「企業間越境大学」開校しました!
いま、多くの企業に広まりつつある越境学習。その新しい取り組みが先だって始まりました。名付けて「企業間越境大学」。未来を担う次世代が自社の枠を超え、切磋琢磨(せっさたくま)して個人・企業・社会の未来をつくって欲しい。そんな想いを抱く業種業態の異なる企業の人事部門マネジメントが連携して実現。筆者はその企画とファシリテーションに携わらせて頂きました。
テーマは「10年後のHRをつくる」。以下のような目的のもと、5つの企業(光学・電子機器、ソリューション、飲料、エンジニアリング、人材サービス)から計20人の若手人事メンバーが集い、昨年11月から1月にかけて計3日間のワークショップが行われました。
・様々な環境変化に直面する社と社員を支えるHRの役割を自分ゴトとして
考える。
・経営と連携するHRのあるべき姿を考察する。
・異業種の視点を共有することで多様な視点を養う。
・ワークショップでの学びを実務のアクションにつなげる。
・「10年後のHRを発明する」企業連携の端緒とする。
最終日には、各社のCHROや人事部長に対し「10年後のHRをつくる」提案を行います。
初日は、初対面のメンバー同士のチームビルディングと共に「HRは何のために必要なのか?」「なぜ、人事スタッフが越境する必要があるのか?」の“Why”を自らに、そして互いに問い合うディスカッションが行われました。各社の紹介と自己紹介シートを使いながらの対話で場が温まったところで、Whyを問い合うグループディスカッションへ。初対面とは思えない、会社の枠を超えた熱気あふれるやりとりが繰り広げされました。
2日目は、これからの社会の中で「ありたいHR」を考える一日。冒頭に、パーソナルコンピュータの生みの親、アラン・ケイの言葉が紹介されました。
The best way to predict the future is to invent it.
(未来を予測する最善の方法は、それを発明することだ)
これから社会や世界はどうなるのか。その発想を広げるために、終日、様々な「妄想」ワークに取り組みます。また、視点を未来に飛ばしてもらうインスピレーショントークとして特別講演「web3・メタバースが『あたりまえ』になった世界で起きること・求められること」が行われました。
「Web3元年」と言われた昨年。DAO(分散型自律組織)と言われる“リーダーのいない組織形態”が広がり始めたことで、新しい「繋がり」や「体験」の形が生まれ、人材や組織もこれまでにない在り方が求められるようになっています。
「このままだと世界から取り残されるという危機感を感じた」
「既存の社会のつながりや仕組みに代わって、あらゆるもの
(国家、会社、紙幣…)の境界線がなくなる可能性があると感じ、
大きな衝撃を受けた」
この講演は、感度の高い若い世代ならではのビビッドな反応を呼びました。
訪れようとしている未来の姿に刺激を受け、3つの妄想ワークへ。いきなりの「創造」や「発明」は難しいかもしれないけれど、「妄想」なら誰でもできる。リラックスしながら「ありたい社会の妄想」「ありたい会社の妄想」「ありたいHRの妄想」の3つのテーマで濃いディスカッションが行われました。「ありたい会社の妄想」では、自社のパーパス(存在意義)を他社の人たちに考えてもらいます。
さて、このプログラムには2つの特徴があります。ひとつは、開催場所が参加企業のオフィス。そこで各社のサービスや製品のプレゼンテーションを受け、それぞれの業態や企業文化を知る機会があること。もうひとつは、各社から「サポーター」としてマネジメントが参加すること。計7人のサポーターが企画から運営まで「チーム」となって連携すると共に、ディスカッションにも加わります。普段自社では知ることのできない他社の文化・空気感やマネジメントの生の意見に接することで多面的な気づきを得ることになりました。
3日目は、いよいよ「10年後のHRをつくる」発表会。提案に向け、年末年始にかけてオンラインでディスカッションを重ねて来た5つのグループは、発表時間ぎりぎりまで中身をブラッシュアップして臨みました。
発表形式は、プレゼンテーションが15分、フィードバック・質疑が15分。各チームとも、緊張しながら見事なプレゼンテーションを行い、講評者からの質問にも臆せず回答する真剣勝負の対話が生まれました。そして、提案のいずれもが野心的でありながら「実現できそう」と思わせるリアリティを持ったものでした。すべての発表を終えた後の講評者からの総評も、その熱気を受けたパッション溢れるものとなりました。
「皆さんがリアルに考えて、こうして行きたいという気持ちが伝わって
来ました。是非是非、皆さんが思っていることを、一緒に実現して
行きましょう!」
「人事のメンバーが自らのアタマの中を開放して行くことと、
色々な企業が自らをさらけ出しながら互いに切磋琢磨することで進化して
行くエネルギーを感じました。ここで終わらせず、継続しながらもっと
もっと進化させて、会社や日本を良くして行きましょう」
「これからの時代のキーワードは『オープン』と『越境』。
そうなるためにHRも開かれて行かなければならない。
自分自身も、こうした取り組みをもっと加速して行きたい、
というエネルギーを沢山もらいました。」
3日間のプログラムを終え、参加者に対して行ったアンケートへの回答は、いずれもポジティブなものでした。
「普段クローズドな世界に陥りがちなHRの企業間の繋がり創出、
将来描きたいHR像を具体的にイメージできる機会になった」
「実務と未来の課題感の両面から真剣にディスカッションができた。
また、同じ視座を持つ仲間に出会うことができた」
そして、このプログラムの最大の特徴は「研修」に終わらないこと。各チームは提案を「事業計画書」として提出し、実行フェーズに移行します。「10年後のHRをつくる」いう野心的な実験は、まだ始まったばかり。今後、企業、社会そして参加者にどのような価値を生み出していくのか。どうか、ご期待ください。そしてこの運動体に、是非、ご参加ください。