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Tatwoineインタビュー

新潟出身で現在は東京在住のビートメイカー、Tatwoineにインタビューしました。Tatwoineは先日アルバム「hoodies」をリリースしたほか、MASS-HOLEのアルバム「ze belle」にも参加しています。

アー写

アボかど:何気に古い付き合いだけど、まずはプロフィール的なところから聞いていきたい。ヒップホップとの出会いは何になるのかな?

Tatwoine:確か中学2年生とかだったと思うんですけど、ラジオでEminemの「You Don't Know」って曲を聞いて「ヒップホップ格好良い」ってなりました。(Eminem主演の)映画の「8 Mile」はそれよりも前に観たことがあって、「あの時映画で観た人の曲なんだ!」と知って興味を持ちました。

ア:「You Don't Know」懐かしいな・・・。音楽始めたきっかけって何になるの?新潟にいた頃はラッパーだったよね。

T:ラップが最初でしたね。地元の友達と遊びの延長みたいな感じでラッパーになって・・・でも、ラップやってる時も、そこまで自分のラップが好きじゃなくて。ラップは微妙かなって思いながらやっていました。

ア:そうなんだ。それで、新潟から東京に行った最初の頃はDJやってたよね。

T:それも遊びの延長で始めて、友達がやってるイベントとかでたまにやるくらいでした。

ア:そこからビートメイクを始めたのはどういう流れが?

T:ラップも好きなんですけど、ヒップホップにおいてはビートを重要だと前から思っていて。好きなラッパーでも、アルバムによってビートの雰囲気が好きじゃなかったら、そのアルバムは一周して終わりみたいなことが多かったんですよね。ヒップホップを聴き始めた頃から、自分の中でビートが好きな要素の一つだったんです。それで、なんとなく東京に来てDJを始めて・・・時間があったんじゃないですかね。時間がある時期に遊びの延長で作ってみたら、思いのほかハマったという。

ア:なるほど。それは2014年くらい?最初のビートテープ「Voyage to Tatooine」が2014年だったよね。

T:そうですね。あと、ビートメイカーは基本的には表に出ないじゃないですか。そういうスタンスも格好良いと思っていて。

ア:なのに今回、表に出てしまったね(笑)。機材は何で作ってるの?

T:最初はMPC1000を使っていました。その後に、(新潟のビートメイカーの)DJ HARAKIRIさんにFL Studioがいいって言われて。FL Studioって体験版が無料で使えるんですけど、やってみたら操作性がしっくり来たんですよね。それからFL Studioをずっと使っています。

ア:なるほど。曲を作る時はサンプリングオンリーなのかな?

T:サンプリングのみで作ってます。ネタは全部レコードから取ってきてますね。

ア:そうなの!そこには何かこだわりとかあるのかな?

T:ネタを見つけるところから始まっている感じというか・・・レコ屋に行って自分で「知らないけど良さそうだな」って見つけて、家に帰って聴いて、それを調理していくまでの流れ自体が好きなんですよね。それでレコードからっていうのをずっと守ってます。

ア:なるほどね。独自に発達した嗅覚というか、Tatwoine的なディグのポイントって何かある?自分の場合、ジャケ買いする時は「動物がいる」とか「目や手からビームが出てる」とかで買っちゃうんだけどさ。

T:昔は黒人女性が写っているジャケを買ってました。最近は集団で全員変な格好をしている80'sソウルを買ってます。ほぼほぼ使えない曲なんですけど、一曲だけ格好良いのがあったりするんですよね。あと、腕を組んでるヤツがいるジャケとか(その場でレコードを取り出す)。

ア:ああ~、なるほどね(笑)!いいね、今度腕組みジャケ買ってみよう(笑)。

T:腕組んでるヤツが4人以上いると特に良いです。

ア:めっちゃ浮かぶ(笑)。さて、いよいよ例の質問をしようと思うんだけど。史上最高のビートメイカーを5人選ぶと?

T:国外に絞って。皆さん挙げると思うんですけど、一人目はThe Alchemist。これは言わずもがなですね。あと、最近はあんまり聴いてないですけど、9th Wonderとかビート作り始めた頃めっちゃ聴いてました。

ア:やっぱり!自分も9th Wonderを引き合いに出してレビューをいっぱい書いた記憶がある(笑)。

T:本当にかなり影響を受けました。あと最近よく聴いてるのはHarry Fraud。あとは、Big Ghost Ltd.とVandersliceですね。

ア:さっき9th Wonderから影響を受けたと言ってたけど、影響を受けた人を挙げるとしたらやっぱり今挙げた5人なのかな?

T:そうですね。最近はビート作る前とかに、こういう人たちのビート作る動画を観て、その日どんな感じのノリがいいか考えてます。ビート作る動画好きなんですよ。

ア:そういうのってさ、本人のチャンネルでやってるやつ?なんか番組の企画とかあるのかな。

T:番組の企画もありますけど、名前と「studio」とかを適当に入れて検索するとラッパーとセッションしている動画とか出てくるんですよ。あと最後に挙げたVandersliceってビートメイカーが、上半身裸でひたすらビートを流す動画を昔アップしていて(笑)。それが結構好きでよく観てます。是非チェックしてほしいです(笑)。

ア:いい話だな(笑)。ビート作る時のルーティーン的なことは動画観る以外には何かあるの?上半身裸になるみたいなさ(笑)。

T:上半身裸にはならないですけど(笑)。とりあえずパソコンに向かってみてですね。何も浮かばない時はやめちゃうし。今日良さそうだなってなんとなく思ったらバーッと作っちゃいます。気分ですね。

ア:ちなみに、ビートはどこから作るの?

T:まずはループからですね。

ア:ドラムはパッドを叩いてるのを想像してたんだけど、どうやってる?

T:曲によるんですけど、パッドというかキーボードに割り当てて作ってます。でもポチポチとクリックで組む時もありますよ。

ア:なるほどね。さて、今回のビートテープについて聞きたいんだけど。今回の作品を出す経緯を教えてほしい。

T:一曲目のビートが2021年1月1日に作ったんですよ。一年の一発目に自分で好きなビートが作れたので、この勢いで何かでリリースしたいなと思って。そこから作ったビートと、ちょっと前に作ったビートを合わせて、このビートテープになりました。

ア:今回のと昔のを聴き比べて思ったんだけど、前は9th Wonderみたいなソウルフルさが際立ってたのに対し、今回はハードな感じだよね。エッジーというか。それは意識してのものなのかな?

T:ハードですよね。数か月おきなのか数週間おきなのかわからないんですけど、なんとなく作るビートの傾向があるんです。聴いてる音楽とか観た動画に影響されてるのか、その時作るとハマる曲調があるんです。昔のやつはメロウな曲やソウルフルな曲をよく聴いてたのでああいうのになったんですけど、2020年後半から2021年にかけてはハードめな曲をよく聴いてたんですよね。それが出てるんじゃないかと思います。

ア:ちなみに具体的には何を聴いてたのかな?ビートテープを聴いてて受けた印象だと、Griseldaとか好きそうだと思ったんだけど。

T:Griseldaも好きですけど、あいつらの周辺でよく出てくるElcaminoとか、Bodega Bamzとかも結構好きです。あとはVandersliceですね。

ア:今回のビートテープを作るにあたって、何か挑戦したこととかはある?

T:今まではBandcampに載せて終わりだったんですけど、今回はちゃんと形にしようと思ってカセットとCD-Rでもリリースしました。曲の内容ではなく、プロジェクトとして新しい挑戦でしたね。

ア:フィジカル版はボーナストラックが2曲追加されているけど、ボーナストラックを入れる位置が面白いよね。大体のボーナストラックって最後に入るじゃん。あれは途中に入ってるけど、何か狙いはあったのかな?

T:ビートテープ作る時には、頭からケツまでの流れとして完結させるのが好きなんです。今回追加した2曲は、ケツに持ってくる曲でもなかったんですよね。中間に挟みたくなりました。

ア:今回のビートテープは、ソウルだけじゃなくてロックとか色んな質感が聞こえてくるよね。でもロックを使っても、「ロックを使ったぞ!」って感じじゃなくてブーンバップになっているのが興味深かった。

T:嬉しい限りです。今回のネタはソウルやプログレ、ハードロックとかですね。

ア:思い入れのあるビートとか今回あったりする?

T:2つあります。まずは一曲目。2021年最初に作った曲なので。作った瞬間まで覚えてますね。もう一つは「Spanish Hooligan」って曲です。これはネタをどこで買ったのかも覚えてます。大阪にVINYL CHAMBERっていうめちゃくちゃヤバいレコ屋があるんですけど、そこの通販で買いました。

ア:「Spanish Hooligan」は、後半で違うビートになるよね。

T:ネタにした曲が格好良くて、抜きどころが多かったんですよね。それでビートを二つ作って繋げる形にしました。

ア:同じネタ使ったんだ!

T:同じネタですね。ラテン系の曲です。

ア:それで「Spanish」なんだね。そういえば、前タイで買ってきたレコード縛りのビートテープを出していたよね。今後はそういうのはあるのかな?

T:タイはまた出そうと思ってます。前回のやつはマジでタイで買ってきたやつなんですけど、今はコロナでタイに行けないので。僕が住んでるところに近くに、タイのレコードしか置いてない店があるんです。たまにネタを仕入れに行っていて、ある程度溜まったらタイ縛りのやつをまた出すつもりです。

ア:その店めちゃくちゃ気になるね・・・。そもそも、なんでタイだったの?

T:なんでですかね?タイ料理が好きだからかもしれない。

ア:(笑)。前NYで買ってきたレコード縛りもやってたよね。買ってくるところからビートメイクが始まるみたいな感じ面白い。

T:やりましたね。思い出を消化するというか。ネタが膨大にある中で作るよりも、決められたプールの中で作る方が好きなんですよね。「これしかないからどうしよう」って考えるのがいいというか。

ア:なるほどね。タイで買ってきたやつは、レコ屋がタイってだけなの?タイの曲?

T:ネタも全部タイですね。

ア:前情報なしで、己の嗅覚だけで買ってきたの?

T:タイファンクとかあって、タイのレコードが今注目されているみたいなんですよ。それでタイにもレコ屋がいっぱいあって。タイの中にチャイナタウンがあるんですけど、その中にあるおじいちゃんがやっているお店に僕はいつも行ってます。そこで「タイのレコードが欲しい」って言うと、おじいちゃんが何枚か持ってきてくれて、店頭にある古いレコードプレイヤーで流してくれるんです。それでいいのがあれば買ってます。

ア:試聴させてくれるんだね。

T:そういうところって自分でポータブルプレイヤー持って行って聴くらしいんですけど。でも、その店はおじいちゃんが聴かせてくれます。

ア:そうなんだ。異国に行きつけのレコ屋があるのが面白いね(笑)。

T:そのおじいちゃんも面白いんですよ。眉間に皺を寄せながらやってくれるんです。

ア:めっちゃいいね(笑)。次そういう旅行ビートテープやるとしたらどこに行きたい?今はこんな状況だけどさ。

T:ロシアに行きたいですね。ロシアは音楽がめちゃくちゃかっこいいので。あとドイツもいいな。でもロシアですね。悪そうな曲が多いんですよ。

ア:悪そうな曲いいね~。話は変わるけど、MASS-HOLEさんの新しいアルバムにも参加してたり、その前のFOUR HORSEMENのシングル「BOTTLES UP」でもビートを作ってたよね。あの辺と繋がったのはどういう経緯があったの?

T:MASS-HOLEさんとは東京のイベントで話したんですよね。MASS-HOLEさんがプロレスめっちゃ好きで、僕もプロレス好きな時期があって。DMでプロレスの話をするようになったんです。その流れで「ビートを聴かせて」となって、それが確かFOUR HORSEMENの曲になったんですよ。それきっかけで、作ったビートを定期的に送るようになって。

ア:Tatwoineが作ったMASS-HOLEさんの「home」は、ギタリストがいるユニットのShoko & The Akillaが客演で入ってるよね。ギターを使ったビートでギターソロもあるけど、Tatwoineはどの部分を作ったの?

T:僕はメインで鳴ってるビートを作りました。アウトロのソロの部分だけAkillaさんですね。

ア:あれ超良かったね。MASS-HOLEさんの「ze belle」は、最初と最後がTatwoineのビートなのも個人的にグッと来た。

T:イントロの「ze belle」のビートは、アルバムが出るちょっと前に連絡が来たんですよね。

ア:そうなんだ!あのイントロの次の曲がStu Bangasのビートだけど、違和感がないのが熱かったね。

T:僕もStu Bangas大好きなんで嬉しかったです。

ア:コラボといえば、CKと出したEPRodrigoと出したEPとかはやってたけど、ソロ名義で出した作品は今まで客演を入れてないよね。それはこだわりでやってるのかな?

T:ラッパーとやるなら、自分のアルバムの中の一曲よりもジョイント作品でやりたいんですよね。普段聴いてるのもそういうのが多いので。そうなると・・・なかなか労力使うんですよね(笑)。

ア:なるほど(笑)。一緒にやってみたいアーティストとかいる?

T:名古屋のCOVANさんっていうラッパーですね。めっちゃ好きなので、あの人とはやってみたいです。あとは、大阪のTHA JOINTZのJASSさん。DUSTY HUSKYさんともやりたいです。

ア:合いそうだな~。今後挑戦してみたいことは?

T:ビートテープが今まで多かったので、ラッパーとジョイントで何か出したいですね。

ア:どういうタイプのラッパーとやりたいとかある?

T:そうですね・・・ヒップホップやってるな~って人とやりたいですね(笑)。生き方とか考え方とかも含めて。

ア:なるほど。これを見てるヒップホップな人は是非Tatwoineに連絡をしてください。最後に、今後の予定を。

T:イベントやパーティだと、まず5月29日(土)に中野の「Oll Korrect」というイベントでDJをやります。あと6月5日(土)に吉祥寺でMASS-HOLEさんのリリースパーティがあります。どっちも最高のパーティになるので、コロナ対策をしっかりしていただいて来ていただきたいです。作品だと、アボかどさんのラブコールを受けてRodrigoと作ってます。

ア:マジか!ありがたいね(笑)。

T:あれきっかけにもう一回やろうかと。やりとりしてます。あとは沖縄のKICKIN ENISHI'Sっていうクルーのメンバーともジョイントを出そうかと思っています。時が来たら出ると思います。

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