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不適切な注意ひきや「みてみて」への対応のコツ(後編) 〜 『平和な時こそ花束を』〜 【ABAで発達支援】

こんにちは。公認心理師・臨床心理士の江原です。

この後編では,前編で解説した「問題行動が起きていない時=注意引きなどをしていない時」に,実際どのように関わると良いのかについてを解説してみたいと思います。

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本記事は不適切 or 過剰な注意ひきに対する『平和な時こそ花束を』作戦の解説 後編 となります。最も重要なポイントは前編で解説していますので,ご覧になっていない方はまずは前編↓から御覧ください。

不適切な注意ひきや「みてみて」への対応のコツ(前編) 〜 『平和な時こそ花束を』〜 【ABAで発達支援】

ハグする男の子と母

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それでは,後編の内容をみていきましょう。

実際の関わり方の例 : 「ネガティブではない」関わりを目指す

お子さんと関わりましょうと言われると,人によっては「褒めたり、抱きしめたりしないといけないんでしょ?」とお思いになるかもしれませんが、必ずしもそこを目指す必要はありません。

一言で注意点をまとめるとすれば、

「叱り・嫌味・注意・指示【ではない】関わり」

を目指していただければと思います。以下に、どんなものなら良くてどんなものは避けていただきたいかを整理してみます。

◎:「その番組面白いよね」、「(やっているゲームについて)すごいねー!」、(ハグ)、(くすぐり)etc...

:「靴下片付けなさい」「その集中力で○○してくれたらいいのにね」「いつまでやってるの?!」etc...


言葉で話そうとしなくても良い

手と手


上の◎の内容の後半を見ていただいてもわかる通り、必ずしも「言葉かけ」である必要はありません
例えば洗濯物を取りに行く途中、お子さんの横を通りすがりに一瞬頭をなでていくのでも良いですし、洗い物の途中で振り向いて、お子さんに笑顔を向けたり変顔で笑わせたりでもいいのです。

このような何気ない関わりを【問題行動が起こってない時】に意識的に増やしつつ,同時に問題行動自体への反応は減らす(計画的無視)ことで、無視だけを行う時よりも抵抗が少なく状況を改善していくことができます(ゼロにはなりませんが…)。

そういう意味では、計画的無視などに取り組むより先に、まずはこの『平和な時こそ花束を作戦』を導入するのも良いでしょう。その上で、問題行動に対する計画的無視と、『こっちの水は甘いぞ作戦』を組み合わせていくのが良いのではないかと思います。
(※問題行動自体への対応の詳細についてはこちらの記事をご参照ください)

その他のポイント

その他,関わり方についての主なポイントを以下に3つ,要点だけ整理しておきます。すべてのポイントは紹介しきれませんので、紹介しきれなかった分はまた別の機会にそれぞれ記事にしたいと思います。

【 褒めようと思いすぎない 】
繰り返しになりますが、無理に褒めようとする必要はありません。保護者の多くは、「褒めなきゃ」と思うことで逆にうまく褒められなくなりかつ、うまくできないことで自己嫌悪になったりして更に褒める余裕を失うという悪循環に入りかねません。

もちろん、素直に褒めたりハグしたりも出来るぞ、と思える場合はそれに越したことはありませんのでぜひやってあげていただけたらと思います。

【 返事を期待しない or なるべく疑問形にしない 】
これは特に年齢が上がるほど重要になるポイント。コミュニケーションをとらなきゃと思って「今日のお夕飯何が良い?」などの疑問系にすると、無視されたり「わかんない」などの返事にイラつかされるといったことが起こりがちです。

 そのため、「平和なときこそ花束を」作戦としての関わりにおいては、なるべく曖昧な疑問形での声掛けばかりにならないようにします(例えば「今日学校どうだった?」ではなく「疲れた顔してるね。お疲れ様」など)。

 まずは、こちらの感想・独り言に近いようなものを投げかけるだけにするとやりやすいかと思います。どうしても疑問形にする時も、返事は最初から期待せず,「今はこちらから投げかけている段階だ」と捉えておくと少し冷静でいられるかもしれません。

 
そうして徐々に、それまでの「お父さん・お母さんは口を開くといつも注意か小言」という風になりがちな【イメージを崩していく】ことが重要です。

【 褒めるときは①根拠を具体的に、②アイ・メッセージで 】
これまた年齢が上がると顕著ですが、大人側が褒めようと無理して「偉いね」「すごいね」と言ってみた時、「こんなの全然すごくないし」などといった反応が子供から返ってくることがあります。

これ、言われると結構イラッとしたり返事に困りますよね。
そんな時にこちらが言葉に詰まってしまわないために重要なのが、褒める時は①具体的な根拠を持つことと、②アイ・メッセージで伝えることです。

アイ・メッセージというのは、「私は〜だと思うよ」という伝え方のことで、アイメッセージのアイは英語の"I(=私)"を意味しています。つまり、「客観的にそれがすごいかどうかはおいておいて私はすごいと思ったよ」ということを伝える方法になります。これであれば、客観的にすごいかどうかはひとまず関係なくなるので、反論があっても負けずに褒めを伝えることができます。

 また、根拠を具体的にするという点については、例えばただ「優しいね」ではなく、「自分も〜なのに○○してあげれるなんて、優しいね。」などのように理由を明確にするということです。もちろん,必ずしも毎回,そうした「理由」まで伝える必要はありません。ただし,上のようなツッコミが入った時にはアイ・メッセージとともに根拠が示せるようにしておけると、こちらも慌てませんし本人への伝わり度合いもブレずに済みます。

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まとめ

 以上、前編後編を通じ『平和な時こそ花束を』作戦のご紹介をしてきました。まだまだこれについてご紹介したいポイントやコツは沢山あるのですが、際限なく長くなりそうなのでこのあたりで止めておきます。

最後にもう一度,今回の要点2つ(前・後編まとめて)を以下に整理しておきます。

「問題行動が起こっているときにどう対応するかよりも、【①問題行動が起こっていない時】に【②こちらから】関わりに行くことが重要」

関わる際は「叱り・嫌味・注意【ではない】関わり】を目指していただき、必ずしも褒めなきゃと気にしすぎる必要はありません。


ご質問はお気軽に

 今回のテーマについて,なにかご質問等ございましたらコメント、DM等にてお知らせください。個別にお答えしきれるかはわかりませんが、何らかの形でお答えができるようにしたいと思います。

なお,当noteでは今後も,ABAを中心とした発達支援を最小限の専門用語で解説していく予定です。ご興味あればフォロー等お願いします。もちろん,「こういう内容について扱ってほしい!」なども大歓迎です!

それでは,今回は以上です。
また,次のテーマをお楽しみに!


【今回のABA・心理学キーワード】

※今回のお話に関連する専門的な用語を以下にご紹介しておきます。ご興味のある方は調べてみていただければと思います。

・確立操作
・動員低減
(・計画的無視)
(・代替行動強化)

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