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BOMB WALKER & MASS-HOLEインタビュー「責務として言葉を使う」

長野のラッパー兼ビートメイカー二人、BOMB WALKERMASS-HOLEがタッグ作「BANDIT」を先日リリースしました。

2021年のソロアルバムze belleではGriseldaなどと共振するようなスロウで硬派なブーンバップを聴かせていたMASS-HOLEですが、今回の作品ではそれとはまた異なる魅力を打ち出しています。冒頭を飾るタイトル曲BANDITや先にシングルとしてリリース済みのDAWNでは華やかなホーンを使ったアッパーな路線を披露。WAVEは西海岸ヒップホップを思わせる弾力のあるベースが効いたファンキーなスタイルで、T.W.O.T.O.P.では泣きのギターループと808に乗り込んでいます。それらとSTUCKDOWNHILLFACEのようなタフな路線を交えた、濃厚なラップとビートが楽しめる作品です。

今回の作品ではMASS-HOLEの存在感も大きいですが、今回相方に選ばれたBOMB WALKERも強烈な個性を放っています。その押し潰したような発声のラップは、一度聴いたら忘れないインパクト。熱量と鋭さを持ったMASS-HOLEのラップとは異なる持ち味で、その二人のコンビネーションはKINGPINZFOUR HORSEMENといったMASS-HOLE関連作ともまた違った魅力が生まれています。

さらに、BOMB WALKERはiCE PiCK名義でビートメイクも行っており、今作でのラスト二曲が彼のビートだといいます。この気になる新進アーティストについて深掘りし、作品の魅力を紐解くべく今回はBOMB WALKERとMASS-HOLEの両名にインタビューを依頼。そのルーツやカルチャーへの考え方などをたっぷりと語ってもらいました。



The AlchemistとJust Blazeの魅力と憧れたデュオ

――お二人が共通して好きなヒップホップはどのあたりになるのでしょうか?

MASS-HOLE:どこら辺だろうね?

BOMB WALKER:The AlchemistとかJust Blazeとかじゃないですかね。

――その二人は時代によって作風が結構変わりますが、特に好きなのはどの時期ですか?

BOMB WALKER:The Alchemistだと1stとかがなんだかんだ好きですね。

MASS-HOLE:俺はJust BlazeだとMPC4000を使っている頃が一番好きですね。Jay-Zの傘下に入った頃。あの頃に俺は一番やられていました。

――その頃のJust Blazeの魅力はどんなところだと思いますか?

MASS-HOLE:ドラムの鳴りですね。あと、メジャーフィールドで活躍しているけどネタ使いに忠実なところ。結構オタクな人で、ファンクとかの7インチをめっちゃ持っていたりするんですよ。それと、昔インタビューを読んだらDef JuxにいたRJD2とかの固有名詞とかも出てきて、「上も下もなく万遍なく聴いているんだな」って結構やられた記憶があります。

――今回は二人でアルバムを作ったわけですが、ラップデュオって括りでは好きなデュオはいますか?

BOMB WALKER:BLAHMYですね。高校生の時にドハマりしました。「CONTEST WINNER」って曲があるんですけど、それとかめっちゃ聴いていましたね。それを(FOUR HORSEMENの)MIYA DA STRAIGHTにも教えたらMIYAもドハマりして、僕がラップを始めたのもMIYAと「BLAHMYみたいに二人でやろうよ」みたいな話になったのがきっかけです。

――そうなんですか!

BOMB WALKER:MIYAは一個上の同世代で、彼がDJだけをやっていた高校生の時にクラブで出会いました。彼世代の周辺の友達が打っていたDJイベントに遊びに行ったんですよね。それで「なんか誰かとしたい」って話していて、DJのQ.S.I.ってヤツと三人で始めたって感じですね。

――なるほど。MASSさんはデュオだとどの辺が好きですか?

MASS-HOLE:やっぱりMobb Deepですね。後の作品では色んなプロデューサーを呼んでいますが、一枚目~二枚目って基本的にHavocがメインで作っているじゃないですか。それでProdigyはラップだけみたいな。そのラップ専門が一人と、ビート作ってラップもするのが一人って感じが格好良いと思っていた記憶がありますね。

――わかります。

MASS-HOLE:KINGPINZもそういう感じだったんですよ。KILLIN'Gがラップオンリーで、俺がビートを作ってラップもするっていう。でも、BOMB WALKERはビートも作るから、今回はそこら辺また違った気分でしたね。


ビートメイク動画での学び

――BOMB WALKERさんはどういうきっかけでビートメイクを始めたのでしょうか?

BOMB WALKER:最初はNasとかのインストを使ってラップしていたんですけど、一年くらい経ってから「やっぱりオリジナルじゃなきゃダサい」と思って作り始めました。

――やり方はどうやって学びましたか?

BOMB WALKER:「Rhythm Roulette」をひたすら見ていました。9th Wonderの回とかめちゃくちゃ見ましたね。

MASS-HOLE:俺は「Rhythm Roulette」だとJust Blazeがヤバかったな。9th Wonderは「MPCじゃなくてMaschineになったんだ」とか、そういうのが気になっちゃったね。あとはEl-Pのスタジオがヤバいとか、Oh Noの部屋が超汚いとか(笑)。

――Oh No回良かったですよね。

MASS-HOLE:意味わかんないですよね。まず暗すぎる(笑)。しかもプロレスのサントラから作っていましたよね。

――そもそもレコ屋じゃなくてゲーム屋に行くっていう(笑)。個人的にはStatik Selektahの回が好きでした。

MASS-HOLE:Statik SelektahもPro Toolsでビートを組んでいるのとか見ていて面白かったな。「MPCで叩いてグルーヴを出すんじゃなくて、パソコン上でやるんだ」っていう。やっぱ皆様々ですね。

BOMB WALKER:Apollo Brownも良かったですね。スピーカーの上にスピーカーを置くの、僕も真似しちゃいました。

MASS-HOLE:Apollo BrownはパソコンがMacじゃなくてDellだったのが気になったな。そこら辺も面白かった。

――そういうビートメイク動画って結構見るんですか?

BOMB WALKER:僕は好きでよく見ています。Marco Poloのチャンネルに上がっているやつとか。

MASS-HOLE:俺もFL Studioを使い始めたんですけど、Cedar Law$から「動画を見るのいいですよ」って言われて「How to」系動画を教えてもらって見ました。MPCの頃は独学だったけど、勉強になって面白かったな。

――なるほど。ビートメイク仲間同士でテクニックの共有をするみたいな話を聞くことがあるんですけど、お二人はそういうのはありますか?

BOMB WALKER:全然ないですね(笑)。

MASS-HOLE:俺は一回DJ SCRATCH NICEがNYにいる頃に遊びに行ったんですけど、その時に一緒にビートを作った時に何か掴んだのはありましたね。同じMPCでの全然使い方が違って勉強になりました。ハット一つでも、8で打つか16で打つかで違ってくる。適当に打っているようだけど、それがどんどんグルーヴになっていくみたいな。それがビートメイクの面白いところだと思いました。Swizz Beatzとかのビートを聴いていると、そういう叩いていくうちにグルーヴになっていく面白さをすごい感じますね。


今の流れの暗さや遅さを打破したい

――研究したビートメイカーはいますか?

MASS-HOLE:俺のベースはやっぱりHavocですね。

BOMB WALKER:僕は38 Speshです。ラップもできてビートも作れる、あの感じが好きで。聴き込んでどんな感じで作っているのか研究しました。

MASS-HOLE:結構渋いビート作るよね。

BOMB WALKER:渋いですよね。あとはV Donも好きです。

――Daringerはどうですか?

BOMB WALKER:好きですね。でもDaringerはあんまり組む感じじゃなくて、ちょっと打ち込みっぽい人が好きなんです。0から作る感じがあるというか。Jake Oneとかの楽器が弾けるビートメイカーも好きですね。

MASS-HOLE:俺はDaringerを聴くと、昔のAnticonとかを聴いている時の感覚になるんですよね。ロック、プログレの使い方、あとドラムの感じとか。根本には90sのビートの質感があるんですけど、そこから派生してロックとかを使っている感じがあります。例えばDiggin' in the Cratesとか、ああいうのとはまた違う良さですよね。俺も昔Anticonすごい好きだったから、それを聴いている感覚になります。

――確かに通じるものがありますね。Camoflauge Monkはどうですか?

BOMB WALKER:好きですね。最近はそっち系のアングラばかり聴いています。

MASS-HOLE:俺は最近そこら辺量が多すぎちゃって、ちょっと聴けていないところがあるかな。今は昔のを掘っていますね。ちょっとラガっぽいやつとか、2000年くらいのアルバムに入っているイナタいやつとか。そういうものを探したりしています。あと、やっぱりDJをやっているのもあるから、聴いていてアガるような曲を掘っているところもあるんですよね。グライミーなドラムレスの曲も格好良いんですけど、DJで使いづらいんですよ。(2021年のソロアルバムの)「ze belle」を出した時にも、周りから「DJで使いづらい」みたいに言われたことがあるんですよね。確かにあのアルバムはBPM80以下の遅い曲が多かった。今の流れだとどうしても遅くなったり暗くなったりする風潮があると思うので、今回のアルバムではそれを打破しようって意識は強く持っていましたね。

――今回はアゲめな曲が多かったですよね。

MASS-HOLE:暗くなりすぎないようにしました(笑)。「ライブでアガれる曲」を前提に作った感じはありましたね。

――掛け合いフックの曲も多くてライブ映えしそうだと思いました。

MASS-HOLE:うん、多いですね。サビもコンビネーションで作ったりしたんですけど、レコーディングは途中から個々で録ってデータを送り合う感じでやりました。「STUCK」とかの最初の方に作った曲は自分の店(※長野県松本市でMASS-HOLEが運営する『da point 117』)で録ったりもしたんですけど、途中でBOMB WALKERのスタジオの環境が良くなったんですよ。それで個々で録るのに切り替えたらスムーズに進んで、めちゃくちゃ早くできました。


場所の大切さ、長野のシーン

――ちょっと今さらなんですけど、お店にレコーディング環境もあるんですね。

MASS-HOLE:今そういうのが家でできなくなっちゃったので、店に録音環境を作って録っていますね。

――ほかの人が録りに来たりすることはありますか?

MASS-HOLE:今回のアルバムだと客演に関してはみんな録りに来たかな。みんな録りに来るのにBOMB WALKERは来ないで個々で録るっていう(笑)。よくわかんないことになっていました。あとは長野だと最近はGumpflowってやつが来ますね。それとDOWN NORTHにいたラッパーのOYGが今山梨に住んでいて、距離が近いのでちょくちょく来てラップを録っています。なんとなく、長野の若いやつはちょっと躊躇している感があります(笑)。やっぱりまだ敷居が高いんでしょうね。

――なるほど(笑)。でも、拠点みたいな場所ができたっていうのは大きいことですよね。自分も地元にワンループレコード(※新潟のレコードショップ)があるので、その大切さは感じています。

MASS-HOLE:そうですね。やっぱり松本にはそういうBボーイの店が今はないから。そういう面で根城を構えたのはありますね。タイミングで遊びに来てください!

――是非! そういえば、今回はビートでは県外の人もいますが、客演は長野の人だけですよね。それもやはりライブが前提にあるからなのでしょうか?

MASS-HOLE:ライブっていうか、近くにいるやつで作ったって感じですね。長野は周りにいるラッパーだけで形になっちゃうところがあるので。KINGPINZもそうだし、FOUR HORSEMENもそうだし。近くにいればすぐに録れるし。でも個々の作品となったら、多分また感じも変わってくると思うんですよね。俺の方だと例えば1982sの面子とかもみんな来るだろうし。BOMB WALKERの方だって、やっぱ同い年とかの全国のラッパーも呼ぶんじゃないですかね。だけど、今回は長野のラッパーだけで作ったところはやっぱりあります。

――今回の制作はどのような流れで進んだのでしょうか?

MASS-HOLE:昨年12月に俺がシングルで「DAWN」と「STUCK」を出したんですよ。ビートは「STUCK」がcreek villeっていう沖縄のビートメイカーで、「DAWN」が自分のビートだったんですけど。両方ともBOMB WALKERがフィーチャリングで入っていたんですよね。それを並べた時、二人でやった方が面白いかなと思ったんです。その頃、俺は個人的にアルバムをずっと進めていたんですけど、うまく進まなくなって作業的にちょっと嫌になっていたんですよね。それだったら一人でやるより、やっぱりラップって人数いてやる方が楽しくやれるので。それでBOMB WALKERと「ちょっと作ろうよ」って形で進んだ感じでしたね。

――そこからこのプロジェクト用にビートを集めていったような形でしょうか?

MASS-HOLE:いや、ビートは既に結構集まっていたんですよね。俺の周りのGQとかのストックが結構あったので、そこから二人で選んでいくような形でした。DLiPNAGMATICだけはビート欲しいって言って作ってもらったパターンだったかな。

BOMB WALKER:MASSさんがストックを塊で送ってくれて、僕が「これがいいです」って選ぶとMASSさんも「やっぱそれだよね」みたいになって進む感じでしたよね。

MASS-HOLE:なんか合致した感じあったよね。意見が分かれることは全然なかったです。二人とも第一希望が同じみたいな。


山賊っぽい

――聴いている音楽の趣味とかが近いのかもしれないですね。そういえば去年のシングルリリースの時のプレスリリースで、「STUCK」のcreekさんにはMASSさんがシンパシーを感じたというコメントが載っていましたよね。どんなところにシンパシーを感じたのでしょうか?

MASS-HOLE:ビートの質感ですね。多分レコードからのサンプリングで、ちょっとザラっとしているというか。そのループの上にドラムブレイクが乗っている感じに、なんか近いなと思いました。気候の違いも絶対あると思うんですけど、俺はそれまで沖縄の音楽にシンパシーを感じたことってなかったんですよ。でもcreekは冬っぽい、冷たい感じがする。俺の前のアルバムから参加してもらっている、新潟出身のTatwoineも近いものを持っていると思いますね。

――彼はいいですよね。シングルで出したもう一曲、「DAWN」はKINGPINZの曲っぽい感じがあると思いました。

MASS-HOLE:そうなんですよ。KINGPINZをリバイバルでやろうかって話をしていて。あの曲とかを作ったんですけど、うまく形にならなかったんです。ただ、あの曲はライブでずっと披露はしていて、もう街のアンセムみたいな感じになっていたんですよね。それで何年後かにリリースするのはもったいないと思って、「BOMB WALKERもやっているし、これも入れちゃおう」みたいな感じで収録しました。

――あれはフックが強いですよね。

MASS-HOLE:そうですね。ライブでもあれはアガります。やっているうちらもアガるし、客もアガる。今回の作品は「ライブでイントロからみんなでアガれるような曲」っていうのが前提でありました。

――ライブっていうのが今回の重要な要素になっているんですね。今回の作品では、先にシングルで出していた曲以外にライブで長くやっていた曲はありますか?

MASS-HOLE:いや、シングルの曲だけですね。新しく収録した曲に関しては、この前のイベント「DEVIL’S PIE」で初披露したような曲が多かったです。9月からツアーも始まるので、そこでどんどん磨いていくような感じになると思います。

――アルバムのタイトルと同名の曲が収録されていますが、どちらが先に決まったんでしょうか?

BOMB WALKER:曲名ですね。

――あの曲からタイトルを取ったのはなぜですか?

BOMB WALKER:なんかあったんですか?

MASS-HOLE:いや、なんもなかったかな。多分山賊焼きとか食べていて思いついたのかな(笑)。うちらはなんか、ちょっと山賊っぽいなみたいなイメージがあったのかも。


昔は「無し」だったものが今は「あり」に

――なるほど(笑)。今回は7曲入りで、アルバムとしてはやや短め、EPとしては少し長いくらいですよね。このサイズにしたことへのこだわりなどはあったのでしょうか?

MASS-HOLE:現行のアルバムって10曲行かないみたいな作品が多いじゃないですか。俺は今までの作品ではスキットを入れたりして、そういうのも含めて15曲とかにしていたパターンが多かったんですけど、今回はそういうものを全部排除してラップだけの作品にしたら7曲になったって感じですね。あと、個人的にはEPが一番聴きやすいんですよね。何周も聴けるみたいな。だから色んな曲を入れて10数曲にするよりは、7曲に絞って完結できるくらいを目指してパッケージングしました。

――二人のラップが濃いこともあって、完璧なバランスだったと思います。そういえば、さっきから気になっていたのですが、BOMB WALKERさんは喋る時の声とラップの時の声が結構違いますよね。

BOMB WALKER:そうですよね。発声は実は過去に「これも違うのかな」と色々やってきて、今回の作品のちょっと前くらいからやっと「これだ」みたいなのに気付いた感じでした。以前はもうちょっと弱い感じだったんですよね。

MASS-HOLE:甲高い感じ?

BOMB WALKER:掠れた感じっていうんですかね?

MASS-HOLE:わはは(笑)。

BOMB WALKER:それでやっていたんですけど、富山の一個上のラッパーのEftra君と最初すごい発声が似ていたんですよね。ある時MASSさんに「これEftraと見分け付かないんじゃね?」みたいに言ってもらったことがあって、「確かに」と思ってパンチがある方向に変えていった感じです。そうしたらばっちりハマったというか。

MASS-HOLE:器用なんですよね。Eftraも発声やフロウがすごいけど、そこで違いを出せるのはすごい。そういうところもスキルの一つだと思いますね。うちらの世代だと声を作るのって否定されがちで、地声でラップすることが美徳みたいな感じにされているところがあったんですよ。でも今はそういう時代じゃなくて、声を作るのもスキルなんだなって感じます。それが最終的には自分の声になれば問題ない話だから。BOMB WALKERはそこが出来ているから格好良い。

――確かに今は「作っている声はフェイク」みたいな価値観は薄そうですね。

MASS-HOLE:なんか、昔は「無し」とされていたものが今は全然「あり」になっているというか。そういうのにこっちは寛容になって、OKにしていかないといけないっていうのは結構意識していますね。


スクラッチとBOMB WALKERの魅力

――時代の変化といえば、最近はブーンバップでもスクラッチが入ることが減ってきているように感じます。でも今回の作品ではスクラッチがガンガン入ってきますよね。そこに何か哲学のようなものがあるような気がしたのですが、いかがでしょうか?

MASS-HOLE:スクラッチが入ることによって、ヒップホップになると俺は思うんですよね。そこはもう崩したくない。最近だとConway the MachineBig Ghsot Ltd.のアルバムでも、D-Stylesがスクラッチを入れていたじゃないですか。それを聴いて「やっぱりスクラッチを入れることは正義なんだな」と感じましたね。このご時世だとシンプルな曲って多いじゃないですか。機械的なビートの上でラップを乗っけているだけだと、正直あんまり面白くないんですよね。でも、こっちは普通にスクラッチがガンガンできる格好良いDJがいっぱいいるから、そういうヤツらも紹介していきたい。結構強めの意識でやっていますね。

BOMB WALKER:僕がソロで今まで作ってきた曲は、ずっとスクラッチとかブリッジとかがない構成だったんですよ。16小節のヴァース、フック、16、フックみたいな。でも今回はスクラッチを入れたり、「STUCK」でMASSさんと4小節で回すみたいなことをやったりして。「こういうのもアリなんだ」とすごく思いましたね。

――あれは良かったですね。二人の個性のぶつかり合いというか。

MASS-HOLE:俺は今回の作品に関しては「BOMB WALKERを紹介する」っていう裏テーマがあったんです。そこは成功したかなって感じが結構ありますね。自分の方が一歩下がって、フックもBOMB WALKERメインにしたり。

――なるほど。パンチのある声の人がすごい目立っていて、強烈なインパクトのある作品だったと思います。しかもビートも作れるっていうのが驚きですよね。

MASS-HOLE:BOMB WALKERはビートの方はiCE PiCKって名義でやっているんですけど、多分これからどんどん世に出ていくと思うし、出ていかなきゃいけないと俺は思っています。ラップもヤバいんですけど、ビートもヤバいからどんどん紹介していきたいですね。BOMB WALKERからビートのストックを貰ったら、ほかの人にも回すようにしているんですよ。それくらい知ってほしいビートを作る。

BOMB WALKER:ビートをもっと買ってほしいですね。

――ちなみにお互いのソロ作にビートを提供するとしたらどんなビートを作りますか?

BOMB WALKER:「漢」って感じのビートだと思います。

MASS-HOLE:俺はあんまり考えたことないけど(笑)。でもヤバいビートは渡していきたいですよね。


責務として言葉を使う

――MASSさんは最近Le$Jay Worthyにもビートを提供していましたが、今回の「WAVE」はちょっとその流れで聴けるような感じだと思いました。でもお話を聴く限り、現行のGを意識したとかではなさそうですね。

MASS-HOLE:あれはちょっと西っぽい雰囲気ありますよね。単純にネタから入ったらああいう感じになったんですけど、今まで自分の曲でああいう曲ってなかったので。それをBOMB WALKERとやったら面白いんじゃないかと思ってチョイスしました。

BOMB WALKER:「WAVE」ヤバいですよね。みんなで海をテーマにガチガチに揃えてやりました。

MASS-HOLE:長野って海がない内陸だから、海をテーマにしてなんか作りたいみたいな感じだったよね。

BOMB WALKER:イントロの感じとか超ヤバいですよね。実は、あのイントロで小さく流れている僕のシャウトみたいな部分がメインのフックになる予定だったんですよ。それを作り直したんですけど、最初の方もなんか使えそうってことになってMASSさんがイントロに置いてくれたんです。あれは結構化学反応が起きましたよね。

MASS-HOLE:あの曲はパート2みたいな感じなんですよ。最初は原型があったんですけど、ちょっとまだ弱いなってイメージが合って。それでリリックを書き直したりとか、BOMB WALKERも最初はフックだけだったけどヴァースを新たに書いてもらったりとか。そうやってビルドアップさせて作りました。

――あの曲ではMASSさんが最初に「このCULTUREがCAPTAIN、あくまで俺はGUEST」とラップしていますよね。自分はゲストというスタンスはここ数年でよく聞くようになってきたと思うのですが、日本のラップのリリックで出てくることは少ないので印象的でした。

MASS-HOLE:それはやっぱり結構意識しましたね。やっぱりカルチャーはアメリカのもので、うちらのものじゃない。ここ最近は色々と騒ぎにもなるじゃないですか。用語の使い方とか。俺も以前は平気でNワードとかも言っていたけど、そういうものは改めてやっぱり使っちゃいけないんだなと思って勉強し直しました。日々成長って感じですね。そこからのリスペクトを込めてのああいうリリックです。

――素晴らしいことだと思います。

MASS-HOLE:やり続けていると、やっぱり見失っちゃうものもあるから。そこら辺は何回も立ち止まって考えたりはしています。ヒップホップもこれだけ細分化されちゃうと、もうわけわかんなくなってくる部分もあるけど、やっぱり一本芯を通すには間違ったところは勉強し直さなきゃいけない。自分の考えみたいなものをちゃんと持って、ラップする時は責務として言葉を使うっていうのを考えてやるようにはなりました。

――それはすごい大切なことですね。最後に今後の予定や、やってみたいことを教えてください。

BOMB WALKER:海外アーティストとちょっと企んでいます。最近はWorld Be Freeというラッパーにメールしました。向こうでも結構アングラなラッパーのなんですけど、38 Speshとも曲をやったりしている人ですね。あとはビートテープを年内に出したいのと、来年にはソロアルバムを出したいなと思っています。

MASS-HOLE:その前に秋にEPだよね。

BOMB WALKER:そうですね。ビートは全部自分で作った3~4曲入りくらいのEPを出します。出していない曲が結構溜まっているので、それをどう消化していこうかって感じですね。

MASS-HOLE:俺はアルバムをずっと作ってはいるんですけど、2歩進んでは3歩下がるみたいな感じです。あとはビートを結構色々な人に頼まれていて、リリースも重なっているので随時チェックしてもらえたらと思います。それと、BOMB WALKERともまだガンガン一緒に動くこともありますね。あとは週末には結構ライブやDJが入っているので、それを常にこなしていく。ライブが終わった後の方がリリックも書けたりするので、それを作品に落とし込んでまとめられたらなと思っています。



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