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ホフステード6次元モデル「不確実性の回避・受容」とは<6次元モデル④>

ホフステードの6次元モデルの3つめとして、不確実性の回避・受容についてご説明します。
国境を超えたビジネスでは、不確実性を受容・回避の、各国のスコアに合わせてコミュニケーションを変えていく必要があります。

不確実性を回避・受容は、未知の状況に脅威を感じる程度

不確実性の回避・受容の次元とは、不確実なこと、曖昧なこと、未知の状況に対して、脅威を感じるか気にしないかを表すものです。

ホフステード博士は、この次元について以下のように定義しました。

ある文化の成員が、曖昧な状況や未知の状況に対して脅威を感じる程度

不確実性回避の傾向は、法律制度など社会のルールの在り方に影響します。不確実性の回避が高い国は低い国に比べて、より厳密な法律制度をもつ傾向があります。
不確実性の回避が高い国のなかでも、個人主義的な国では規則がはっきり成文化される傾向があり、集団主義的な国では暗黙の了解部分が大きく明文化されていない傾向があります。

イノベーションにも影響が大きく、不確実性の回避が低いアメリカや中国は、構想したアイデアを実現する実行力があるといえるでしょう。

不確実性の回避が高い国の特徴

・不確実性を脅威とし、それを取り除くために形式、ルール、規則が必要とされ、構造化された環境を求める
・ストレスが高く、不安感がある
・トップマネジメントは日々のオペレーションにフォーカス
・医師や弁護士など、専門家を信頼する傾向がある
・学生は「正しい答え」を求め、教師がすべての回答を示すことを期待する

不確実性の回避が高い国では、予測不可能性を高めれば不確実性を回避できると考え、多くの成文化された規則や制度があり、慣習的な規則も多々あります。
これは、人々が不安やストレスを感じやすく、それを避けるために必要としているからです。
日本や中東諸国、中南米諸国、ロシア、フランスなどはこの傾向があります。

不確実性の受容が高い(不確実性の回避が低い)国の特徴

・人生とは不確実なものとして、ルールや形式、構造にはこだわらない
・ストレスも低く不安感もそれほどない
・専門家や学者より、常識や実務家を信頼する傾向がある
・学生は学習のプロセスを求め、教師が「わからない」と答えても気にしない

不確実性の受容が高いドイツやイギリスなどアングロサクソン諸国では、未知の体験であっても、リスクの度合いがわからなくてもとにかくやってみようと考える傾向があります。
北欧諸国や中国、シンガポール、インドなども、規則にとらわれず、本当に必要なルールのみが存在します。成功するためにリスクをとり、失敗を恐れません。
これらの国では、不確実性や曖昧さに直面しても不安やストレスを感じません。


不確実性の回避が高い日本、違いを認識することが必要

世界一の鉄道発着率を誇る日本は、世界的にかなり不確実性の回避が高いといえます。自然災害が多いことから、自然への諦観がある一方、準備をしておこうとする気持ちが刷り込まれているのです。
前例を重視し、変革が起こりづらいこともこの傾向が影響しています。

不確実性の回避が高い国では、形式的で無意味なルールが存在しやすく、これは低い国から理解されません。
不確実性の回避が低い国は、失敗を織り込んだうえで、スピード優先でプロジェクトを進める傾向があります。一方、不確実性の回避が高い国は、検討と準備を重ね、失敗しないかたちで物事を進める傾向があります。
どちらが優れているということはなく、それぞれの文化圏に合うかたちでアプローチすることが大切です。

日本ではトップマネジメントで日々のオペレーションまで気を配る傾向がありますが、不確実性の回避が低い国とビジネスをする場合、トップマネジメントの仕事は方向性と戦略の達成が第一です。
違いを認識し、互いが歩み寄れる手法を見出すことが重要になります。

ホフステードの6次元モデルについてもっと詳しく知りたい方は、『多文化世界 違いを学び未来への道を探る [原書第3版]G.ホフステード/G.J.ホフステード/M.ミンコフ 著 岩井八郎/岩井紀子 翻訳、『経営戦略としての異文化適応力 ホフステードの6次元モデル実践的活用法』宮森千嘉子/宮林隆吉 著 をご覧ください。


一般社団法人CQラボは、ホフステードCWQの日本オフィシャルパートナーとして、カルチャーに関してトータルな学びを提供しています。CQ®(Cultural Intelligence)とは…「様々な文化的背景の中で、効果的に協働し成果を出す力」のこと。CQは21世紀を生き抜く本質的なスキルです。Googleやスターバックス、コカコーラ、米軍、ハーバード大学、英国のNHS(​​​​国民保険サービス)など、世界のトップ企業や政府/教育機関がCQ研修を取り入れ、活用されています。

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