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OEDO[3-6] 防人の憂鬱

1991年、リトアニアの血の日曜日。侵攻するソ連軍を相手に市民たちは、非武装で抵抗。代わりにソ連軍の非道ぶりを世界に配信。わずか14名の犠牲者で母国の独立を死守しました。この歴史的事実が「地球防衛隊」法案のバックボーンになります。

「わずか」とは書きましたが、14名はかけがえのない命。しかし彼らがもし武力による反撃攻勢に転じていたら、犠牲者はその数では済まなかったことでしょう。当然リトアニアもその領土を失い、独立は果たせなかったと思われます。戦車に空手で抵抗すれば、兵士といえども生身の人間に発砲することを躊躇するのです。この舞台を日本に移して考えれば、なおさらのことです。

今の軍拡路線で中途半端に応戦すれば、自衛官と民間人に数千から数万の犠牲者が出ることは必須。こちらは国際ルールを守り、敵基地攻撃しかできませんが、相手はローグネイションですから、街も工場も原発も爆撃します。停戦、講和、平和条約が結ばれる頃には、九州丸ごと、四国丸ごと、本州の半分などを失いかねません。

一方で丸はだか、非武装・非暴力なら開戦のきっかけも、侵攻のしようもないことはこれまで説明してきた通りです。そして万一、占領されることがあっても、統治は困難を極めます。

例えば、中国が韓国を占領、統治する様子を想像できますか。もともと自国領だった台湾ですら足踏みしているのです。さらに離れた日本列島を占拠するなんてまず無理。沖縄や九州の一部だってあり得ません。尖閣を緩衝にしておけば良いのです。国境での小競り合いに腐心するのはもうやめましょう。

国境に固執する防人勢は、必ずと言っていいほど漁場や海底資源の死守を主張します。しかし岸田政権が提示している43兆円の防衛費に見合う価値はありません。経済産業省石油審議会はその埋蔵量を約32.6億バレルと試算していますが、金額にして約27兆円。防衛費と採掘費用を差し引けば赤字です。

領土は必ずしも富に結びつきません。第二次大戦敗戦以降、膨大な領土を失ってから大躍進、高度成長を遂げた日本がその証です。真の国益は国境付近に存在するのではないのです。国家にとっての本当の宝はその国民です。今や戦争は外から始まるのではなく、内側から始まるのです。そしてもう始まっています。

昨年放送されたNHK「クローズアップ現代」では、都内に「ガチ中華店」が300軒を超えたことが話題になりました。日本人の味覚には合わない、食用ガエルを食べさせるような店がそれほどの数にのぼったのです。その客となる中国人の流入が、店の数に比例して爆増したことを示唆していました。

中共の独裁体制に若者の不満が鬱積しているのが原因だそうです。それは香港「雨傘運動」や中国本土の「白紙革命」にも顕著ですが、一番の理由は意外なことにネット・SNSの規制なんだそうです。でも言われれば納得。今時の若者が一番我慢ならないのは親からの「スマホ取り上げるわよっ」でしょう。

ウクライナからもロシアからも、戦火や徴兵から逃れるために、多くの国民が流出していますが、その行き先は決して中国や北朝鮮のような独裁国家ではありません。西欧、カナダ、オーストラリアのような自由な民主国家です。同様に中国人に1番人気なのはシンガポール、日本は2番ということです。

英語が通じる多民族国家シンガポールが、中国エリート層に人気なのは頷けるとして、なぜ日本が2番人気なのかというと──そうです。アニメ・マンガです。子どもの頃から慣れ親しんだ「ドラゴンボール」や「ドラえもん」が彼らを惹きつけているらしいのです。

中国の熾烈な受験戦争、学歴偏重社会は皆さんご存知だと思いますが、せっかく育てた貴重な人材が、大人になって国外に流出してしまうのは大打撃でしょう。大英帝国の植民地政策の時代から「ブレインドレイン(頭脳流出)」と呼ばれている問題。さあ、ここからが思案のしどころになります。

思案その1 : 中国に限らず各国から、優秀な人材が集まるのは間違いなく我が国の国益に通じます。移民や難民の受け入れを嫌がる排他的な日本人もいますが、現政権が進めてきた「技能」を持つ前の途上国の人材を「実習」と称して無秩序に集めるよりは、完成されたエリートの方が有益でしょう。

思案その2 : 人材に限らず資本も流入します。軍国主義者が国境警備に躍起になっている間に、日本の水源や森林やリゾート地があっさり合法的に買収されています。現行の技術では採掘もできない海底資源に固執するより、国内の天然資源や観光資源を守る方が先決ではないでしょうか。

思案その3 : つい先日「斜陽の国内温泉旅館-外国人所有が4割へ」というニュースが流れ、ヤフコメでは賛否両論吹き荒れました。政府は「インベストジャパン」を推進していますが、買収された土地は管理もされずに放置されたり、有事には治外法権が適応される恐れもあるという問題を残します。

思案その4 : 民族対応に追われる地域も増えています。小学校ではスペイン語やポルトガル語しか通じない生徒や親が増え、政府は’19年に「日本語教育推進法」で対応。他方では、イスラム教のモスクがこの10年間で1.6倍に急増。宗教上の理由から土葬と墓地を求めて、地域住民との衝突も起きています。

思案その5 : 民族や文化の流入、混合が今後も不可逆的に進むことは確実。この先の未来を数百年レベル、人類のグレートジャーニー規模で考えれば、純血の日本人もいずれ消滅し、国境という概念が意味を成さなくなることまで予想されます。すると真に守らなければならない物は何になるのでしょうか。

国境を守るのか、土地を守るのか、文化を守るのか、命を守るのか──この先日本がどんな世界線に進むのかは予測できませんが、今後ますます人種、民族のエントロピーが増大していくことは止めようがありません。そして、僕個人はできるだけそのスピードにセーブをかけたい想いにあります。

現政府のように「技能実習生受け入れ」などと称して、安価な労働力を諸手を挙げて大歓迎していたら歪みが増すばかりです。「地球防衛隊」法案も急ぐことなく、ゆっくりと漸次的に事を進めていくことを提案しています。その間で、守るべきものをゆっくりと吟味、精査していくのが肝要だと思います。

もちろんここに書き切れるものではありませんが、守りたい日本の良さは沢山あります。なべて言うなら自然と敵対する西洋文化でもなく、排他的に異文化を退ける中華思想でもない「和をもって尊し」とする心。これこそが何世紀を経ようとも、国境が無くなろうとも、残していきたい日本人の精神です。

流入が抗い切れない世界の趨勢だとするならば、せめてそのペースを緩め、かといって他所から来るものを「日本を蝕む寄生獣だ!」と拒むのでもなく、あの名作マンガ巻末の見事なアナロジー、「寄」り添い「生」きる──に通じる和の心を大切にして行きたいと考えています。


※最後までお読み頂きありがとうございます。この「地球防衛隊」全体の構想は最初の投稿「OEDO[0-0]地球防衛隊法案──概論」にまとめています。それ以降の章は、この章も含めて、その詳細を小分けして説明する内容になっております。

第一部[1-1]〜[1-9]では「戦争観のアップデート」について。第二部[2-1]〜[2-9]では「地球防衛隊の活動と効用」について。第三部[3-1]〜[3-9]では「予想される反論への返答」について。第四部[4-1]〜[4-9]では「地球防衛隊に至る思想的背景」についてを綴って行く予定です。

敢えて辛辣に、挑発的に書いている箇所もありますが、真剣に日本の未来を危惧し、明るいものに変えたいとの願いで執筆に励んでいます。「スキ♡」「フォロー」や拡散のほど、お願いいたします。批判、反論のコメントも大歓迎です。

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