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2.フリーランスになるのは簡単だ【カイケイシタイヨウ 第1章起業編】


:前回までのあらすじ:


異業種交流会で高校時代の先輩タイヨウと再会した僕(大谷)。
タイヨウにいろいろな人を紹介してもらう。
後日、タイヨウから独立起業に関する話を聞く約束をする。

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(ここからつづき)



平日の夕方。
時間有給を使って、
いつもより2時間ほど会社を早く退社した僕は、
タイヨウから指定された品川のきれいなビルの
1階にあるカフェに到着した。


そこまで混雑していないが、
勉強している学生、
お茶をしている女性たちや
商談をしてそうに見えるビジネスマンなどが
ちらほらいて、
ほどよいにぎやかさを感じる。



たまたま空いていた奥の一角の席をとり、
カフェラテを注文していると、
タイヨウがやってきた。

ジーンズに長袖シャツと
カジュアルなように見えるが、
ジャケットを羽織るだけでおしゃれさと
さわやかさ、気品を感じる。
できる男って感じだ。


「おお、はやいね、待たせたかな?」

「いえ、ちょうど今きたところです。」

「そうか、ちょっとコーヒー買ってくるよ。」

「はい、いってらっしゃい。」


そんな当たり障りのない自然な会話で
始まったのだが、
今日は忙しいタイヨウの時間をもらったのだから、
しっかり話を聞かねば、と緊張していた。


そんな僕の心境を察したのか、
タイヨウはコーヒーを買ってきて座るなり、
昔話や共通の知人の話などをしはじめて、
場を和ませてくれた。

そんな矢先、またもいきなり直球が飛んできた。


「ところで、
大谷は起業したら、
どうなりたいとかあるの?」


「え??
いきなりびっくりした、
相変わらず直球ですね。」


僕は、いきなりの質問にとまどい、
誤魔化すような返事をしてしまった。


本当はきちんと考えないと
と思っていたけど、
忙しさを理由にずっと先送りにしていた
ことを直球で聞かれ、
内心焦ってしまったのだ。


「ははは、そうか。
いきなりごめん。
なんとなく大谷がこれからつくりだして
いきたい世界みたいなものを
知りたくなってさ。」


「はあ、そうですね・・・。
おはずかしながら、
実はまだ明確になっていなくて。
なんだかパッと浮かばないんですよね。」


「そうかそうか。
まあいいさ、またあらためて教えてよ。
脳って面白くってさ、
潜在意識の中で問いに対する答えを
みつけようとするんだって。
だから、
忘れててもある日突然思い出したり、
急に答えが浮かんだりすることが
あるだそうだよ。」


「へぇ、そうなんですね。
タイヨウさん、
脳のことも詳しいんですか?」


「うん、
詳しいというほどではないけどさ、
興味があるからいろいろ勉強しているんだ。」


「すごいですね、
会計士っていいう難関資格を持っているのに、
さらに他の分野の勉強までするなんて!」


そんなことを言って
この話題は終わっていった。


しかし僕はその時とてもモヤモヤしていた。
なんとなく、
WEB周りの仕事で起業しようかなとは
思っていたけど、
本当にやりたいことや目的を
見出せていないことに対する、
自分への苛立ちのようなものを
タイヨウに見透かされたように感じたのだ。


そんな半端なやつが起業するんだ
なんてタイヨウが知ったら、
笑われて軽蔑されてしまうかもしれない
と思うと、
どこか焦りのような不安な気持ちが湧いてきた。



そんな僕のことを気にすることもなく、
タイヨウは話題を変えてくれた。
自分の不安な気持ちを味わう時間もない状況に、
どことなくホッとした。


「そうそう。
今日は起業の準備の話をしようって
言ってたんだったね。
よし、
ではまず、
大谷はフリーランスのように個人事業主
として独立するのかな?
それとも会社を設立するつもりなの?」


「会社設立!?
いや、そんな、社長になるってことですよね・・・。
そこまでは考えてなかったです。
会社設立はちょっと早いかな・・・、
まずはフリーランスで独立してみようと
考えてました。」


「そうか、じゃあ個人事業主なんだね。
それなら会社を作るよりもはるかに簡単に
独立できるよ。」

「え!そうなんですか?」


僕は、興奮気味に反応した。
さっきの不安感はどこかに飛んでいっていた。
切り替えの早いところは我ながら長所だな。


「うん。
もちろんそこにいたるまでにいろんな準備は
必要になるけどね。
一旦その話は後回しにすると、
個人事業主になるにはね、
税務署に書類を提出すれば完了するんだよ。
その基本の書類は
「開業届」と「青色申告承認申請書」
の2つだよ。」


「え!そうなんですか。
あれ?登記とかいらないんですか?」


「会社のような法人ではないから、
法務局に行って登記する必要はないんだ。」


「そうなんですね、全然知りませんでした!
お金を納めたりすることもないんですか?」

「うん、開業の時点ではね。」

僕は急ぎメモ帳を取り出し、メモし始めた。
そうなんだーーー。

(つづく)

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