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トヨタ、花王、日立……脱炭素で勝ち残るトップ70社はここだ 脱炭素経営ランキング2022【1】

世界で急速に進む「脱炭素」重視のゲームチェンジで勝ち残れるのは誰か。「本気の脱炭素経営」を実践する企業を、専門家68人の投票でランキングした。事業変革への覚悟を持ち、成長の好機に変えようとしている上位70社はここだ。

日経ビジネス副編集長(吉岡 陽氏)

日経ビジネスの、脱炭素レボリューションというシリーズ。
いまSDGsを語る上で、キーワードになっている脱炭素。
ファクトフルネスを読むと、世の中のエネルギー創出の大半を「炭素」に頼っているとあったから。本当に大掛かりな事業だと思っている。
「脱炭素」という巨大なゲームチェンジの荒波という言葉にピンときて。思わずストックした記事。↓

「脱炭素」という巨大なゲームチェンジの荒波に日本企業は立ち向かおうとしている。世界各地で企業活動を巡る新たなルールが設けられ、時代の変化をチャンスと捉えて新市場の覇権を狙うプレーヤーも続出している。

 脱炭素への対応の巧拙が、企業の競争力そのものを左右する──。かつて一部の識者が声高に叫んでいたこの考えが、今や多くの経営者やステークホルダー(利害関係者)にとっての共通認識になった。

脱炭素経営の袋小路

一方で、脱炭素時代の収益モデルを描ききれなかったり、ビジョンや目標を掲げたものの実効性が伴わず形骸化したりして、袋小路で足踏みをしている企業は少なくない。

 では、世界で進む環境変化を追い風にできる会社へと進化するための、本気の脱炭素経営を実践している企業は一体どこなのか。

トップ3はトヨタ自動車、花王、日立製作所

「企業動向」と「脱炭素」の両方の視点から、産業界を定点観測している専門家に調査協力を仰いだ。脱炭素経営の本気度と先進性、実行力などで、抜きんでていると評価する企業を1位から10位まで挙げるとともに、その理由を回答してもらった。その結果を点数化し、得点順にランキングした。あえてくだけた表現をするなら、脱炭素経営の目利きによる人気投票と言い換えることもできる。

 形式的な要件や数値に基づく脱炭素の企業ランキングは、過去にも例がある。しかし今回の調査では、むしろ回答者の主観を交えた総合的な評価を目指した。

 経営トップの脱炭素に取り組む覚悟や、時としてリスクや痛みを伴う挑戦など、多くの定性的な要素を抜きにしては脱炭素の練度を評価できないからだ。そのためランキングには、回答者の「印象」も反映されているが、これは金融市場や一般社会のステークホルダーからの評価を推し量る手掛かりになると考えた。

 調査で名前の挙がった企業は、およそ170社。その上位70社をランキング表にまとめた(調査とランキングの概要は、記事末尾に記載)。

「脱炭素経営ランキング」アンケート回答者一覧

EXの本気度に注目

結果は、トヨタ自動車(1位)、花王(2位)、日立製作所(3位)がトップ3になった。それぞれモビリティー、消費財、社会インフラの雄として、脱炭素はもとよりESG(環境・社会・企業統治)経営の先進企業として高く評価されてきた。

 トヨタは、2021年12月に電気自動車(EV)事業を大幅に拡大する新たな目標を打ち出した。この点も大きく評価されたようだ。取引先などによる温暖化ガスの排出「スコープ3」の削減に向けて強く働きかけている点など、「すべての気候変動対応が国内トップレベル」との評価を得た。

 花王は、工場の使用電力を100%再生可能エネルギーに転換するエネルギートランスフォーメーション(EX)を各国で展開。日立製作所は、2030年に自社で、50年にはサプライチェーン全体で温暖化ガス排出を実質ゼロにする目標を掲げ、それを着実に実行する仕組みや体制を整備している。

上位には製造大手のほかに、これまで多くの二酸化炭素(CO2)を排出してきたエネルギー関連企業が目立つ。火力発電所の権益を持つ三菱商事(4位)、石油元売り大手のENEOSホールディングス(5位)、国内最大の火力発電事業会社のJERA(14位)、東京ガス(16位)などだ。いずれも自社の存続を懸け、再エネや低炭素燃料への大規模な転換に危機感を持って臨んでいることへの評価が多かった。

製造・エネルギーの大手が居並ぶ中で健闘したのは、小売り最大手のイオン(7位)。巨大商業施設の電力を屋上の太陽光発電などで賄うため、再エネ事業者に設備を設置してもらい電力を全量購入する「PPA(電力販売契約)」を活用。初期投資を抑えつつ、機動的に設備を増やしている。丸井グループ(16位)、セブン&アイ・ホールディングス(20位)も、異業種パートナーなどと連携しながら店舗やサービスの脱炭素化を急ピッチで進めている点が評価された。

独自の強みを磨く

評価コメントから上位企業の共通点も見えてきた。一つは、経営層が脱炭素時代のリスクとチャンスを熟知し、社内外への情報発信をしていること。もう一つは、脱炭素を成長のチャンスとするために独自の強みを磨いてきた企業。そして事業の形を“脱炭素仕様”へと柔軟かつ大胆に変化させている企業だ。

省エネ性の高いヒートポンプや新冷媒などの環境技術を磨いてきたダイキン工業(11位)は、持続可能な事業や製品を仕分けする欧州連合(EU)の「タクソノミー(分類)法」の下でも競争力を発揮する点などが評価された。革新的な技術開発によってデータセンターの大幅な省エネ化に取り組むNTT(14位)、不動産業でありながら自ら再エネ事業を大規模展開する東急不動産ホールディングス(25位)、世界の動向にアンテナを張り投資先に対して脱炭素化を促してきた第一生命ホールディングス(27位)なども高評価を得た。

 ランキングトップ企業の脱炭素経営の実像について、本連載の第2回から詳しく見ていく。

参考図書


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