雨が待てるカメラ|Leicaに恋して
雨を待ちわびて
あの夏は、確かに雨を待っていた。
降ろしたてのLeica Q2を手に、早く雨の街を撮りに行きたいとウズウズしていたのだ。
防塵防滴を謳うカメラを持ち始めてから、雨が降るたびに新しい世界が開けるような気がしていた。
通り雨が過ぎて、すっと気温が下がる夕暮れ時。
河原の側道をことさらゆっくりと歩き、濡れた葉にカメラを向けてシャッターを切る瞬間の高揚感は今でも鮮明に覚えている。
雨が降ると、街はいつもと違う表情を見せる。アスファルトが光り、濡れた路面に映るネオンの反射が幻想的な光景を作り出す。
その光景を切り取るために、Leica Q2のファインダー越しに覗くと、見慣れないけど美しい景色が広がっていた。
雨とカメラと季節の巡回
カメラを手にして初めて、自然に興味が湧いてきた。季節ごとに咲く花や草の種類や色が違うことに気づいたのもカメラのおかげだった。
春には桜が満開になり、夏には青々とした木々が茂り、秋には紅葉が街を彩り、冬には雪が静かに降り積もる。
カメラは、これらの変化を捉えるための道具であり、季節の移ろいを感じるためのパートナーでもあった。
一年が過ぎて同じ季節が巡ってきたとき、またあの日に見た、カメラに収めた景色が巡ってくるのだと実感したのもこのときが初めてだった。
同じ場所でも、毎年微妙に違う表情を見せる。それが自然の魅力であり、写真を撮る楽しさでもある。雨の日の写真を見返すたびに、その時の感覚や気持ちが蘇る。
そうして季節が巡るごとに、新しい発見とともに過去の記憶が鮮やかによみがえる。
雨とともに、カメラと季節の巡回をする。
それは、時間の流れとともに変わりゆく世界を記録し、同時にその瞬間瞬間を永遠に留めておく方法でもある。
カメラを通して見る世界は、いつも新鮮で、美しく、そして懐かしい。雨の日にカメラを持って外に出る楽しみは、これからも変わることなく続いていくだろう。
新たな始まり
あのLeica Q2を手放した後、少しの寂しさが心に残った。
長い間共に過ごしてきた相棒を失うような感覚だったからだ。
雨の街を歩きながら、あのカメラで捉えた数々の風景を思い出しては、どこか物足りなさを感じていた。
しかし、そんな日々も長くは続かなかった。
Q2とは入れ替わりで、新しいカメラがやってきた。
それはさらに小さく、しかししっかりとしたボリューム感を持つレンジファインダーカメラ、M11だった。
手に取った瞬間、Leica Q2とは違う、不思議な使い心地に驚いた。最初は戸惑いもあったが、次第にこの新しいカメラが手になじんでいくのを感じた。
新しいカメラは、なかなか雨の日には使いにくかった。
その代わり、雨上がりの街へとよく出かけるようになった。
最初の撮影は、いつもの河原の側道。
雨が降り止み、湿った空気が心地よく感じられた。
濡れた葉にカメラを向けると、新しいカメラのファインダー越しに見える景色が、少し違った角度から鮮やかに映し出された。
小柄なボディのおかげで、より自由に動けるようになり、様々なアングルから撮影する楽しさを再発見した。
この変化は、日常にも影響を与えた。
以前はどことなくハマりきらなかった28mmという画角が50mmとなり、自分の向き合うべき被写体が明確になった。
カメラを持ち歩くのが一層楽しくなり、出かける頻度も増え、季節の移ろいをもっと身近に感じられるようになった。
春の花、夏の夕立、秋の紅葉、冬の雪景色——それぞれの季節が、以前とは違う新たな視点で映し出されるようになった。
雨の日は雨の日で、新しいカメラでの撮影が一段と楽しくなった。
雨粒が傘に当たる音、傘の下から見上げる空の色、濡れたアスファルトに映る街灯の光。
どれもが新鮮で、また新しい物語を紡いでくれる。
以前のLeica Q2では気づかなかった細かなディテールが、このカメラのおかげでよりクリアに、より美しく感じられるようになった気がしている。
また、写真を整理しているときに、ふと気づいたことがあった。
Leica Q2で撮った写真と新しいカメラで撮った写真が並んでいると、そこには自然な継続性が感じられた。
異なるカメラであっても、自分の視点や感じ方は実は一貫している。
それは、カメラという道具が変わっても、自分の中に流れる時間や季節の感覚が変わらないことを示していた。
カメラを手放したことで、新しい視点が加わり、ささやかな日常がさらに豊かになった。そして、雨の日にカメラを持って出かける楽しみは、これからも続いていくだろう。新しいカメラがもたらした変化は、また新たな物語の始まりだったのだ。
次は、このカメラでどんな景色を描こうか。
楽しみは、尽きず、果てず、日々紡がれている。
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