業務提携を促進する資金調達ラウンドへのターニングポイント
あおぞら企業投資株式会社 代表取締役CEO 久保 彰史氏 ×
コネクテッドロボティクス株式会社 代表取締役ファウンダー・沢登哲也
スタートアップがぶつかる壁のひとつに「資金」があります。どんなに優れた技術があってもビジネスとして成り立つまでには時間がかかり、資金不足から断念せざるをえないことも。そこで重要になってくるのが「資金調達」です。
今回、飲食店向けのロボットや食品工場向けの惣菜盛付ロボットなどを展開するコネクテッドロボティクス株式会社は、あおぞら企業投資株式会社が提供するベンチャーデット(※)「HYBRIDファンド」を活用し、次なるステップへ進みました。
現在は続々と大手企業と資本業務提携を進めているコネクテッドロボティクスですが、その過程において、「HYBRIDファンド」の存在が大きかったといいます。 そこで同ファンドを通じてスタートアップの事業成長を支援する、あおぞら企業投資株式会社 代表取締役CEO 久保彰史氏(以降、あおぞら企業投資・久保氏)と、コネクテッドロボティクス株式会社 代表取締役ファウンダー・沢登哲也(以降、CR・沢登)の両者に、それぞれの期待を伺いました。 ※対談はオンラインにて実施いたしました。
日本全体が抱える課題解決に繋がるという期待
―あおぞら企業投資さんは、投資などを通じてスタートアップの拡大成長に寄与されていらっしゃると思いますが、なかでも「ベンチャーデット」に力を入れていると伺いました。
あおぞら企業投資・久保氏:はい。我々はあおぞら銀行100%出資のベンチャーキャピタルです。ベンチャーキャピタルと言いますと通常は、株式投資での普通株・優先株が中心になると思いますが、「ベンチャーデット」というカテゴリーでの投融資をメインに行なっています。
ベンチャーデットというのは、エクイティ(株式資本)投資と、銀行が行う融資の間を埋める資金提供のことで、創業期から成長期までの間を繋ぐ金融支援になります。
スタートアップの皆様をご支援する中で、エクイティ投資と銀行融資の間に隔たりがあることを課題に感じ、着目したという経緯があります。
―「HYBRIDファンド」は、2019年に国内初のベンチャーデットファンドとして設立されたそうですね。手応えはいかがでしょうか。
あおぞら企業投資・久保氏:そうですね、エクイティだけではない手法で成長資金を確保したいというニーズには、一定程度応えられているのではないかと思っています。スタートアップの皆さんには、ベンチャーデットという調達手法があることを知っていただき、もっと身近なものにしてもらえたら嬉しいですね。
―今回、「HYBRIDファンド」を活用されたというCRさんですが、まずは、CRさんが今取り組まれていることを教えていただけますか。
CR・沢登:我々は今、飲食と食品工場、2つのビジネスを展開しています。これまでは飲食が中心だったのですが、食品工場が大きく伸びており。具体的な製品でいうと「Delibot™(デリボット)」という惣菜盛付ロボット、蓋閉めロボット、AIの検品ロボット、この3種類を日本全国、そして世界へどんどん普及させて、食品の製造ラインをすべて自動化しようと取り組んでいます。 2025年末のIPOを目標にしていますので、そこに向けて開発を加速させているところですね。
―あおぞら企業投資さんとCRさんの出会いはどのようなきっかけだったのでしょうか。
CR・沢登:我々に出資してくださっているある会社の方にご紹介していただきました。当時は資金調達に動き始めていた時期だったのですが、ベンチャーデットという仕組みがあるというお話を聞いて、非常に興味を持ちました。それが約1年前になります。
あおぞら企業投資・久保氏:最初にCRさんとお話しした際に、飲食で活躍するそば茹でロボットの話を伺いました。コロナ以降、特に飲食業界は人材が確保できないという問題を抱えています。
また、当然飲食だけではなく、少子高齢化もあってどの業界でも人手不足な状況にあります。CRさんは、そうした日本全体の大きな課題を解決できる会社であると感じました。「つらい仕事をなくす」というビジョンにも強く共感しまして、我々にお手伝いができないかと思いました。
特に資金面については、例えばソフトウェアのみで展開されるスタートアップであればそこまで多くの資金を必要としないかも知れませんが、CRさんの領域はロボットというハードウェアが絡むので、どうしても多額の資金が必要になってくる。大きな資本を必要とするビジネスを応援していくということは、銀行という背景を持つ我々とって特に期待されている役割の一つであると考えていますので、ピンと来たのを覚えています。
「HYBRIDファンド」をきっかけに大手企業と提携
―CRさんが「HYBRIDファンド」を活用したのはどのようなタイミングだったのでしょうか。
CR・沢登:我々として事業拡大フェーズに入り、シリーズBを進めるタイミングだったのですが、市況の影響もあって資金調達が厳しい時期でした。通常は銀行から融資を受けるという流れになると思うのですが、大手銀行さんから融資を受けるのはなかなか厳しいわけです。
そんな中で、あおぞら企業投資さんのベンチャーデットである「HYBRIDファンド」を活用できたおかげで我々のキャッシュポジションを上げることができました。約1年前にお話させていただき、そこからとんとん拍子に話が進み、実現しました。
―CRさんは現在、様々な大手企業との資本業務提携を実現されていますが「HYBRIDファンド」を活用できたことも影響ありそうでしょうか。
CR・沢登:ありますね。資金を確保できたことで時間の猶予が生まれましたので、提携を検討してくださっていた企業様と焦らずにじっくりと話を進められました。その結果、より良い提携が実現したと思います。
あおぞら企業投資・久保氏:やはり大手企業からスタートアップを見ますと、いい技術が揃っている一方で、資金面は大丈夫なのか、安定的な経営が出来ているのかなどを気にする声も多いのではないでしょうか。
そうしたときに、銀行を背景に持つベンチャーキャピタルである我々がご支援できていることが提携相手に安心感を与えるプラスアルファになっていたらいいなと。こういう効果も少しでもあれば、非常に嬉しいですね。
CR・沢登:改めてありがとうございます。今後も成長をサポートしていただけたらと思いますので、よろしくお願いします。
あおぞら企業投資・久保氏:はい。この先、予定通り事業成長する時期もあれば、足踏みする時期もあると思います。今の延長で資金が必要になるケースもあれば、何か大きなものを仕掛けるために追加で資金調達が必要になるケースもある。そういう節目節目のときに我々ならではのご支援がしっかりできるよう、我々も頑張って参ります。
宇宙まで見据えたチャレンジ
―あおぞら企業投資さんのベンチャーデットが、CRの事業拡大を加速するきっかけになったことがわかりました。改めて、CRさんのこれからの展望をお伺いできますか。
CR・沢登:短期でいえば、食品工場や飲食業にロボットをどんどん普及させて、新たな市場を作り出したり、現場の生産性を上げたりというのは達成すべきテーマです。ですがそれだけではなく、労働環境を改善することで「つらい仕事をなくす」という我々のビジョンを達成していきたいですね。
将来的には、宇宙の食品を生産・製造・調理して提供するというところをロボットが担う時代になるだろうと考えていますので、そこまで見据えてどんどんチャレンジしていけたら。 そのときには必ず資金需要が発生しますので、あおぞら企業投資さん、あおぞら銀行さんにぜひお世話になれたら嬉しいです。
―宇宙というキーワードも出てきましたが、CRさんが社会にどのようなインパクトを起こすことを期待されているか、お聞かせいただければ。
あおぞら企業投資・久保氏:まずは、低コストでクオリティの高いロボットを、国内外問わずどんどん量産していくサポート役を勢力的に担っていただくのがと良いのではと思います。ロボットを利活用できる人・会社が増えれば感謝や喜びが広がり、非常に大きなインパクトになるのではないでしょうか。
そうした可能性を十分に秘めたCRさんのようなスタートアップをしっかり後ろから黒子として支えるのが我々の仕事ですので、CRさんには早く世界をリードする存在になっていただけることを期待しています。
CR・沢登:ありがとうございます。あおぞら企業投資さんのベンチャーデットの仕組みがどんどん普及していって、スタートアップの資金調達の市場をより活性化していっていただけると良いなと思います。我々としても恩返しじゃないですが、しっかり事業を伸ばしていきたいなと思っています。今後も末永くよろしくお願いします。
―CRさんのお取り組みが加速し、世の中に喜びが増える。
おふたりが想像する未来が訪れそうですね。ありがとうございました。
※ ベンチャーデットとは、ベンチャーキャピタルによるエクイティ(株式資本)投資と銀行融資の間を埋める資金提供のこと。
クレジット)
協力:あおぞら企業投資株式会社:https://www.aozora-ci.co.jp/
提供:コネクテッドロボティクス株式会社:https://connected-robotics.com/
· ※ 本記事は2023年1月の取材をもとにしています。