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燃える炎の空から、十の火が零れ落ちた。火はやがて風に吹き消され、中から十の人が現れた。
罪の灰が降り積もる地上から、一人の鬼がその様を見ていた。今落ちてきた連中は鬼にとって救世主となる者たちだ。これから鬼は彼らを訪ね、仲間にする予定である。だがその表情は厭わしげであった。何故なら奴らが基本的にクソ野郎だと知っているからだ。
【一人目、義怒打 瞋持(きぬた しんじ)】
「テメェ鬼か! つまり悪もんだな!? 鬼退治だオラアアーッ!」
「グワアアーッ!」
早速これだ。
資料に依ればこの義怒打瞋持と言う少年は正義感が強く、一番与しやすそうな感じがした。とは言え短気ですぐ殴るとの事で、怒りに触れないよう注意して話さなければならないだろう、鬼はそう考えた。話しをする前にぶん殴られた。
「やめグワアアーッ! やめれ! 儂は悪い鬼では無い! 地獄の獄そグワアアーッ!」
「ラアアーッ! 地獄は悪もんの巣窟だろォラアアーッ!」
「グワアアーッ! 違う! 確かに地獄は地獄みたいな処だがいいもんの管轄だ!」
「いいもんだァ?」
そこで瞋持は漸く殴るのを止めた。彼は一応根は善人なのだ。
「然り! 地獄とは悪もんを囚えておく処よ。言うなれば刑務所。ム所が悪もんの巣窟か? 違う、囚えておく処よ。つまりいいもんの管轄だ。地獄もつまりは同じよ」
人間世界の法律上のアレをざっくりいいもんとするのは語弊があるかもと鬼は思ったが、この際シンプルに行くのが一番だろう。
「なるほど」
「そこに努める獄卒たる儂は公務員と言った処よ」
「で、その地獄の公務員が俺に何用だ?」
「貴様は義に篤い様だが(謝ってくれんけど)その短絡的な気質のせいで生前罪を犯した。よって地獄に落ちる予定だったが、諸事情で贖う機会が与えられることとなった」
「はぁ、機会って?」
「地獄が悪もんに乗っ取られたので助けて下さい」
こうして鬼は最初の仲間を得た。しかしここからが本当の地獄。先が思いやられる話である。
【続く】
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