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次の10年に向けて。

あれから10年経った。


僕は10年前、認識の及ぶ範囲の親戚や知人を失ってはいない。

財産も、住む場所も、大切な人も、何も失わなかった僕の言葉が、10年経った今誰かに響くのかどうかは疑問だけど、

何も失わなかった人間だから何も言わないってのも、なんか違う気がする。

だから、書く。

俺たちは何をやってたんだ?

平穏無事な日常であれば、家から一歩も出なくても、誰かと繋がっていなくてもひとりで生きていけると”錯覚”できていた世の中。

でもそれが一瞬で崩れ去る。

そんな「何かあったとき」に身近に誰かの存在があること、人とのつながりがあることがどれだけ心強いか。

人は、ひとりでは生きていけない。

10年前、それをほとんどの日本人が痛感したと思う。


「つながり」の価値やコミュニティの重要性は再認識され始めた。

人々の「生き方」の中に、「つながり」の尊さが確実に刻み込まれた。

…はずだったんだけど。

田舎で活動し、田舎から発信しているからよく分かる。

「田舎の人間関係がめんどくさい」

「常に人の目があってプライベートが少ない」

「色んなことがすぐに噂になるのが嫌」

コミュニティのなかで人と繋がっていることを嫌う話。

これが未だに後を絶たない。

・・・・・・

この10年、俺たちは何やってたんだ?


次の10年に向けて。

失ったものがある人とない人とでは、つながりの重みも違うから仕方のないことかもしれない。

喉元過ぎれば熱さを忘れる、というのも人の性。

だけど、10年経ってこの有様なのは、たまらなく、やるせない。

失ってからじゃ遅いというのに。


だから、次の10年はせめて、

みんなそれぞれ身近なつながりやコミュニティを大切にできる世界に変わってほしいと、本気で考えるようになってきた。

そのために、何ができるのか。

僕はスイカ農家だけど、

「スイカで世界を変える」とか、そんな風に考えたことは一度もなかった。

僕なんかが世の中を変えるなんてできるわけないって思ってきた。

これはネガティブな諦め、というよりは「まずは自分の手の届く範囲の人たちにくらいは良い思いをしてもらいたい」くらいの感覚で。

ところがここにきて「あ、なんか世の中にちょっとだけ良いこと起こせるかも」って思えるようになってきてる。

でっかいスイカは世界を救う?

いきなりだけど、僕が作ってるスイカはけっこうデカい。

1玉で10kgは軽く超えるものばかりで、これはスーパーに並んでるスイカの中でもかなりデカい方だと思う。

ぶっちゃけると「もっと小さいの無いの?」「冷蔵庫に入らない」「大きすぎて食べきれない」という声をいただくことも時々ある。

地域のブランドとして「大玉」であることにはこだわっている一方で、

お客さんが嫌がるなら、大きいスイカつくるのはやめた方がいいのかな…

と、誰にも言えないけど頭をよぎったこともある。


でも、今ならはっきり言える。

スイカは、でっかい方がいい。


「ひとりで食べきれないほどでっかいスイカ」なら当然「何人かでシェアする」必要がある。
(ときどき、でっかいスイカをひとりで食べちゃうほどのスイカ魔人さんもいるけど、それは今は置いといてw)

それは裏を返せば「スイカをシェアできる誰かがいる」ということ。

それは家族や親戚かもしれないし、友人・知人かもしれないし、恋人かもしれないし、ご近所さんかもしれない。

とにかく、でっかいスイカを食べるためには、スイカを分かち合えるような人間関係が必要になる。

・・・・・・

…あれ?

これって、僕がこうなったら良いなって思ってる世界そのものじゃない?

みんなそれぞれ身近なつながりやコミュニティを大切にできる世界って、こういうことなんじゃないの?

「みんなで分けなきゃ食べきれない」スイカを作り続ければ、そんな世界に近づけるんじゃないの?

でっかいスイカを作ることに、意味はあった。


もう一度言う。

スイカは、でっかい方がいい。


食べるために「つながり」が必要になるスイカ。

震災から10年。

つながりの大切さを、みんなが完全に認識するには至らなかった。

次の10年は、みんながそれぞれの身近なつながりやコミュニティを大切にできる世界になってほしい。

だから僕は、でっかいスイカを作ることでそんな世界に近づけてやろうと思う。

大切な人と、最高に美味いスイカを分かち合って、感動を共有する。

そんな風景を、日本中にたくさん作ってやろうと思う。

「つながり」を取り戻させてやる。

スイカの感動を分かち合うことを口実に。


そのためにも、分かち合う理由になるほど美味いスイカでなければ意味ない。

思わず誰かに勧めたくなるような、そういうスイカを作らなければね。

次の10年は、もう始まってる。


ひとりでは歩いていけない。

そんなわけで、とにもかくにも今年も最高のスイカをつくらないと始まらないんだけど。

スイカつくるのがとにかく大変。いちばん大変。

毎年、仲間がいないと絶対走りきれない。

だから今年も、アシスタントさんを募集してます!

一緒にこのスイカを世に送り出してくれる仲間を待っています。


力を貸してください。

10年後、ちょっとだけ世界が良いものになっているように。

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