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ラスボスがいっぱい

 遥か太古、神秘の力が息づく剣と魔法の時代。  暗黒魔界から大魔王ジャークラトールが現れ世界を席巻した! しかし聖剣の勇者アリクス一行が立ち向かい、……そして最後の決戦が始まった! 「今度こそ止めだ!」  聖なる輝き湛えし刃が暗黒エネルギー体となりし大魔王を斬り裂く! 三度目の正直! 「グファァーッ! この余がーッ!」  断末魔を置き去りに悪の気配は消え失せた。それと同時に暗黒次元回廊が崩壊を始める。 「この空間を維持する魔力が無くなったのだ」  即ち遂に大魔王

    • 肉械のネフィリム

       そこから見た景色は平凡な町と言った感じだった。平屋の屋根は肉が抉られ、道路に血の川が流れ、繁華街のビルが爛れてなければ、普通としか思わなかったろう。  血の雨降らす空には金属的なパーティクルの群れがうようよ漂い、町の全部を食い散らかしている。 「ここはもう駄目だな。《出口》までナビしてくれ」  俺は町の《外》でモニターしている《ヤマアラシ》に引き揚げの意思を伝え、移動を開始した。 『入ったばかりで勿体ねぇな。こんな《肉》他にはねぇんだぞ』 「そりゃ何か一つは上りが

      • チャンピオンシップ・オブ・ザ・リビングデット

         ゾンビと言う言葉は西アフリカから中南米に持ち込まれた民間信仰ブードゥーに由来するが、キョンシーとかレヴァナントとか、リビングデッド的な伝承は洋の東西を問わずあちこちに存在する。  とは言え昨今のフィクションにおけるゾンビはだいたいウィルス感染だ。オカルトも別になくはないが、ゾンビと言ったらウィルスってイメージが強くなってる。発生源は暗黒製薬会社が云々ってパターンが多いのかな? 日本の有名なゲームシリーズみたいに。  今USAで発生しているゾンビ禍もそのパターンだ。アゾー

        • スシ!邪神!ドラゴンガール!

           抜けるような青に油膜じみた小汚い色彩が滲む晴れ空の下、ショッピングモールは地獄となった! その震源地たる屋上では悍ましい触手と化した寿司レーンが何本ものたうち、異形の寿司をまき散らしている。 「やられた!」  その日はモール屋上でトレーディングカードゲームの大会が開催。この俺虎城勇魚は管轄自警団として警備に従事し、大会は特別な警戒の下に進められた。最近この近隣でタコ頭の邪悪族の目撃情報が多く、この大会で何事かを目論んでいるとみられていたのだ。  何せここは混沌の海に浮

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          大開催!地獄ゲットバックキャンペーン!!

           燃える炎の空から、十の火が零れ落ちた。火はやがて風に吹き消され、中から十の人が現れた。  罪の灰が降り積もる地上から、一人の鬼がその様を見ていた。今落ちてきた連中は鬼にとって救世主となる者たちだ。これから鬼は彼らを訪ね、仲間にする予定である。だがその表情は厭わしげであった。何故なら奴らが基本的にクソ野郎だと知っているからだ。 【一人目、義怒打 瞋持(きぬた しんじ)】 「テメェ鬼か! つまり悪もんだな!? 鬼退治だオラアアーッ!」 「グワアアーッ!」  早速これだ

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          KILLSWITCH OPERATIONS:Haunting Machine Hunting

           アイギ山はミッドランド都市圏近傍の山地で、都市部から逃れた者が隠れ潜むには恰好のロケーションである。実際に今朝方、この山を貫く谷川支流沿いの住宅地跡にて逃走中の亡霊憑きの反応が捕捉され、当該エリアへ至るルートが封鎖された。  亡霊は未成熟者を汚染し暴走させる存在だ。汚染は不可逆の為、破壊する他ない。それを担う専任作戦群をキルスイッチと言う。  ◆  本流側からエリアに進入した我々を出迎えたのは、緑の氾濫に押し潰された旧文明の残骸だった。原型を残した家屋など一割もあるま

          KILLSWITCH OPERATIONS:Haunting Machine Hunting

          XRシャーク.jp

           204X年9月、K県臨海工業地帯にて爆発事故が発生。大規模ナノマシンプラントに穴が開き、大量のナノマシンが海洋に流出した。  ナノマシンはプランクトンとなって漂い、小型の魚介に食べられ、それらも更なる捕食者の餌食となり、食物連鎖による汚染物質の生物濃縮はやがて頂点捕食者へと至る。  即ち……。  ◆  専門学生の比賀石矢太郎は外出を殆どしなくなった。授業には出ている。交友もあり、授業後は友人らと語らったり遊んだりもする。 「あ、バイトの時間だわ」 「じゃまた明日

          XRシャーク.jp

          the Flame Reflection

           2042年10月31日、六畳一間の安アパートの一室にて。  片隅に設置されたWiFiルーターが熱波を発し、型落ちタブレットの画面が炎を噴き上げた。飛び出た火の塊が一つ空中に蟠ると、徐々に形を変えていく。それはやがて人の形をとり、目と口を開いた。 「こ、れ、は……」 「な、なんなんだこいつ……」  部屋の主であるヤスシは腰を抜かしてへたり込んだ。熱い。そしてわけがわからない。 「正義、だ。人々、から、託された、悪への怒り、だ」 「なんだ、何なんだお前! 俺が悪って

          the Flame Reflection

          クエスト攻略型日常系ファンタジー 物語られない冒険譚

           今更説明するまでも無い事だろうが、ダンジョンとは危険な魔物の巣窟である。神話によれば、天地の神々に背いた邪神が地上にかけた呪いのせいで自然発生する様になったと言う。あっても人間にとって基本的に迷惑な存在なので、大抵は発見次第攻め込んでとっとと潰してしまう事が多い。  しかしてこのニビイロ鉱山は、人間が管理するダンジョンであった。 「どこがだ!」  鉱山内に荒っぽい女性の声が響いた。薄暗くも仄かに光る鉱石に照らされる坑道にて、狼じみた小鬼の集団に追われつ戦う六人組がいる

          クエスト攻略型日常系ファンタジー 物語られない冒険譚

          ワイヤードゲーム脳ゴー・トゥ・ヘル!オンライン

           昔、事故で半身不随になりかけた俺は、当時実用化され始めた神経インプラントを受け入れた。当時のインプラントは有線で外部機器に接続可能であり、退院後俺はPCに繋いでゲームに興じた。  神経直結は究極のロスレスだ。テクではトップに敵わんが、反応速度だけで結構ゴリ押し出来て爽快だった。今じゃ規格と法の整備が進んで余計な機能はつけられなくなり、俺の速さに勝てる奴は今後現れまいって点でも優越感を得られた。  そんな俺は今、謎のゲームに閉じ込められている。 『皆さん初めまして。私は

          ワイヤードゲーム脳ゴー・トゥ・ヘル!オンライン

          まが鮨

           まが鮨本店はさながら回転寿司のテーマパークだ。曲津駅より徒歩一分、まが鮨本社社屋の六フロアを占める店舗は最上階に最高級寿司が味わえる金、オフィスや立駐を挟んで焼き・炙り・辛味の火、水流レーンを採用した水、ベジタリアンな木、普通の百円寿司である一般、そして地下に虫等ゲテモノの土となっている。 「実は水フロアは金までとはいかんが、ちょいとお高め贅沢指向なんだ」  そう言う先輩に連れられ、俺達は水フロアに入店した。客入りの割に店内は静かで、心地の良い水音が聞こえてくる。調理場

          まが鮨

          巨骸兵装ソウルレスデーモンズ

           東の大山脈を越え来たる侵略者は巨人を繰る。眉唾物の噂が本当だったと知れた時、ビュリングヒルの町は恐怖と混乱に包まれた。  襲撃の先触れは、乾いた荒野を蠢く赤き砂塵の積乱雲。その先端を駆ける鉄甲固めの大地竜が町に突っ込んだかと思うと、そいつの曳く特大荷車から緑の甲冑を纏う三体の巨人が威容をもたげ、太陽の光を覆い隠したのだ。  動作緩慢にして前傾で杖を突く巨人の姿は老人を思わせた。だが歩くだけで石畳は捲れて跳ね上がり、屋根に葺かれたスレートは震動に浮いて脱落する、また杖を振

          巨骸兵装ソウルレスデーモンズ

          逆噴射小説大賞自作ライナーノーツ

           どうも皆さん。逆噴射小説大賞も最終日を迎えました。そこで今回は、逆噴射小説大賞に投稿した自作品のライナーノーツをお送りしたいと思います。まず逆噴射小説大賞とは? これです。 ではいってみましょう。 ・魔龍の肉冒険者に伝わる食の禁忌、それを犯した者が辿るは如何なる末路か。  ファンタジー作品の食事事情として、魔物を食べる描写があることがある。だけど、人魚食って不死身になった尼僧とかいるし、力ある存在の肉ってヤバイと思うんだよね。  この作品世界では、魔物は邪神がかけた呪

          逆噴射小説大賞自作ライナーノーツ

          「ラブリーチューブ・オン・エアー!」 メンテナンスのお知らせ

           アプリ「ラブリーチューブ・オン・エアー!」は、美少女を稼げるアイドルチューバーに育て、再生数とチャンネル登録数を競う育成リズムゲームである。  トリックオアトリート! 現在ハロウィンイベント開さSPLAAAASH! 「キャアアーッ!」  飛沫く鮮血! 飛び交う悲鳴! 一体何が!? 「プリュリュ~」  惨劇の渦中にいるのは、血に塗れた丸く愛らしい生き物。それは別のゲーム「グランドブレイド・レジェンド」に登場するモンスター、プリュリュだ。先日までそのゲームで本作とのコ

          「ラブリーチューブ・オン・エアー!」 メンテナンスのお知らせ

          夜の校舎には怪人が出る

           夜の校舎の上、満月の中を踊る様に飛ぶ影が一つ。その姿は人の輪郭をしていたけど、背中には翼があり、どう見ても人間ではない異形の怪物だった。だけど美しいと思った。だから彼女の名前は美鳥なんだと、多分間違った納得をしてしまう程に。 「君も一緒に、どう?」  美鳥先輩が降りてきて、僕に手を差し伸べてきた。表情を作れない人外の顔が、優しげに微笑んでいた。  ◆  みんなが知らない隠された真実。世界征服を企む秘密結社は実在した。それも複数。だけどそうした勢力が出てくる度にヒーロ

          夜の校舎には怪人が出る

          非凡なるたかし

           俺の名はたかし。どこにでもいるわけじゃない非凡な少年さ。歳は男子高校生ぐらいで、ルックスはイケメン! 何処を探しても俺みたいな人間は二人と居ないだろう。  そんな俺は今、落ちている。何故かって? 俺の特別な才能に目をつけた奴がいて、そいつが「お前にしか出来ない使命がある」とか言って、俺の事を空高く打ち上げやがったんだ! だけど俺は飛行はできないので、重力に従ってこのザマさ。全く乱暴な手段を採る奴だ。俺は貴重な存在だぞ。帰ったらただでは済まさん。  まぁ、俺は特別な才能の

          非凡なるたかし