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【実施レポート】第4回トークイベント「まだ世の中にないものを作るCRのエンジニアカルチャー」

《登壇者》
・コネクテッドロボティクス株式会社 VP of Product 塚本光一
・コネクテッドロボティクス株式会社 ロボティクスエンジニア 天津悟
・高野友理香 氏(ファシリテーター) 

コネクテッドロボティクス株式会社が主催するトークイベントが、2023年3月より複数回にわたり開催されました。

第4回(2023年3月23日開催)のテーマは、「まだ世の中にないものを作るCRのエンジニアカルチャー」です。

 登壇者は、コネクテッドロボティクス株式会社のVP of Productである塚本と、同社の若手エンジニアの天津。ファシリテーターを務めるのは、当社に出向し人事・広報業務を担当していた経験を持つキリンホールディングス株式会社の高野氏です。

・新規ロボット開発ってどうやってスタートするの?
・一品ものではなく量産化へとつなげるために気をつけていることは?
・CRでモノをつくるときの、エンジニアカルチャーってどんなもの?

ちょうど記者会見で発表されたばかりの惣菜盛付ロボット「Delibot」開発の経緯も交え、ものづくりに関わるエンジニアならではの話が繰り広げられました。

記者会見を実施。デモンストレーションでは高評価

——最初に簡単な自己紹介をお願いいたします。

塚本:コネクテッドロボティクス(以降CR)の塚本光一です。社内では光一と呼ばれています。2019年の6月にCRにジョインし、VP of Productとして全プロダクト開発を監視する役割を担っています。

なんだか偉そうなタイトルですが、基本的にはソフトウェアをバックグラウンドとしたエンジニアで、惣菜を盛り付けるロボット「Delibot」の開発責任者でもあります。本日はよろしくお願いいたします。

天津:ハードウェアエンジニアの天津悟です。2021年のCR入社時はポテトロボット(フライドポテトを揚げるプロセスを自動化するロボット)を担当していましたが、現在は塚本のもとで惣菜盛付ロボットに携わっています。どうぞよろしくお願いいたします。  

 

—先日、日本惣菜協会・経済産業省の記者会見があったそうですが、いかがでしたか? 

塚本:「“ロボフレ”による惣菜産業革命で人手不足解消」の記者会見ですね。おかげさまで滞りなく行われ、デモンストレーションでは高い評価をいただきました。

記者会見の様子

 プラスチックのトレーに載ったポテトサラダですとか、スーパーでよく見かけるお惣菜は全国津々浦々の工場で作られているのですが、生産現場での労働は想像以上に過酷です。また、深刻な人手不足の問題もあります。そうした問題を解消するものとして、お惣菜を自動的に盛り付けるロボット「Delibot」を昨年度に作ったのですが、今回はそれを4分の1サイズにした省スペース型を開発しました

惣菜盛付ロボット自体が昨年度時点で業界初でしたが、ここまでコンパクトなものとしてはこの省スペース型も業界初です。記者会見では複数のロボットを発表しましたが、会見に実機を持ち込んでデモンストレーションしたのもこの省スペース型です。

経産省主導プロジェクト参画企業としてのロボット開発

——まさに「まだ世の中にないもの」を作ったわけですね!この惣菜盛付ロボットの開発を始めたきっかけは何だったのですか?

塚本:ロボットフレンドリー(“ロボフレ”)な環境構築プロジェクトが経産省主導で進められているのですが、協力企業として同プロジェクトに参画することになったのがきっかけです。

たとえば自動でそばを茹で、ぬめりをとって水でしめるまでを行うそばロボットなどを作っていたCRには、「ロボットハンドで食材をつかむ」という技術があります。また、食洗機やたこ焼き機で培ったAI技術も持っています。同プロジェクトのキーマンがそうしたCRの技術に注目してくれて、それがプロジェクト参画へとつながっていったという、CRとしてはイレギュラーな始まり方でしたね。 

——通常はどういった風に開発をスタートするものなのですか?

塚本:お客様の声を聞きつつ実現可能性をテクニカルに精査したり、技術的にコアか、競争力となるか、CRがやることに意味があるのか、マーケットとしてどうかといったようなところを見極めます。

開発を決めるのはそのようにして見極めた上でなので、どんな案件にでも飛びつくわけではないのですが、チャンスがあればラインナップを増やしていきたいという意識ではありますね。 

わずか6ヶ月で現場導入!Delibot事例に見るスピード感ある開発

——Delibotの開発メンバーは何人ですか?

塚本:技術開発のチームとは別にビジネスのチームのメンバーもいるんですが、技術開発だけでいうと8人です。技術開発は4チーム編成で、CRとしては大掛かりな部類です。

  1. ハードウェアチーム

  2. ソフトウェアチーム

  3. フードチーム

  4. プロジェクトマネジメントチーム 

ハードウェアはもちろんロボットのハードを、ソフトウェアはユーザーインターフェイスやロボットの制御プログラムなどを受け持ちます。フードチームというのは、いかに効率的に食材をつかむか、どうやって盛り付けの見た目をきれいにするかといったことを専門に研究するチームです。

——短期間での開発だったと聞いています。

塚本:はい。補助金事業なのでサイクルが特殊で、6ヶ月で作らなくてはならなかったんです。ものにもよりますが、デモ機レベルならともかく、実際に工場に導入するところまでとなると6ヶ月でというのはかなり厳しいです。本当に大変でしたが、なんとか6ヶ月でマックスバリュ東海さんの静岡県三島にある工場に4台を導入できました。現在もしっかり稼働しています。

——開発開始から6ヶ月で現場導入というのは相当に速いですよね!?

天津:そうですね。CRの軸となる考え方として“Trial&Error”というのがあって、いろいろ試してみてうまくいかなければさっさと次に進んで、別のアイデアや仕様を試してみるというやり方が可能な環境だからこそ実現できたと思います。 

塚本:それで誰も怒ったりしないしね。

天津:そうそう、開発し甲斐があるというか、好き勝手やらせてもらえるというか。どんどんサイクルを回していって、いろんな施策をしてっていうのをできるのは結構楽しいです。

数えきれない試行錯誤から生まれる「まだ世の中にないもの」

——Delibot開発では、どういったところが一番難しかったですか?

塚本:食材をつかむところ、とりわけポテサラを定量つかむところですね。人がやる場合にも手袋にこびりついてしまって定量を取るのに苦労するんです。ロボットでやる場合も同じことで、ロボットハンドにべったりついてしまう。だから、ほぼほぼポテサラのこびりつきとの戦いでした。

——それをどうやってクリアしたんですか?

塚本:それはもう本当にTrial&Errorの賜物というか、数えきれないほど試行錯誤しました。エンジニアの一人が「振動を与えてみたらどうか」と言ってフィットネスマシンを買ってきたり(笑)ポテサラ以外の食材も含め、いろんな食材のこびりつき方の特徴を見て、たとえば接触面積が少ないほど落ちやすいとか、こういう素材がいいとかロジカルに追い込んでいって、最終的にビニールカバーにたどり着きました。その過程ではいろんな人からアイデアをもらって、ありがたかったですね。自分たちの専門分野ではないところが非常に多いので、そうやって助けてもらいながら試行錯誤していくほかないですから。 

——これまでできなかったことをできるようにするのは簡単ではありませんよね。そのように苦労して完成に漕ぎ着けたDelibotを実際に導入した後で、想定外の何かが起きたりといったことはありませんでしたか?

塚本:不具合は起きていませんが、良い意味で想定外だったこととして、現場の方々のほうからロボットに寄り添ってくださったということがありますね。ロボットって完璧を目指しているとなかなか完成しないというところがあって、そこに対するコンセプトとしてロボフレというのがあるのですが、そのコンセプト通りロボットに合わせたオペレーションを現場側で考えてくださったんです。正直「現オペレーションに一切影響しないロボットでなければ困る」みたいな厳しい要求が突きつけられるのかなと思っていたので、私にとっては意外でした。

ロボット開発の基本は現場主義

——ロボット開発に当たっては現場の声は重要と思いますが、開発者が現場を見に行ったりもするのでしょうか。 

天津:はい、行きます。お客さんのところへ出向いて、実際の作業者と同じ作業をして、どこがつらいのか、どういう課題があるのかを把握する「要件定義」が開発の最初のプロセスですので。 

塚本:その際、どこがメインなのかというところを肌で感じて、そもそもロボットを作ることに意味があるのかも見極める。そこはすごく慎重にやります。意味のないものを作ってしまってはいけないので。 そのためにソフトウェアエンジニアもハードウェアエンジニアも関係なく現場を見に行きますし、もっと言えば代表取締役の哲さんも現場主義なのは相変わらずで、今でも自ら工場に足を運んでますね。

——実際に現場で作業してみるとどういったことを感じますか?

天津:工場見学のようなワクワク感もありますが、精度が求められる単純作業をずっとやり続けるつらさ、難しさをやはり痛感しますね。そのつらさや難しさが伴う作業をロボットで自動化しようということなのですが、人がやっている作業をロボットに置き換えるというのは簡単ではありません。

塚本:だいたい今なお人が対応せざるを得ない作業として残っているというのは、つまりめちゃくちゃ難しいからということですからね。ですが、だからこそ自動化を実現することが大きな意味を持ちます。

エンジニア判断でどんどん進められる裁量の大きさ

——Delibotは8人で開発されたとのことですが、全般的な働き方としてもチームで動くことが多いですか?それとも個人ワークの時間が長い感じですか? 

塚本:チームでワイワイやっている時間と個人で集中してやっている時間が半々くらいの感じでしょうか。

天津:そうですね、どちらが多いということもなく、バランス取れてる感じ。方向性だけちゃんと合わせて個人でやることもあれば、相談しながら進めるみたいなこともあります。

——ベンチャーというと「個人の裁量が大きい」というイメージがありますが、CRではどうですか? 

天津:裁量大きいですよ。仕様もこんなに簡単に変えちゃっていいのかっていうくらいに変えられますし、インターンで来てくださってる方のアイデアを採用することもあります。みんなでアイデアを出していって、これ良さそうだねとなればポッと変えて。エンジニア判断でいろいろ決めることができる、決めやすい環境があるかなと思いますね

——良いとなればインターンの方のアイデアでも採用されるというのは、かなりフラットな環境といえそうですね。 

天津:そうですね、縦関係を意識することはあまりないですし、上層部の誰々さんが言っているからみたいな社内事情を気にすることも皆無ですね。

塚本:大企業にありそうなタブーみたいなものもないよね、確かに。

承認待ちが発生しないCRスタイルの開発現場

——ワークスタイルや裁量など、以前いた企業とはいろいろ異なる部分があると思いますが、特にCRっぽいなぁと思うようなところがあれば教えてください。 

塚本:判断が速いですね、とにかく。スピード感がすごい。CRの考え方として「承認より謝罪」というのがあるんですよね。承認待ちでノロノロ運転になるよりも、自分が良いと思ったらやってみて、もしもそれが間違っていたら謝ればいいという考え方です。誤りを認め合おうじゃないかという理念が根底にあるので、自分が良いと判断したら動いていく前のめりな姿勢というか、自律性というか、そういうのが重んじられていますね

——開発以外の事務的なことなどに時間を要したくない、どんどん進めていきたいという人にはすごくいい環境ですね。

塚本:そうですね。人によるのかもしれませんが、上司のハンコを待ってるだけで1週間とかそういうのがないのは、私にとっては心地よい環境です。 また、その延長線上の話になるかと思うのですが、結構自由に物を買えたりというのも良いところだと感じています。Trial&Errorをやるにもモノが当然必要なので、何か買うにもハンコが必要だったりすると大変です。気軽に買ってパッと試せるのはありがたいですし、スピード感につながります。

天津:一定の金額以上になるとさすがに承認が必要になってくることもありますが、その場合にもそう待たされることもないですしね。「meviy(メビー)」(デジタル機械部品調達サービス)でサクッと試作したりというのがしやすい環境です。また、試してみるに当たっての相談や意思決定も、フラットな関係性なだけにスムーズで速い。すぐに訊けてすぐに試せるのでサイクルを早く回していけるというのがエンジニアにとってはすごくやりやすくて良いと思いますね

量産化を視野に入れたロボット開発へ

——ちょっと話が変わりますが、1台目のロボットを作るのもとても大変だとは思うのですが、それを量産していこうとなるとさらなる課題が出てくると考えます。量産化に関連して気をつけていることは何かありますか? 

天津:最初の1台を作るときに将来的な量産を全く意識していない一品ものにしてしまうと後々苦労するので、予算もある程度意識しつつ開発するというハードウェアエンジニアとしての工夫はしています。難しい加工がどうしても必要な部品にはお金をかけざるを得ませんが、共通化できたりシンプルにできたりするところは極力そうするといったような。

塚本:さらに大きい視点から言うと、昔は展示会に出すためにそれこそその辺に転がってるものを使ってたりというようなところがあったのですが、最近ではマインドセットが大きく変わってきていますね。以前みたいにバーッと作るようなところは残しつつも、やっぱりプロダクトとして求められるものの線引きがしっかりしてきた感じです。

——そうなってくると、それに関わるエンジニアの皆さんのスキルセットも変わってきたりするんでしょうか?

塚本:はい、その通りです。初期の頃はプロトタイプを作る段階の瞬発力が重視されたようなところがあったんですが、後から同じ製品を作ろうとしても誰も真似できなかったり、そもそも必要な部品を調達できなかったりということもありました。しかし今や会社をもっと成長させて、より多くの人に製品を届けてと考えたとき、それでは困ります。プロトタイプもやるけれど一品ものビジネスではなく、ちゃんとプロダクト化も視野に入れて開発するという方向に舵を切っていて、そうした取り組み方が求められるようになってきていますね。Delibotの省スペース化でも、基礎的な設計は我々がやっていますが、あとはもうどこの外注さんで作っても同じものができるぐらいのところまで持ってきてあります。

——ここ数年でCRの製品ラインナップはどんどん増えてきていますが、複数のロボット間で技術を共有したり、パーツなどを共通化したりといった動きはあるのでしょうか。

塚本:ソフトウェアではプラットフォーム化のようなことを考えていますし、ハードについては電気系統の共通化の話が出ています。そばロボットなどの厨房向けの製品は、人との位置関係が近く、講じられる安全対策も限られる環境で使われるため、協働ロボットを使うことが多いです。そのノウハウやコントロールユニットなんかをそのままゴソッと他製品に持って行ってはどうかとか。そうやって既存のノウハウやハードを上手に利用していけば、開発期間を短縮できたりといったメリットがあるでしょう。

「食」にこだわるCRならではの面白さと大変さ

——他社と比較したときのCRの特徴について伺いたいのですが、食にとことんこだわってロボット開発をしているCRならではの面白さは何ですか? 

塚本:CRで仕事をし始めたときに面白く感じたのは、オフィスにシンクがあるという環境でしたね。 

天津:そうそう!僕もオフィスに入るといきなり茹で麺機があるっていうところに衝撃を受けました。厨房機器がすぐ隣にあるっていうのはCRっぽさと言えますよね。

塚本:最初に開発したのが食洗機だったこともあってなおさら洗い物と仕事が切り離せず、ロボットについても使った後の清掃方法にどうしても気が向く。そんなところに「あぁ、食品に関わる仕事をやってるんだな」と強く感じたりしました。

天津:それから、扱っている食材にすごく詳しくなっていきますね。たとえばフライドポテトロボットをやっていた時だと、ポテトの種類や調理の仕方、揚げ時間などです。 外で食べるときも「これちょっと揚げ温度が足りていないのでは?」みたいに思ったり……面白いというか、職業病ですかね?(笑)

——逆にCRでの仕事の大変なところなどもあれば教えてください。

塚本:なんといっても食材が不定形であるという点ですね。たとえばポテトサラダも粘性が高くて、同じ形をしてないので、それをどうやって扱うかというのはやはり非常に難しいところです。

天津:そうですよね、不定形さではポテサラに比べたらたいしたことないはずのフライドポテトでさえ、長さが微妙に違ったりして不揃いです。しかも食材って季節とかによって物性が変わってくるじゃないですか。 

塚本:まあ、難しいからこそ競合相手となるプレイヤーが少ないのかもしれないんですけどね。

ロボット普及に向けた課題とCRで働くことの魅力

——不定形なものを扱うさまざまなロボットの開発を通じて蓄積してきたものが、CRの強みとなっているのでしょうね。今後CRの製品をもっともっと世の中に広めていくためにクリアしないといけない課題にはどういったものがあると考えますか? 

塚本:どのくらいの時間軸で考えるのかにもよりますが、中期的には汎用性の確保でしょうか。食品工場はそれでなくても少量多品種を扱う場所ですし、さっき天津も言っていたように季節によっても違う、食材の構成によっても違う、お店のレシピによっても違う。そうしたバリエーションに対応していないとなかなか買ってもらえません。また、汎用性に続くものとして、使いやすさの追求も必要でしょう。

——最後の質問となりますが、おふたりのモチベーションの源泉というか、これがあるからCRで働き続けたいというのはどんなことですか? 

天津:僕にとってのCRの魅力は、やっぱりエンジニアが何でも幅広くやらせてもらえる環境ですね。エンジニアとしてすごい開発し甲斐がありますし、いろんな技術を吸収できるので、とにかくやっていて面白いです。

塚本:新しいことにチャレンジできるというテンションの上がる環境はもちろんなのですが、私はシニアなほうなので少し違う観点から言うと、CRという会社のダイナミックな変化に惹きつけられています。展示会に出すのにヒイヒイ言っていた頃から、かなり組織化されてきている現在までの変化は本当に勢いのあるものでした。CRはこれからもこの勢いでさらに変わっていくのだろうというその変化のただ中にいること、変化の中にいることで自分自身も変化していくということに大きな価値を感じています。

——変化のフロントに立って仕事ができるというのは確かにワクワクしますね。本日はおふたりのお話を伺い、まだないものを作ることの面白さをリアルに感じることができました。ありがとうございました。

塚本/天津:ありがとうございました。


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