CRAMインタビューVol. 2
私は以前から国内ビートメイカーの動きに関心があり、レビューのほかにインタビューなども何回か行ってきました。DIGLEでビートテープを紹介する連載、Soundmainでビート制作に使用するサンプルパックについての連載も行っています。
そうして国内ビートシーンを追っている中、常に気になる存在だったのがCRAMとmatatabiの二人です。ビートメイカーと話していても二人の名前が出ることが多く、Soundmainの連載でxngb2に「史上最高のビートメイカー」を挙げてもらった際にもCRAMの名前が挙がっていました。
こちらの記事でも書きましたが、CRAMとmatatabiの二人は昨年10月に連名での作品「LOOPER」をリリースしています。この作品については以前こちらの記事でレビューも書いています。
xngb2インタビューの記事でも触れた通り、「LOOPER」で使われたドラムはそのままドラムキットとして販売されています。これは国内のサンプルパック関連の動きとして興味深く、いつかSoundmainの連載で取り上げたいと思っていました。
そして気付いたら、CRAMがかなり面白い動きをしていました。Bandcampのサブスクライブ機能を使い、ビートメイクの知識やテクニックを共有するコミュニティを運営していたのです。Soundmainの連載でもサンプルパックを作る当事者の声を直接聞く機会はなかったこともあり、これは一度取材をしなければならないと思っていました。そして、「サンプルパックとヒップホップ」の第8回でついにそれが実現しました。
Soundmainの記事では、コミュニティ運営やドラムキット配信、ビートメイクで燃え尽きないための工夫などのエピソードを書きました。非常にビートメイクへの思いのある方で、記事に載せきれなかった話も多く語ってくれました。やりとりの一部を掲載します。
アボかど:ビートメイク関連の話を聞いていきたいんですけど。今使っている機材って、昔のインタビューに出ていた時から変わっていたりとかしますか?
CRAM:いや、変わっていないですね。SP-404とSP-303、Reasonっていうソフトウェアで作っています。
ア: Reasonにした理由は?
C:最初にReasonに決めた理由は大学の先輩が使っていたからです。そこからずっと使っているんですが、周りを見渡したら今は誰も使ってなかったんです。「みんなが使っていないなら、みんなと違うビート作れるかな」と思って、今も使い続けてます。
ア:なるほど。日本だと確かにあまり聞いたことないですけど、海外ではFlying LotusやMustardなどがいますよね。
C:そうなんですよ。LAの人に多くて。今は違うんですけど、Dibia$eとかMndsgnとかもReasonでしたね。
ア:LAに特出してReason使いが多い気がしますよね。
C:そうなんですよ。やっぱり教え合うんじゃないですかね。
ア:そういうのあるんでしょうね。ビートを作る時ってサンプリングだけですか?
C:そうですね。弾くのはベースラインぐらいです。
ア:ビートを作る時ってどこから作り始めますか?
C:ドラムからですね。
ア:私はCRAMさんのリミックスがすごい好きなんですよ。最初にCRAMさんやばいと思ったのはYoungBloodzのリミックスからで、ゴリゴリのクランクの曲をあんな感じにしているのがすごいと思ったんですよね。
ブーンバップを作る人ってブーンバップの曲のアカペラからリミックスを作ることが多いと思うんですけど、CRAMさんはそういう感じじゃないのが面白いと思っていて。どういう感じでアカペラを探していますか?
C:リミックスを作る時はそれとギャップを付けたいなといつも思っているんです。ブーンバップにブーンバップのアカペラを入れると普通なので、普通じゃないようなチャラい声を入れるのが好きなんですよね。そういうのとタイトなブーンバップを合わせたら面白いんじゃないかな、みたいな感じで作るのをいつも意識しています。
ア:意識しているんですね。自分もそのギャップの部分でやられたので面白いです。Cardi Bのリミックスもやっていましたよね。
C:そうなんですよ。あれもラップがチャラいから、ビートはしっかりドープなのを作れば化けるんじゃないかなと思って作っていました。
ア:サンプリングのネタとかも、そういうギャップみたいなところを意識していたりするんですか?すごいチャラい曲をサンプリングして渋い曲を作るみたいな。
C:チャラい曲でもピッチを落としたり、フィルターでモコモコにするとヒップホップっぽく聞こえるんですよ。そういうギャップを意識してっていうのは、僕のビート作りのミソかもしれないです。
ア:例えばなんですけど、EDMをサンプリングしたこととかってありますか?
C:EDMはまだチャレンジしたことはないですね。ちょっとやってみます(笑)。
ア:なんとなく、リスナーが普通に気付かずに紛れそうな気がしますね(笑)。ビートメイクといえば、ループが入っているドラムキットもあるじゃないですか。ああいうのをそのまま使うことってありますか?
C:僕はないですね。自分でパターンを打っています。そのビートメイカーのドラムになっちゃうじゃないですか。なので自分で作った方がいいなと。
ア:なるほど。Bandcampのページを今回改めて開いてみたんですけど、めちゃくちゃ充実していますよね。作品の数もいっぱいあるじゃないですか。
C:そうですね。ビートはずっと作り続けているので。
ア:作品を作る時って、コンセプトを決めてからそれに沿って作る感じですか?例えば「Demigod」は悪魔っぽい作品ですよね。
C:ビートを作った後に、どういうコンセプトにしようかなって考えています。曲名は後付けですね。
ア:去年matatabiさんと出されていたじゃないですか。あれってどういうきっかけで始まったプロジェクトなんですか?
C:matatabi君は今は東京に住んでないんですけど、東京に住んでいた時にけっこう遊んでいたんですよ。でも一緒に曲や作品は出したことないから作ろうってことで、僕がお誘いしました。
ア:交互に曲が入っているってのもあると思うんですけど、あれは前半後半で分かれていますよね。
C:データもあるんですけど、元々テープを作ろうって言っていた作品なんですよね。テープってA面とB面じゃないですか。それでスプリットで作ろうってなって、ああいう構成になりました。
ア:二人で同じ方向性を目指そうとか、逆に違う方向性を目指そうとか、そういう打ち合わせみたいなのってあったんですか?
C:そういうのはなくて、とりあえず格好良いのを作って持ち合わせようみたいな感じでしたね。僕はmatatabi君をあっと言わせるような作品作りに専念しました。
ア:Jaylibがお互いに送り合って刺激を受けたみたいな話があるじゃないですか。「LOOPER」では随時進捗を報告するじゃないですけど、一曲ずつできたら送るみたいなのってしていましたか?
C:ビート一個一個はやってないですけど、僕が先に作り終わって送った時に、matatabi君はほぼ作り直したらしいです。「これじゃ負ける」というか。
ア:強烈なエピソードですね(笑)。
C:あのアルバム、僕の部分だけでも僕は100曲くらい作ったんですよ。100曲くらいのうち10曲をできたよーって言って送ったら作り直してきました(笑)。
ア:100曲作るってすごいですね。数字がでかいとすごい。またBandcampに置いてある色々な作品の話に戻るんですけど、Bancampのリリースページに何かのセリフっぽい言葉が添えられていたりするじゃないですか。あれって何か元ネタとかは?
C:マジック・ザ・ギャザリングっていうカードゲームがあるんですけど、あれのフレーバー・テキストっていう効果じゃない方のテキストを書いています。僕は今はプレイしていないんですけど、絵柄とかストーリーが好きなんですよね。
ア:マジックから来ているんですね!ヒップホップ史上最高のなんちゃらを5人挙げろってのあるじゃないですか。CRAMさんはビートメイカーということで、ビートメイカーで5人挙げていただきたいのですが。
C:そうですね…Dibia$e、Tuamie、BudaMunk、Madlib、The Alchemist。この5人でいってみたいと思います。
ア:そのビートメイカーの人たちから参考にしていることとかってありますか?
C:めちゃくちゃ動画を見まくって参考にしていますね。どんな機材使っているのかなとか、どんな揺らし方しているのかなとか。あとチラっと見える画面とか見て、この人クオンタイズ使っているじゃんとか使っていないじゃんとか。そういうのとかめちゃくちゃ研究したりしますね。
ア:やっぱり動画で明かされると見ちゃいますよね。それは情報共有の大切さみたいな意味で、CRAMさんがやっているコミュニティにも繋がる話ですね。70人もいらっしゃるのはすごいです。
C:メンバーのみなさん、ありがとうございますって感じです。
ア:ちなみにメンバーの中でこの人のビートやばいから特に聴いてほしいって方はいらっしゃったりしますか?
C:SoundCloudに曲を上げている、Nakさんっていう方のビートがめちゃくちゃやばいです。
ア:チェックしてみます!コミュニティがビートメイクを始めるならまずここにみたいな感じになるといいですね。
C:そういうコミュニティにしていきたいですね。
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