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ロボット大賞で中小・ベンチャー企業賞を受賞した「盛付ロボット」は何がすごい? 

2022年10月にCRが開発した惣菜盛付ロボットシステム「Delibot」が第10回 ロボット大賞にて中小・ベンチャー企業賞(中小企業庁長官賞)に選ばれました。
惣菜を定量で測って盛り付ける工程の自動化はこれまで実現不可能とされていました。私たちはこの難しいテーマに挑戦し、惣菜盛付ロボット「Delibot」をわずか半年で開発し、工場への導入を実現しました。

第10回「ロボット大賞」にて中小・ベンチャー企業賞(中小企業庁長官賞)を受賞

ここでは、このDelibotの特徴の紹介と開発プロセスについてご紹介します。CRのプロダクトを導入してみたいと思う方や、自分も新しいプロダクト開発に挑戦してみたいと思う人の参考になったら嬉しいです。

■Delibotとは?

食品産業の中でも生産性が低く、自動化が進んでいない、惣菜業界の盛り付け工程をサポートするロボットです。

ポテトサラダを一定量測って盛り付けるロボット

ポテトサラダのような不定形な食材を決められた重量を計測して掴み、製品トレーに盛り付ける工程を4台で1時間1,000食という一般的な食品工場で求められるスピードに対応して自動化するものです。
▶︎Delibotの動画はこちら

■ロボット開発に至った経緯

 惣菜製造工程の自動化という観点では、すでにチューブ型で惣菜を押し出して盛り付ける充填機は存在しています。ただ、手で盛り付けたものに比べると、いかにも押し出した形状になってしまって見栄えが悪かったり、チューブの中で詰まってしまったり、他の惣菜に切り替えようとしても、清掃に時間がかかってしまうなど多くの課題が残されています。

この課題を解決するために、いくつかの企業で盛付ロボットの研究開発は進められていました。例えば画像認識やAIを使って重量推定の精度を上げるなど一回で定量を掴もうと試行錯誤している会社も存在しています。
 ポテトサラダは密度が一定ではなく、粘性の高い惣菜は体積が一緒でも実際の重さが違うことがあるので、AIによって表面で判断しても実際の重量を測ってみないとわからないという難しさがあります。
また、決まった重量を掴むことができたとしても、ハンド部分にポテトサラダがこびりついてしまうため、出来上がりのトレイ上の重量が変わってしまうこともあります。
粘り気のある惣菜を盛り付ける作業は、思ったよりもロボットには難しく、現場で求められるスピードとクオリティに対応できず、なかなか実用化に辿り着いていませんでした。

こうした中で経済産業省は2020年より多品種少量生産現場をはじめとする、ロボット・AI導入があまり進んでいない領域で、ロボットフレンドリーな環境構築を促すために「革新的ロボット研究開発等基盤構築事業」を推進することになりました。

ロボットフレンドリーな環境構築を促進する
「革新的ロボット研究開発等基盤構築事業」成果発表会の様子

CRは、この事業に採択された一般社団法人 日本惣菜協会から食品工場の課題に取り組まないかと声をかけていただいたことを機に、2022年10月頃から惣菜盛り付けロボットシステムの開発に挑戦することとなりました。

■CRのアプローチ方法について

私たちは、確実に現場で使えるものを目指して高度な技術を使いつつ必要最小限で、かつ運用可能なロボットの開発にこだわりました。
スーパーなどの惣菜売り場は様々な種類の惣菜を扱っています。また、1日の中でも販売する惣菜の種類が変わる日配品のため、現場では一つの製造ラインで数時間単位で他の惣菜に切り替えることも当たり前のように行われています。

スーパーの惣菜コーナーでは多種多様な惣菜を販売

私たちが最初に取りかかった惣菜はポテトサラダだったのですが、将来的な実装を考えてサイズ違いのトレイに盛り付けたり、多品種の惣菜に対応できるようにすることも前提として考えていきました。
具体的には、大中小それぞれのハンドに取り替えることでサイズの異なるものに対応。ソフトウェア上でロボットの動きを切り替えれば他の惣菜の盛り付けもできるようにしました。
また、メンテナンスや惣菜の段取り替えのことを考えてハンドの取り付けや取り替えは極限まで簡単にして、現場の負担を最小限にしようと考えました。
ハンドの取り替えにドライバーなどの工具を使うことになれば、手間がかかって工場の生産効率が落ちてしまいますし、現場での訓練が必要になります。それを防ぐためにシンプルな構造を目指しました。

■お客様から評価されているポイント

私たちは飲食店向けロボットを開発する際でも「実際にエンジニアが飲食店の現場で働いてみる」という工程を入れるなど、現場で使いやすいロボットを開発するというスタイルを重視しています。
今回のDelibotも同じようにどんな現場で、どんな人が扱うのか、どう使われるのかを何度も訪問し、ヒアリングして試行錯誤をしたこともあって、お客様から評価をいただいています。そのポイントをご紹介したいと思います。

1台のロボットで多品種対応ができる!
惣菜製造工程では、多様な食材や複数サイズのトレイを扱う必要があります。ハンドはトレイのサイズに合わせた大中小の3種類を準備しています。
またポテトサラダやマカロニサラダ、筑前煮、ひじきなど食材ごとの特性(こびりつきやまとまりやすさ、落ちやすさなど)にあわせたロボット制御をソフトウェアで切り替えます。

すでに数十種類の惣菜で盛り付けテストを実施。実用化に向けて取り組んでいます。

簡単に段取り替えができる!
惣菜工場で働く従業員でもハンド交換ができるように、マグネットとピンという非常にシンプルな仕組みで設計しています。
ワンアクションでセッティングが可能な構造になっているため、食材コンテナと製品用トレイ、ハンドの交換を含めて3分以内の段取り替えができます。また、惣菜を入れた食品コンテナやハンドは取り外して洗うことができるので、製造工程を清潔に保つこともできます。

工具の必要なしで、約3分間で他の惣菜への切り替えができる

盛り付けスピードが早い!
Delibot 1台は、作業者1人分のスペース及び生産スピード(1時間あたり250食)で盛り付けることができます。
同一生産ラインに複数台の設置が可能で、例えば1生産ラインに4台配置し、1時間で1000食分を製造することができます。

1時間で250食、4台で1000食の製造ができる

■このロボットのこの技術がすごい!

次に、技術面からどんな工夫をしていったのかをご紹介します。

1.少ないセンサー情報で盛り付ける
Delibotのハンド部分に重量センサを搭載し、食材の表面を接触センシングで検知し、表面からどのくらいの深さまでつかめば目標重量を把持できるか、距離を推定して、掴むたびに重量を計測しています。
重量が決められた範囲外だったときは、掴みなおして補正を行います。
盛り付け後にもハンドから惣菜が落ち切ったかどうかを計り、こびりつきをふるい落とす動きを実装し、正確かつ迅速な盛り付けを実現しています。
画像認識のために高感度カメラ等を導入すると、さらに高価なものになってしまいます。現場への導入ハードルを下げるためにも必要最小限のセンサーを用いることを選択しました。

画像認識などは使わず、重量センサだけで定量を把持

2.独自のハンドを設計
お惣菜をきれいに盛り付けられるように特殊ハンドを設計開発しています。ふんわりとトレイにもりつけられるような、シンプルなハンドの形状と食材用のビニールシートカバーを組み合わせることでこびりつきを回避。
人間が盛り付けたのと同じようにふんわりと食材の風合いを残した見た目を維持することができています。

トレイサイズに合わせて大中小のハンドを設計

■今後の展開・インパクト

日本の生産年齢人口は、2020年の7340万人から、2035年には6343万人に減少していくことが予測されています。人手不足対応や生産性向上、労働環境の改善の観点から、食品製造業界でもロボットや機械の導入や自動化・省人化が期待されています。
食品産業の中でも砂糖や油脂のような自動化や大量生産が可能な食材とは異なって、惣菜製造工場は日持ちのしない食材を扱うことや、昼食や夕食時など時間帯によって異なる惣菜を作る必要性があります。そのため、まだまだ自動化が進んでおらず、業界を支えている従事者は全体で約60万人、その多くが盛り付けの工程に関わっているといわれています。
現場では従業員の高齢化も進んでおり、60歳以上が20%以上を占めていますし、食品工場の室温は一般的に15度程度のチルド環境で8時間以上の単純作業を繰り返す大変な環境です。

中食・惣菜市場は10兆円を超える成長産業ですが、将来的な人手不足が課題となっています。食品工場は中小規模のところも多く、地域や店舗によって多様な食材・惣菜を取り扱っていることが特徴です。
私たちは将来的にはDelibotを日本の食品工場どこでも見かけるようなロボットにしていきたいと思っています。そのためには、小型化と対応食品のバリエーションを増やしていくことが重要です。
より幅広いお客様に使っていただくためにコンパクトなサイズで、数十種類の食材を盛り付けられるよう、改良に改良を重ねていきたいと思っています。

▶︎Delibotについてご興味のある方はぜひこちらをご覧ください


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