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父のはからい

父が息を引き取った後の話をする前に、どうしても書いておきたい不思議なことがある。

看取りからノンストップで通夜・葬儀を済ませた翌日、実は、姉と私が楽しみにしていたライブ配信があった。
姉と共通の推しであり、今回のツアー以外は欠かさず参戦していたK-POPグループ。そのドームLIVEがWOWOWで生配信されるというのだ。

昨日までそれどころじゃなかったが、ふと姉がそのLIVE配信のことを思い出した。
なぜこんなにも大変だったのか。実は元々母は、私たちの幼少期からエホバの証人という宗教をひとりで信仰していた。諸事情で自ら棄教したが、認知症で来客応対も任せられないし、事務能力はゼロに等しい。

実質喪主不在。親から教わって然るべき葬祭知識もほぼほぼゼロに等しいアラフォー姉妹なのである。オロオロしながら物知り博識な伯母たちに教わり、何とか葬式まで出したものの、身も心もヘトヘトになっていた。

ライブの生配信は今WOWOWに加入すればギリギリ見れる。1日ズレていたら絶対見れなかったはずだから、これはきっとお父さんが見ろと言ってくれてるんだ。私たちにくれたお礼なんだ。

正義の旗を振るが如く、そんなことを口にしながら、いそいそと加入手続きをした。
料金は仲良く折半し、録画もしながら見た。
ほんの束の間だが、しばらくぶりに父のことをお休みして頭を空っぽにできた。

こんなにすぐすぐお礼なんていいのに。
ありがとう、お父さん。
最期の最期まで義理堅い人だった。



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