![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/72202037/rectangle_large_type_2_899d3fc2375c092138fd991869038153.jpg?width=800)
2022年のヒップホップで気になる集団
クルー、レーベル、コレクティヴ…形態は様々ですが、ヒップホップの分野では古くから多くの集団がシーンを彩ってきました。
1980年代にはMarley Marl率いるNYのコレクティヴ、Juice Crewが活躍。その後NYからはA Tribe Called QuestやDe La Soulなどを擁するコレクティヴのNative Tonguesが登場し、多くの名作をリリースしていきました。
1990年代前半には西海岸のレーベル、Death Row Recordsがブレイク。Dr. Dreが新たなサブジャンル「Gファンク」を浸透させ、Snoop Doggや2Pacなどがヒップホップ史に残る名盤を残していきました。そして、Death Row RecordsといえばライバルだったNYのBad Boy Recordsを抜きにしては語れません。Diddy率いるBad Boy Recordsからは、The Notorious B.I.G.を筆頭にThe LoxやMaseなど多くの才能が登場。GファンクやメロウなR&Bを巧みに取り入れた柔軟な姿勢で人気を集めました。
1990年代後半にはルイジアナのCash Money RecordsとNo Limit Recordsの人気が爆発します。また、メンフィスのThree 6 Mafia率いるProphet Entertainment/Hypnotize Minds、1990年代前半からリリースを続けるベイのE-40によるSick Wid Recordsなども精力的に活動。1990年代は、このように確固たるカラーを持ったレーベルでの動きが活発に見られました。そのほかレーベル以外にもテキサスのScrewed Up Clickのようなコレクティヴも多く活動。Lex LugerとSouthsideが創設した808 Mafiaのように、プロデューサーが集団で活動する例もあります。なお、808 Mafiaについては以前こちらで少し書いています。
このように何かの集団の一員として活動することは、ヒップホップでは古くから行われてきました。そして、それは2022年現在も続いています。そこで今回は、2022年のヒップホップシーンにおける要注目の集団を5組選びました。
Bruiser Brigade
デトロイトのラッパー、Danny Brown率いるレーベル。にんじゃりGang Bangではあまり取り上げませんでしたが、2021年のリリースラッシュには凄まじいものがありました。唯一取り上げた作品のFat Ray「Santa Babara」も良作です。
Bruiser Brigade作品は基本的にはねじれたブーンバップが多く、Danny Brownを筆頭に癖の強いラッパーが揃っています。これまでDanny Brownが一人飛び抜けて活躍していましたが、Earl Sweatshirtが先日リリースしたアルバム「SICK!」にはZelooperZが客演で参加。昨年のリリースラッシュを経て、今年はどう活動していくのか要注目です。
CMG Records
メンフィスのラッパー、Yo Gottiのレーベル。2010年代半ば頃からBlac YoungstaやMoneybagg Yoといった同郷のラッパーを次々とフックアップし、じわじわと勢力を拡大してきました。2010年代後半に契約したデトロイトの42 Duggが2020年頃にブレイクし、2021年にはケンタッキーのEST Geeが加入しこちらもブレイク。さらに先日ベイのMozzyも契約を発表しました。Mozzyの作品は何回か取り上げています。
気付いたら物凄い面々が揃っていたCMGの動きは、Meek MillやWaleなどを引き入れて人気を拡大していった2010年代前半のMMGを彷彿とさせます。MMGのようにレーベルコンピレーションが出れば、その立ち位置はかなり強固になるのではないでしょうか。今年はこの濃厚な面々から目が離せません。
Death Row Records
先述した西海岸の老舗レーベル。Snoop Doggが社長に返り咲くという衝撃のニュースが発表され、多くの注目を集めています。さっそく現行ウェッサイ好きの間で人気を集めるDoggystyleeeeと契約し、先日シングル「Hit Em Up」をリリースしていました。Doggystyleeeeについては以前レビューも書いています。
また、Daz DillingerのInstagramによるとTha Dogg Poundのニューアルバム「Dogg Chit 2」がDeath Rowからリリースされるようです。Daz Dillingerのほかの投稿ではDoggystyleeeとも交流のあるNhale(故Nate Doggの息子)が一緒にタグ付けされており、こちらも気になります。オヤGにはたまらない動きが見れそうです。
Screwed Up Click
故DJ Screwを中心としたテキサスのコレクティヴ。昨年はリリースラッシュで、にんじゃりGang Bangでも何枚か取り上げました。
取り上げた作品以外にも、Lil FlipやLil Oなどが作品をリリース。今年に入ってからもE.S.G.やLil Kekeなど多くの所属ラッパーが作品をリリースしています。単純に人数が多いのでラッシュのように見える部分もありますが、Big Pokeyなど明らかにマイペースだった人もギアを入れてきた雰囲気があります。テキサスでは現在Don ToliverやMaxo Kream、Megan Thee Stallionなど多くの新進ラッパーが活躍しており、後進に刺激を受けた部分もあるのでしょう。SUC周辺の動きについては2021年年間ベストアルバムの記事の総評でも少し書いているので、あわせて是非。
Top Dawg Entertainment
Kendrick Lamarを擁する西海岸のレーベル。今更何をという感じに見えるかもしれませんが、その看板アーティストのKendrick Lamarが次作を最後にレーベルを離れることが伝えられています。
なので、変化が求められている時期に入ってきていると思います。ZacariやRay Vaughnなどまだアルバムリリースのないアーティストが、今年アルバムを残せるのか要注目です。また、昨年新たに契約したテキサスのプロデューサー、Kal Banxも気になる存在です。Isaiah Rashadが昨年リリースしたアルバム「The House Is Burning」でも多くの曲を手掛けていました。
Kal Banxは昨年ソロでもミックステープ「KEEPITINTHEFAMILY+」を発表。MF DOOMとPlayboi Cartiの疑似共演などユニークな試みを行っていました。今年に入ってからもDenzel Curryが今年発表したシングル「Walkin」プロデュース。ここでもBPMが途中で変化するユニークなビートを制作しています。
Kal BanxやRay Vaughnのような新たに契約したアーティスト以外にも、Ab-SoulやSZAなど古株も久しくリリースしていないので今年は注目です。特にSZAは昨年シングル「I Hate U」のほか、Doja Catに客演した「Kiss Me More」のヒットもありました。
と、Kendrick Lamar以外のもやはり多くの才能を抱えるTDE。これからどう変わっていくのか、目が離せません。
その他
ほかにも犬の鳴き声と共にシリアスなラップを聴かせるベイのEBKや、BabyTronを擁するデトロイトのShittyBoyzなども要注目の集団です。故Young Dolphのレーベル、Paper Route EmpireにもKey Glockを筆頭にKenny Muneyなど素晴らしいアーティストが所属しています。
Jay WorthyやRome Streetzが新たに加入したGriseldaも引き続き注目です。Young Thug率いるYoung Stoner Lifeからも、Gunnaがアルバム「DS4Ever」をヒットさせているほか、Yung Kayoのアルバム「DFTK」も話題を集めています。
日本でもSound's DeliやSELF MADEなど様々な集団がシーンを彩っています。そして、注目すべき集団の一つに福井で活動するビートメイカーだけのクルーのDRSがあります。そんなDRS所属ビートメイカーの2seamが昨年リリースしたビートテープ「picture」についての記事を、WebメディアのDIGLEに寄稿しました。2seamだけではなくDRSのことも書いています。ビートシーンで一際目立つ、その集団の面白さを是非。
なお、この国内ビートメイカーのビートテープを紹介する企画は連載化が決まりました。今後とも宜しくお願い致します。
ここから先は
¥ 100
購入、サポート、シェア、フォロー、G好きなのでI Want It Allです