertyの略称であり、キャラクターなどの知的財産のこと。

その中で、FANBOXやBOOTHのアカウント自体はずっと持っていたんですが、先ほどもお話しした通り、『装甲娘』をやっている間は表に出せる情報が全くなくて、しばらくはまともに更新できていなかったんですよね。

その後、入院のレポート漫画をpixivで公開した去年から頻繁に更新するようになった感じです。入院支援をたくさんしていただいて、本当に助かりました。

ーー昨年、病気が発覚して入院された際、入院レポート漫画のまとめ本や過去のお蔵入りイラスト集などがもらえる「復活応援パック」をBOOTHで販売したんですよね。

支援額は2,000円〜5万円から選ぶことができ、高額のプランでは描き下ろしサイン色紙がもらえるという、濃いファンには嬉しい特典も。

ーーFANBOXを更新するようになってから、コンテンツは他にどういったものを掲載されているんですか?

POP:Twitterと合わせて、昔描いた絵を載せたりしていますね。『もえたん』のアニメをやったとき、年間で300枚くらいイラストを描いたので、それを少しずつ載せたりとか。

二次創作やエロ系のイラストがめちゃくちゃ人気ですが、私はやらないと割り切っているし、オリジナル系しかやらないからファン層がすごく広いというわけでもないですね。

支援してくれている人は、昔からずっと応援してくれている人が多い気がします(笑)。

今は240〜250人くらいが支援してくれており、FANBOXの運営だけで毎月20万円くらい入ってくるので、本当にありがたいです。

ーーそれはかなり助かりますね。

POP:やっぱりイラストの受託だけでなく、自分で何かコンテンツを作ろうとすると、その分お金も時間も取られてしまうので、なかなか成り立ちません。

普通に活動しているだけでも、うちは業務サポートをお願いしているアシスタントもいるので、その人件費も必要ですからね。

その点、去年はFANBOXやBOOTHのおかげでかなり助かりました。

ーーBOOTHのほうはどんな感じなのでしょう?

POP:BOOTHもまだまだ暗中模索という感じですが、当たり前ですがFANBOXよりもたくさんの人から購入してもらえていますね。

私を支えたいというよりは、単にTwitterで私が同人誌を売っているのを知って、「これなら買うよ」みたいな人は結構いて。

単にコンテンツとして見たときに価値を感じてくれる人は、それなりにいるみたいです。

ーーFANBOXの支援者よりも広いファン層がお金を落としてくれていると。

POP:正直、今の時点では、こういったサービスの使い方を頑張るというよりは、そもそもファンの人たちが喜んでくれるようなコンテンツを作るのが先だと思っていて。

もちろん私の絵というだけで喜んでくれる方もいるんですが、というよりは、最終的にはキャラクターの絵として愛してもらうことが大事だと考えています。

そこにどうやって落とし込んでいくかがこれからの課題で、最終的にはPOPのFANBOXやBOOTHに行けばそのキャラを見れる、といった形にできると良いのかなと。

ーーなるほど、やはりご自身のコンテンツを作りたいという想いが強いわけですね。

POP:今までは一般受けするような作品を生み出せないかとやってきたんですが、今後は一般受けを目指すだけでなく、よりファンの方に喜んでいただけるものを提供するということも頑張りたい。

こういうとき、つい時間をかけて作りたくなってしまうのですが、そうすると月額で支援してくださっているファンの方になかなかお届けできない状況が続いてしまったりしそうで、そこはどうしようか模索しているところです。

今のところは映像をやりたくて、一番良いのはアニメーションですね。YouTubeからIP化を目指せるような作品を作りたい。

支えてくれている人たちに「この人がいなくなったら困る」と思ってもらわないと見捨てられてしまうので、がんばって良いものを作っていければと思います。

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POP
|イラストレーター。『萌える英単語 もえたん』シリーズの挿絵を担当し、商業デビュー。その後、絵本『POP WONDERLAND』シリーズや、PC / スマホ用ゲーム『装甲娘』などのイラストを担当。

pixivFANBOXでPOPさんの支援者になるにはこちらから。
https://popemw.fanbox.cc/

BOOTHでPOPさんの同人誌などグッズを買うにはこちらから。
https://popemw.booth.pm/

運営:アル株式会社

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