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食品工場の現場のつらい仕事を、一刻も早く減らしたい

三菱HCキャピタル株式会社 経営企画本部 事業研究・投資開発部 森田芳弘氏 ×
コネクテッドロボティクス株式会社 代表取締役ファウンダー 沢登哲也

「ロボットを導入したくても、ノウハウ不足や費用面が課題で踏み切れない」そんな食産業の現場の声を解決するためにタッグを組んだのが、国内リース業界トップクラスの三菱HCキャピタル株式会社と、飲食店や食品工場向けのロボットを展開するコネクテッドロボティクス株式会社。両社は2022年12月「資本業務提携」を発表し、ロボット導入推進に乗り出しました。
 
幅広いサービス・ソリューションを展開する大手金融企業とロボティクスのスタートアップが手を組むことで、食産業にどのようなインパクトが起こるのでしょうか。本取り組みを推進する三菱HCキャピタル株式会社  経営企画本部 事業研究・投資開発部・森田芳弘氏(以下三菱HCキャピタル・森田氏)と、コネクテッドロボティクス株式会社 代表取締役ファウンダー・沢登哲也(以下CR・沢登)の対談を通じて、展望を伺っていきます。

業界注目の「Delibot™(デリボット)」を活用して

―三菱HCキャピタルさんは幅広いサービス・ソリューションを展開されていますが、改めて現在のお取り組みを教えていただけますか。
 
三菱HCキャピタル・森田氏:三菱HCキャピタルは2021年4月、銀行・商社系リース会社の三菱UFJリースとメーカー系の日立キャピタルの2社の経営統合によって誕生しました。現在は「アセットの潜在力を最大限に引き出し社会活動を創出することで持続可能な豊かな未来に貢献する」という経営理念を掲げて、世界20カ国以上で事業を展開しております。幅広いネットワークを生かして、ソリューションを展開できることが弊社の強みですね。
元々はリースが祖業ということもあって、モノをお貸しするというビジネスだったわけですが、現在はモノを提供して終わりではなく、アセット、つまり経営資源や人、ノウハウなど目に見えないものの価値を引き出して社会に還元していくことにフォーカスしています。
 
また今後は、これまでの延長線上ではなく、ファイナンスの枠組みを大きく超えて、様々なパートナーと一緒に新しい取り組みをしていく必要があると考えています。自社だけでイノベーションを起こすのは限界がありますので、今回のCRさんとの提携もまさにそうした背景があります。

三菱HCキャピタル株式会社 経営企画本部 事業研究・投資開発部 森田芳弘(もしたよしひろ)氏
慶應義塾大学 商学部卒業。中小企業診断士。2003年、セントラルリース株式会社(現・三菱HCキャピタル株式会社)に入社。営業部門・管理部門を経て、現在は事業研究・投資開発部にて新規事業の推進に携わる。ロボット革命・産業IoTイニシアティブ協議会にて、ロボットフレンドリーな環境構築に向けた活動に参画する等、ファイナンスの枠を超えた事業展開に向けて、様々な取り組みを行っている。

― CRさんの取り組み、今注力されていることも教えていただけますか。
 
CR・沢登:我々のミッションは「食産業をロボティクスで革新する」ことです。今までロボットの活用がなかなか進んでこなかった、食産業の生産性の向上、省人化、食の価値向上・安全性、美味しさといったところに貢献したいと考えています。そんな中で今注力しているのは中食・惣菜の製造工程です。ここを一気通貫して自動化していく予定です。
具体的な商品としては、スーパーやコンビニで売られているような惣菜・弁当です。盛り付け自体は単純な作業ですが、ロボットで再現しようとすると食品だからこその繊細な動作があることに気付かされます。多品種少量生産が前提の工場現場で使いやすいロボットとはどうあるべきかを考えて開発に取り組み、惣菜盛付ロボットシステム「Delibot™(デリボット)」が生まれたのですが、現場のニーズに応えて多品種対応・省スペース化など、どんどんバージョンアップさせていきたいと思っています。

コネクテッドロボティクス株式会社 代表取締役ファウンダー 沢登哲也(さわのぼりてつや) 東京大学 工学部計数工学科卒業、京都大学大学院 情報学研究科修了。MIT発ベンチャー企業でロボットコントローラ開発責任者を経て、2011年に独立。 2014年にコネクテッドロボティクス株式会社を創業。 2017年4月より食産業をロボティクスで革新する研究開発事業をスタート。 

―「Delibot」は、「第10回ロボット大賞」で中小・ベンチャー企業賞(中小企業庁長官賞)を受賞するなど注目されています。今回の提携でもまずはDelibotに着手されると思うのですが、両社はどのような出会いから始まったのでしょうか。
 
三菱HCキャピタル・森田氏:弊社としては、ロボティクス領域でのスタートアップと連携した事業開発を模索する中で、以前から何度かCRさんとお会いする機会がありました。正式にお付き合いが始まったのは、ロボット革命・産業IoTイニシアティブ協議会が進めている「ロボット実装モデル構築推進タスクフォース」ですね。人手不足の悩みが深刻化している業界に向けて、ロボットの提供側だけでなく、ユーザー側も一丸となってロボットフレンドリー(ロボット導入しやすいように、導入側のプロセスや環境を変革すること)な環境を構築していこうという取り組みです。複数の企業・団体が参画しているのですが、弊社でもお客様から「ロボットを使いたくても使いこなせない」という課題を聞いておりましたので、ロボティクスメーカーとユーザーの間を繋ぐ役割をできたらと思い、2021年に参画させていただきました。そこでCRさんとご一緒させていただいたのが最初のきっかけです。

週1回のスタートアップ勤務で実現を加速

ーなるほど。一緒に取り組みをされていたのですね。そこから今回の「資本業務提携」に至ったのは、どういった背景がありますか。
 
三菱HCキャピタル・森田氏:提携に至ったのは、CRさんが確かな技術力をお持ちなのはもちろん、お客様の課題をどう解決するかということにフォーカスした取り組みをされている。技術主導ではなく、技術を活用してどうやって課題を解決していくかというところに思いを持っておられるので、一緒により良い社会をつくっていけるのではないか、ベストパートナーになり得るのではないかと感じました。ちょうどCRさんの方でも幅広く展開するにあたってのパートナーを探されているということで、両社の思いが合致して資本提携に進みました。
 
CR・沢登:ありがとうございます、森田さんがおっしゃっている通りですね。我々は「Delibot」をはじめとした食品工場・外食向けの製品をさらに世の中に広めていくフェーズになってきていました。でも、今まで以上に世の中に広めていこうと思ったときに、我々のようなスタートアップだけではできることが限られてしまいます。
我々ができることはお客様に喜ばれるロボット技術を開発することなのですが、お客様の会社規模や業態によって必要とされる技術も捻出できる費用も違ってきます。そうした中で広く使っていただくためには、自社だけでは対応しきれないところがありました。三菱HCキャピタルさんは、これまで同じ志を持って取り組ませていただき、距離も近かったのでお声掛けさせていただきました。ちょうど両社のタイミングが合い、資本を入れていただきながら、より一層ロボットの普及を進めていこうという話になりました。

―ちなみに森田さんは今、週1回、CRさんのオフィスに行って業務をされているとか。
 
三菱HCキャピタル・森田氏:そうですね。現場でCRさんの考え方を肌で感じながらやっていきたいなと思いました。やはり意識のすり合わせをして、向かっていく方向性を一致させていかないといいものはつくれないと思っています。
とはいえ、最初は自分のようなよそ者が行ったら警戒されるのかなと思っていました(笑)。でもみなさんフレンドリーな方ばかりで、すんなり受け入れていただきましたね。本当にオープンな社風だなと。まさにコネクテッドじゃないですけれども、引き寄せるというか求心力がある組織だと肌身に感じているところです。これは沢登社長のお考えによるところも大きいと思います。
 
CR・沢登:いえいえ、森田さんは親しみやすい雰囲気をお持ちなので社員もオープンに話をしているんだと思います。私たちも森田さんのプロフェッショナルな部分に触れる中で、改めて今回の取り組みによって様々なことが成し遂げられそうだと、ワクワクしているところです。ぜひ今後もビシビシ刺激を与えていただければと思っております(笑)。
 
三菱HCキャピタル・森田氏:いやいや、むしろ私の方が刺激をいただいています。弊社は仕組みをつくっていくというところを得意としてはいるものの、今までは既存のやり方を大きく革新するところを得意としてやってきたわけではありません。まさにCRさんのように新しい価値観をつくるといいますか、これまでのやりかたをガラッと変えていくところに携わらせていただくということが非常に刺激的ですし、いい経験です。この経験や気付きを、社内にもどんどんと広げていきたいですね。

食産業のつらい仕事を共になくしたい

―互いに刺激し合える関係なんですね。これから両社でどのようなことに取り組まれていくのでしょうか。
 
三菱HCキャピタル・森田氏:やはり、人手不足といった非常に深刻な問題に、いち早く「Delibot」を使ったソリューションを浸透させていくことを目下のテーマとして考えています。中食産業は今までロボットになじみがなく、かつ中小企業も多いという中で、それを使いこなすノウハウの不足や、初期投資の負担が大きなネックになっていると考えます。まずは、弊社のファイナンス機能を起点としたソリューション提供力を生かし、ロボットをスムーズに導入してもらえるような仕組みづくりから始めたいと思っています。

―具体的にはどのような仕組みなのでしょうか。
 
三菱HCキャピタル・森田氏:いきなり何百万円、何千万円という金額をロボットの導入のためにお支払いいただくのは難しいことだと思います。どれだけの投資効果があるのか、ロボットになじみがないとわかりにくいと思うんです。そこで初期投資を少なく抑えて、月々一定の価格でご利用いただけるような仕組みをつくっていくことで、少しでも導入のハードルを下げられないかと思っています。また導入後も、日々の管理を別の会社に頼まなければいけないとなると、心理的負担も大きいのではという懸念もありました。ワンストップのサービスモデルで展開することで、安心してロボットの導入に踏み切れるようになるのではないかと考えています。

CR・沢登:そもそも従来は、ロボットで食品を扱うこと自体が難しかったんですね。導入側のノウハウや費用以前の問題でした。冷凍食品とか硬いものであればいいんですが、柔らかくて新鮮なものや多品種への対応は技術的に難易度が高い。そうしたこともあってハードルの高いものでした。でも最近になってようやく、コンパクトでいろいろな食材を扱える技術が実現できるようになってきました。そうした技術の進化と、食産業の深刻化する人手不足が重なり、やっとロボットフレンドリーな仕組みづくりのところを考えられるようになってきた、というのが今の段階ですね。

―まさにこれから、なのですね。ロボット導入が進むことで、食産業で働く人にはどのような影響が出るとお考えですか。
 
三菱HCキャピタル・森田氏:中食産業界の方からは、人手不足もそうですが、高齢化が進んで、現場での肉体労働が厳しくなってきているという話をよく聞きます。どの事業者の方も、従業員の方には働きやすい環境を提供して気持ちよく働いてもらいたいという思いがあるわけですが現状だと改善が難しい。それを新しい技術で解決していければと思います。
弊社としては、そうした先で、人々が過酷な労働から解放されて、一人ひとりの能力や才能をもっと発揮できるような世の中を実現していきたいという思いがあります。CRさんと一緒に、そういう世界を早くつくっていきたいですね。
 
CR・沢登:我々も、「つらい仕事をなくす」というビジョンがあるんですね。食産業で働く人の仕事を少しでも楽にしたい。今回の三菱HCキャピタルさんとの取り組みで、幅広い食産業・食品工場の方々に我々のロボットシステムを利用してもらえるよう、普及させていきたいですね。


― ロボット導入の先に、そんな素敵な未来を想像されているのですね。ありがとうございました!
 
クレジット)
協力:三菱HCキャピタル株式会社:https://www.mitsubishi-hc-capital.com/
提供:コネクテッドロボティクス株式会社:https://connected-robotics.com/
 
※    本記事は2022年X月の取材をもとにしています。