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Blog - 2023/09/07 「Adobe Expressの生成AIを試す」研究会レポート

本日は、生成AIを実装したPhotoshopベータ版とAdobe Expressの活用方法を探求するオンラインイベントの第3回目を実施しました。


Adobe Expressはコンシューマー向けのデザインストア型統合ツールです。「プロではない人」が利用できるデザイン制作ツールとして、学校でも活用されています。プロフェッショナルが要求する高度な機能は搭載していませんが、デザインの知識や経験がなくても直感的に使用できるように設計されているのが特徴です。

先月、生成AI(Adobe Firefly)が実装された新しいAdobe Expressが公開され、デモンストレーションを兼ねて活用方法を探求するオンラインイベントを開催しました。

参考:


前回のプロトタイプ:

前回は、アニメーション機能を中心に進めましたが、使用したイメージ(キャラクターや背景)は全て生成AIで作成しました。
今までは、描画したり素材を探す必要があり、この作業で授業時間の大半を消費してしまうため、事前に素材を配布するなどしていました。
生成AIであらゆるイメージを素早く調達できるのは、授業運用にとっても大きなメリットだと言えるでしょう。
プロジェクト学習の目的は「課題解決」であり、画像作成などの作業は最小限におさえる必要がありましたが、生成AIを活用すれば「アイデアの視覚化」にも役立ちそうです。


本日のプロトタイプ:

今回はAdobe Expressのアドオンを試したり、他の生成AIと組み合わせたワークフローを実践してみました。いま話題の「動画生成(Runwayを使用)」とExpressのアニメーション機能を連携させたプロトタイプを作成。3DCGアニメーションのような動画が生成されました。

  1. Adobe Expressの生成AI(Firefly)でロボットの絵を生成

  2. 動画生成ツール(Runway)でロボットの絵を使用し、動画を生成

  3. 書き出したMP4をAdobe Expressにドラッグして編集中のタイムラインに組み込む

  4. タイミングの調整、タイトルの追加等を行って完成

参考:


Adobeは2019年から「Creativity for All: すべての人に「つくる力」を」というミッションを掲げており、あらゆる人がクリエイティビティ(創造性)を発揮できる環境を提供するためのプロダクト戦略を推進しています(※2018年のAdobe MAXで掲げた"Creativity Platform for All"が初出)。

Adobe ExpressやCanvaなどの「デザインの民主化」を具現化するツールによって、プロではないあらゆる人たちが身近な問題解決のためのデザイン活動を実行できるようになりました。そして、これらのコンシューマー向けデザインツールと密接になっていくのが「生成AI」技術です。

一方、プロフェッショナルの世界では、生成AIのリスクについて議論している最中であり、総じて商用利用には及び腰です。商業デザインで安心して使用できる生成AIツール/プラットフォームの登場を待っている状態です(例:東京都は文章生成AI(ChatGPT)を導入しましたが、安全に活用できるようにMicrosoftの「Azure OpenAI Service」環境内でChatGPTを使用しています)。

来年後半には、AdobeやMicrosoftのコンシューマー向け製品の「生成AI」が日常的に利用されるようになるでしょう。今やるべきは「体験」を通して、可能性と問題点を明らかにしていくことです。ライブイベントは毎月数回は実施していきますので、教育関係者の皆さま、ぜひご参加ください。
2024年度の新しい高校講座として「クリエイティブと生成AI(仮)」も準備中です。



研究活動の概要:

生成AIを高校教育で効果的に活用するための倫理と実践

生成AIは高い教育効果をもたらす可能性を秘めていますが、効果的な活用方法の試行錯誤と倫理的側面の配慮が不可欠です。生成AIを安全かつ効果的に授業で使うための研究活動を行います。


生成AIが教育界で注目されている今日、特に情報科の先生方にとっては、このテクノロジーの効果的な利用方法と倫理的側面について模索していくフェーズに入ったと考えてよいでしょう。

生成AIに「丸投げする」のではなく、生徒が自ら思考したり仮説検証のプロセスで活用することが重要です。わからないことを「聞く」より、一緒に「考える」ツールとして使いこなす方法を模索しなければいけません。

また、生成AIが出力する情報の信頼性や著作権侵害の可能性について確認することも重要です。データの取扱いやプライバシーに関する基本的な知識も必要になります。

生成AIは高校教育で多くの可能性を秘めていますが、積極的活用と倫理的配慮をバランスよく取り入れることで、生徒たちにとって有益な教育環境になり得ると考えています。

現在の取り組み

Adobeの生成AIはまだベータ版のため、18歳未満のユーザーは利用することができません。生徒に体験させることができないため、13歳以上のユーザーが利用可能になるまで保留となっています。

現在は、大学や専門学校の学生を対象とした不定期かつ小規模なオンラインイベントを実施して、生成AIの可能性や問題点などを探る活動をしています。


2023年9月現在

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