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【監査】米国PCAOB検査報告書について

米国上場企業の監査において一番重要なことはPCAOB検査対応です。


そもそもPCAOBとは?

米国では過去に大きな不正事例(エンロン事件)がありSOX法により、公開企業会計監視委員会(英語: Public Company Accounting Oversight Board、略称: PCAOB)が設立され、米国上場企業に対する監査を監視(検査)しています。
たとえ、米国外の企業(日本企業)の監査をしている会計ファームであっても、米国上場企業の監査をしていればPCAOB検査の対象となります。
2023年11月15日には、PCAOBによる日本の監査法人に対する処分が発表され、50万ドルの罰金や業務改善命令が出されました。
このように大きな罰金と大々的な処分の発表がなされることから、監査法人そのもののレピュテーションが損なわれる可能性があり、PCAOB検査対応が重要になるのです。

PCAOB検査結果について

PCAOBによる検査結果はこちら(下記リンク先)で見ることができます。
「Country」という項目で「Japan」を選択すれば日本の監査法人に対するPCAOB検査結果を見ることができます。

検査結果の各項目は次の通りです。

  • OVERVIEW OF THE 20xx INSPECTION(検査の概要)

  • PART I: INSPECTION OBSERVATIONS

    • PART I.A: AUDITS WITH UNSUPPORTED OPINIONS(重要な不備)

    • PART I.B: OTHER INSTANCES OF NON-COMPLIANCE WITH PCAOB STANDARDS OR RULES(その他の指摘事項)

    • PART I.C: INDEPENDENCE(独立性に関する指摘事項)

  • PART II: OBSERVATIONS RELATED TO QUALITY CONTROL(監査法人の品質管理システムについて)

以下「PCAOB Inspection Reports」各項目の簡単な解説です。

  • PART I.A: AUDITS WITH UNSUPPORTED OPINIONS(重要な不備)
    米国上場企業に対する会計監査・内部統制監査について重要な不備が発見されたかどうか記載されます。意見表明のための十分かつ適切な監査証拠が監査調書に明確に記載されていることが求められます。

  • PART I.B: OTHER INSTANCES OF NON-COMPLIANCE WITH PCAOB STANDARDS OR RULES(その他の指摘事項)
    上記Aでは監査意見表明の基礎となる監査証拠があるかどうか厳しくチェックされますが、本項目BではPCAOB基準に準拠していないその他の事例についての指摘事項が記載されます。

  • PART I.C: INDEPENDENCE(独立性に関する指摘事項)
    本項目Cでは、その名前の通りですが、SEC基準やPCAOB基準の独立性に抵触する事例がないかどうか記載されます。
    監査人は独立した第三者としての立場で監査をする以上、監査全般に渡る独立性の維持は非常に重要です。特に(グローバル・ネットワークファームを含む)新メンバーや各種専門家が監査チームに関与する場合には、極めて慎重に対応する必要があります。

  • PART II: OBSERVATIONS RELATED TO QUALITY CONTROL
    監査法人(監査ファーム)全体の品質管理システムについての検査が評価されます。検査結果は検査報告書(Inspection report)の発行時には公開されず、報告書発行後12か月以内に十分な対応がなされない場合に公表されます。

まとめ

以上、米国PCAOB検査について述べましたがこれは2024年の現時点までの内容になります。PCAOBは、これから行われるであろう新しい取引や直近で重大な問題となった事例に対応すべく、常に新しい視点で検査を行います。

従って、PCAOBの最新の動向については専門チームが常にチェックをしていかなければ完璧な対応は難しいでしょう。また、その最新のPCAOB検査の動向をもとに、(管理職のみならず)現場スタッフ一人一人が毎日毎日PCAOB検査に耐えうる深度ある監査手続を(計画)実施できているかどうか、また、それを過不足なく調書化出来ているかどうか意識することが求められます。


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