見出し画像

DX化を含む未来に向けた新規事業部の創出【実践編】


前回、DX化とは何かについて、クレイジータンクらしい言葉で説明をしました。

上の記事ではグローバル化に例えましたが、DX化を進める企業のメンターとして関わっていく中で「DX化を具体的に推進する」ことは、車の免許取得のように一度取得さえしてしまえばそれ以降問題なく車に乗れる!ようなものではなく、「運転方法が毎回変わる自動車を乗りこなせるように都度メンタリングしていく」ものであると感じています。そしてメンター側も常に学習し、新しい運転方法を身に付けておかなければならないのです。

そんなDX化推進も含む実践編をご紹介させていただきます。

しかし、 DX化はそれ単体での説明はできないことを前回の図でも書きました。

スクリーンショット 2021-12-29 5.30.51

そこで現在クレイジータンクが関わっているクライアント企業と進めてきた「クリエイティング事業」の流れをご紹介させていただき、クレイジータンクらしいDX化を含む企業内新規事業創出の様子をご覧いただければと思います。
※クリエイティング事業という言葉の説明は別記事でご紹介させていただきます。

2020年11月から現在に至るまで継続的に続いている業務なので、完成形をご紹介はできませんが、これからの時代に向けた新規事業に挑戦する企業の姿を見ていただければと思います。


クライアントについて


今回ご紹介させていただくクライアントは株式会社ユタカ産業様です。

株式会社ユタカ産業は、東京都世田谷区に拠点を置き、ものづくりを中心として活動してきた企業で、今から69年前、1952年にゆたか螺子(らし)株式会社として締結部品の販売を中心に営業を開始しました。

現在は化粧品什器事業を柱として、年商10億円の企業へと成長しました。しかしコロナの影響により、化粧品の売り上げも激減する中で、新規事業部を発足し、2021年9月より社長に就任した野口恵理氏がトップとして、これまでの社歴を大切にしながらも、新しい株式会社ユタカ産業を目指しています。

10月には新規事業部が展開しているデジタルサイネージ「SmartBAR」のニュースリリースも発表され、リリースに関する情報発信にクレイジータンクも関わらせていただきました。

ニュースリリース


そしてクレイジータンクと株式会社ユタカ産業様は、協業に近い形で新規事業を進めています。これは当初からそのお話があったわけではなく、クリエイティング事業というこれまでにない業務を進める中で生まれたビジネススタイルです。今回の新規事業案件には、他にも協業相手はいますが、ここでは控えさせていただきます。


クリエイティング事業スタート時に共有した未来予測


クレイジータンクは独自の未来予測事業を展開しています。海外ではSF的な思考で事業の未来を考えるSFプロトタイピングなるものが出てきているそうですが、クレイジータンクのメンバーにはもう16年前から未来予測を事業の中核に据えて仕事を進めてきた実績もあり(例えば今から13年前にデータだけで家を設計する試みなど)、本事業においてもクライアントである株式会社ユタカ産業様が今後どうなっていくのか、そして社会がどのように変化する可能性があるのか、などを一緒に議論しました。

他にも「お金」の話。お金、というと資本主義にとって一番重要な物で、物やサービスなどほぼ何にでも交換できる物という認識がされていると思います。しかしクレイジータンクには49年前に連載がスタートした"漫画はだしのゲン"理論なる思考があり、内容はさておき主人公のゲンがアルバイトで3円もらって手が震えるという描写があります。今現在、3円もらって手が震える人がいるでしょうか。そうなのです、お金は一定の価値を持っているわけではなく、常に変動しながら今この一瞬の価値として存在しています。なので、もし今1億円の貯金があったとしても、50年後には幾らの価値になっているでしょうか。投資とは、その時代その瞬間に生きていけるだけのお金を生み出すために使うお金のこととも言えます。

このように理解しているようでしていない物事の本質から、ものづくりで言えば脱炭素が当たり前になっている海外の状況、テクノロジーの行末など、未来を自分たちの頭で予測する時間を設けました。

これは未来はこうなるといった正解論を探すということが目的なのではなく、危機感や世界が今どうなっているのかを知ろうとするマインド、与えれて仕事をしていた環境から自分で仕事を創造していく環境を作っていくためなど、会社勤めではなかなか得られない"サバイバル思考"を持つための入り口として重要な議論の場となっています。


クリエイティング事業phase1
【2011年11月~2022月1月(現在)】


準備期(2020年11月〜2021年5月)
1.調査:既存の仕事を請負い、クライアントを知り、こちらを知ってもらう
2.考察:社内状況や経営層の業務状況、思いを可視化
3.創造:新規事業の具体的な内容設定とメンバー選定
4.構築:補助金申請への挑戦など、継続的な組織作り

理解期(2021年6月〜2021年11月現在)
5.発進:会社と選定されたメンバーに向けた説明
6.共有:メンバー決定後、新規事業内容を共有
7.練習:新規事業に対するマインドなどを身体化
8.前進:メンバー全員で課題を理解

行動期(2021年12月〜2022年1月現在)
8.成長:個々の力に合わせたメンタリング開始
9.行動:社内企画を展開し、実装に向けて動く
2022年1月7日(金)に社内で初の企画が実装された。

2022年1月からはphase2へ


全体像を分かりやすくするために図にしてみましたが、一つ一つ時間をかけて図のような全体像を構築していきました。

スクリーンショット 2022-01-05 10.23.48


オーダーメイドで考える


私たちクレイジータンクは常に"オーダーメイド"で考えることを大切にしてきました。上の図も「DX化はこうあるべき」とフォーマットを作ったりせず、その会社にあった成長とはどんな形かを一緒に考えることを大切にしています。

株式会社ユタカ産業様の場合、まずお互いを知るために既存のお仕事依頼を請負い、主にデザイン提案やシステム提案をさせていただきました。信頼や実績は仕事で計る。とても大切な時間だったと思います。

スクリーンショット 2021-12-30 23.44.46

スクリーンショット 2021-12-30 23.45.10


お互いに信頼できると分かった段階で、現社長(当時副社長)の野口氏と打ち合わせを重ね、これから株式会社ユタカ産業がどこに向かうべきなのか、社会はどうなっていくのか、どんなメンバー編成で新規事業をスタートするかなど、新規事業部発足に向けた準備が進みました。


ユタカ産業は69年続く会社である


野口氏からいただいた新規事業内容のご相談は、元々化粧品什器や空間デザインに携わっていたこともあり、化粧品関連のクライアントやお客様にデジタルサイネージを使った売り場作りを提供したいというお話でした。しかし、野口氏と議論を深める中で、これからの時代を予見し、デジタルサイネージという什器を店舗に展開するだけではなくコンテンツを含めて提案をしていくこと、さらにサイネージに関わらずどんなことにでも面白く答えていけるチームを編成していくことを目標に設定し直しました。そして社内メンバーから部門横断で数名をアサインし、チーム名をNVC(New Value Creation)と名付けました。

そして、これまで69年の歴史を持つ会社という特性も忘れるべきではないという思いも汲み取り「守・改・翔」のビジネスモデルをご提案しました。

スクリーンショット 2021-12-30 14.55.32

日本の茶道や武道などの世界に守破離(しゅはり)という言葉があります。日本において芸事の文化が発展、進化してきた創造的な過程のベースとなっている思想で、そのプロセスを「守・破・離」の3つの言葉で表しています。

私たちクレイジータンクもこの3つの言葉をアレンジし「守改翔」を作り出しました。

:これまで培ってきた事業や人間関係を大切にする。新規事業を支える可能性のあるベースとなる存在。
:新しい時代に向かって意識改革を起こすためのマインド。翔を起こすための理解や気持ち。
:新しい時代に向かって起こす行動や新規事業。それらを動かすための体制やシステム。

新しいことだけが正しいのではなく、先人に感謝しつつ、先人の知恵や支えの中で未来に向かってシステムや体制を組み、新規事業を動かしていく。そして、変化を受け入れる気持ちを大切にする。

この3つの言葉の存在は、新規事業を動かす中で、今自分たちは何をやっているのかを理解する時にとても役立つ指針になりました。特に、既存事業にも同時に関わるため、今自分たちがやっていることに迷わないための共有言語として役立ちました。

※この「守改翔」の提案は、株式会社ユタカ産業という会社が新規事業を進める時の独自の方向性であり、オーダーメイドで提案したビジネスプロセスなので、他の会社で必ず当てはまるものではありません。


デジタルありきで考える


株式会社ユタカ産業様は、私たちクレイジータンクの他にも色々な会社とチームを組み、今回の新しい事業を展開されています。デジタルサイネージで言えば、什器や空間デザインはユタカ産業、コンテンツアドバイザーや人材育成などはクレイジータンク、他にもコンテンツ制作やプラットフォームはまた別の会社と協業に近い体制を取っています。その中で、今まで化粧品什器の制作を主力事業としてきた形からデジタル事業にも移行するため、普段から"デジタルありき"で物事を考えるマインド変化が求められました。これが分かりやすくDX化の一つだと思います。

デジタルありき、はIT技術を使うという他に、今までにないデバイスに触れ、その使い方を考える「発想」にも力が求められます。

社長のおもちゃ、と呼ばれる、野口氏が時折協業相手から借りてくるデバイスを囲んで、みんなで使い方を考える時間も生まれています。

画像6

画像7

デジタルがある生活が当たり前、というマインドを作り出すために、わからないことは調べる、使い方を創造する、デジタルを楽しむことを日々大切にしています。

さらにNFTやメタバースなど、世界を変えると言われている技術なども日々進化しています。常に新しい情報に触れ、その活用方法を模索し続けることも、これからは大切にしていく予定です。


人間的価値を理解し、発想をデジタルに組み合わせる


スマホが普及してインターネットはより人間にとって身近なものとなりました。実はスマホが世の中に出てくる前からスマホに似たデバイスは存在していたのですが、知っている人は少ないと思います。それはその当時最新だったデバイスに"人間的価値"が欠如していたからです。これは社会学者なども過去を振り返った時にの評価として言葉にされています。

人間的価値、とは本当の意味で人間のことを理解することを意味し、例えば新しいデバイスや技術が生まれた時に、

本当にそれを人は使うのか

という問いを忘れず、使われて初めて価値が生まれるという意識を常に大切にするマインドを育て続けています。

このような図をイメージすると分かりやすいかもしれません。

画像11

テクノロジー技術が最新のものは一般に普及するまでに時間がかかる場合が多く、人の理解度や使用頻度は自ずと下がります。一方、技術が古くなると企業でのアップデートの際に見直されたり、人気がなくなったりする傾向があります。その時々に社会にとって丁度良い場所はどこかを見抜き続ける必要があります。それには人をよく理解しておかなければならないのです。それを人間的価値と呼んでいます。

その価値感覚を得る手段としてクレイジータンクが用いているのが"アナログの力"です。

デジタルありきで考えながらも、常にアナログ的なめんどくささや脳と手を一致させる感覚の大切さも同時に伝えています。

その一例にクレイジータンクが不要になったペットボトルで作った作品ブランドPETUPがあります。打ち合わせ前に作品を見せ、実際に使ってみることで、デジタルだけになりがちな思考をアナログに戻させ、人としての価値を見失わないような施策を講じています。



多角的に価値を組み合わせ、地に足をつける


情報社会、とよく言われますが、情報をたくさん取得すれば良いということではありません。そしてどんどん発想をすれば良いということでもありません。

情報が持つ価値を分野を超えて組み合わせたり、価値の落とし所を多様に考えるなど、一方向だけで考えるのではなく、常に価値が動いているイメージで物事を考える訓練をしています。

この内容に関しては、正直分かりやすく言語化することが難しく、図でイメージだけお伝えします。体験した人にしか分からない部類に入る内容ですが、これからの時代を生き抜くためにとても大切な思考方法だと確信しています。(※詳しくはクリエイティング事業についての記事でご紹介させていただきます)

スクリーンショット 2022-01-04 3.23.20

価値の軸線を増やし、面積が「0」にならないようにします。それが会社や個人にとってのリスクヘッジとなります。x、y、z軸はお互いに影響を受け合い、軸自体が動くこともあります。

そして、新しい情報が誰にも理解されなかったり、誰にも使われなければ意味を成しません。DX化で最も重要なことは、需要に対してちょうど良いラインで社会に提案できるか、デジタル活用、情報活用ができるかだと考えています。社会に流れている情報に惑わされず、地に足を付ける訓練もまた重要です。


決断速度の早いチームを生む心理的安全性の確保


新規事業部を発足するにあたり、事業内容やマインドセットの他に「心理的安全性の確保」もとても大切な命題としました。NVCチームには20代から40代までのメンバーの他にベテランが参加したり、社長直属の組織であるため、発足当初は意見がしにくいといった雰囲気がありました。言いたいことが言えない、忖度してしまう、そういった風潮を無くし、誰でも思ったことが言える環境作りを目指してきました。

そして現在では新規事業部を発足した2021年6月には考えられないほど、メンバーが意見を言い合える状況になっています。

心理的安全性を生み出す効果には「他者を否定しない」「分からないことを一緒に解決していく」といったマインドも生み出します。これはDX化においてもとても大切な要素で、常に新しい技術が生まれる中で、誰もが初めてのことと向き合う時間が生まれます。初めてのことに取り組んだ人の失敗を一つ一つ否定していては建設的な議論や成長は見込めません。DX化は特にスピード感が求められる取り組みですので、決断速度の速いチームの意思決定を促していくようなシステムを作ることが重要です。

「心理的安全性の確保」方法に関しては、簡単に言語化できる内容ではないですが、一つ言えることはやはり"オーダーメイド"だと考えています。一人一人の意見に耳を傾け続け、必ずフィードバックをする。絶対に面倒だと思わない。そして必ず一つ二つ深みを持ってフィードバックを返すなど、全員の成長を促しながらも一人一人の時間を大切にしてきたからこそ実現できているのだと思います。

これだけ変化の大きな時代、そして情報過多な時代に、若手の意見や情報に価値がないわけありません。多様な意見や調査結果を発想を持ってまとめ上げ、価値を作り上げていくチームを今もなお目指しています。


新規事業部が発足して約半年で...


他にもここでは書ききれないくらいの施策を講じてきました。ここからの内容は、色々な会社でも適応できる施策がたくさんありますので、一つ一つ詳しくは別noteでご紹介させていただきます。

スケジュールを図にすると以下のようになります。

スクリーンショット 2022-01-02 18.46.36


スラックを使った24時間対応メンタリングは、心理的安全性の確保の話にも繋がりますが、メンバーそれぞれの"熱"や"思い"をなるべく大切にするために、24時間いつでもメンタリングを行える体制を整えていました。新規事業はそれだけべったりと寄り添う時間が大切になることがあります。

他にも社内研修JisoAniaでは、よくある一過性の研修制度ではなく、しっかり身体化できる研修を目指しました。JisoAniaに関しても別記事で書かせていただきます。

スケジュール全体を見るとあまり見たことのない言葉があると思います。これは「コンサルティングとはこういうこと」「人材育成はこういった仕組みで」など、フォーマット化された決まったことをやるのではなく、会社や経営層だけでなく、社員一人一人と向き合う中で生まれた施策だったからこその結果でした。

そしてついに2022年1月7日(金)、新規事業部初の社内企画が実装されます。2022年からは「phase2」へ移行し、これまでもかなりのスピード感で動いてはきましたが、さらに加速して、デジタルサイネージの展開や株式会社ユタカ産業から生まれる価値を世の中に出していけるようにサポートしていく予定です。


クレイジータンクはコンサルティングやディレクションといった世の中にある「仕事の常識」に囚われず、今自分たちに何ができるのか、関わっている会社や組織を成長させるために本当にやるべきことを何かを考え、"未来予測"と"常識に囚われない発想"を大切にしながら、これからもクリエイティング事業を展開していきます。

クレイジータンク一同

クレタンロゴ


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?