ハグする男の子と母

不適切な注意ひきや「みてみて」への対応のコツ(前編): 〜 『平和な時こそ花束を』作戦〜 【ABAで発達支援】

こんにちは。公認心理師・臨床心理士の江原です。

先日のTwitterやnote記事では、【計画的無視を使う時に重要なコツは,「どんな振舞いならOKか」もセットで示すこと】という「こっちの水は甘いぞ作戦」についてご説明しました。

 今回は特に,「かまってかまって系」の行動(注意引き等)への対応に関する重要なポイントについてお話ししてみたいと思います。
長くなるので,前編ではまず関わりのタイミングについてを,後編では実際に関わる上でのポイントについてを説明していきます。

それでは,内容を見ていきましょう。

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その名も、『平和な時こそ花束を』作戦

 今回の要点を一言で言えば、「不適切な方法で「かまってかまって」となっている時に沢山関わるよりも、【①問題行動を起こしてない時】に【②こちらから】関わりに行くのが実は効果的」ですよと言うお話。

「こちらから」か否かによる違いは大きい

 中でも、今回特に重要なポイントが【②こちらから】という点です。こちらからの関わりか否かは、その後に雲泥の差をもたらします。その差をイメージするため、まずは夫婦関係に関する例で考えてみましょう。

例えば以下の2つのパターンでは,どちらの方がより長期的な安心感や信頼感などにつながりそうでしょうか。

①夫婦喧嘩をする度に、翌日相手が仲直りのプレゼントを買ってきてくれる
②毎回,意識していないタイミングで突然プレゼントを買ってきてくれる

おそらく多くの場合後者(②)の方が,長期的な安心感や信頼感につながると感じられると思います。それは後者の方が「やらせた感」ではなく自発性を感じるからです。

そしてその自発性(こちらから感)を演出するのに重要なのが、「問題行動が起こっていない時に関わる」というポイントなわけです。

場面例:「どうせ僕のこと嫌いなんだ!」

では、実際に親子関係の場面で具体例を考えてみましょう。

例えばお子さんが「どうせ僕のこと嫌いなんだ!」と言ってくるとします。最初はもちろん、諸々の返事を返したりハグしたりなどして大切に思っていることを伝えるかもしれません。

それでそれ以降問題なしなら良いのですが、一部は、同じようなことを繰り返し,例えば四六時中同じようにこちらの気をひくようになったり、ちょっとでも側を離れたり他の兄弟姉妹の相手をすると激しく怒る・暴れるといったようになってしまう場合もあります。

加えて、疲労などによりこちらの答えが前より淡白だったり,うまく答えられないと「やっぱり僕のこと嫌いなんだ!」と,激しいパニックになるなんてことも珍しくはありません。

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問題行動が起こっていないときに注目してみよう

 このように何か問題行動や過度な注意引きに困った時に私たちは、「こういう時どう対応したら良いの?」ということをまず考えがちです。
しかし、実は保護者が疲弊しきってしまうようなケースの場合、既に問題行動自体への対応については劇的に効果があるような対応法はほとんど残っていないことも多いです。

 そこで、反対に【問題行動が起こっていない時】について考えてみましょう。例えばお子さんが自分で遊んだりしている間,みなさんはどう対応(行動?)されているでしょうか。

 おそらく、執拗 or 過剰な注意引きやイタズラに疲れた保護者であればあるほど、折角の平和な時間で溜まっている家事や、やらなきゃいけない諸々を処理したり束の間休んだりしようとするでしょう。
そんな中でもし、「敢えてその時間の一部で良いのでお子さんに関わりにいきましょう」と言われたら、そりゃあたまったものではないですよね。

「かまってアピールをしたほうが得策」な状況になっていないか?

 しかし、この状況を子どもの側から見てみるとどうなるでしょう?
残念ながら「自分からアピールした時はかまってくれるけど,それ以外の場面ではあまり相手にされない,もしくはアピールした時のほうがより丁寧にかまってくれる」といった風に映ってしまう可能性があります。
そうなると,子どもとしては、なるべくいたずら等で「かまってアピール」をしたほうが得な状況になっているということになりますよね。

 よって、長期的な意味で今のその状況を良くしていく上では,果てしない「かまってかまって」自体への対応を丁寧にしたり長くしたりするのはむしろ逆効果にもなりかねません。

 したがって,敢えて問題が起きていない時にこちらから少しずつ関わりにいくことで、子どもをより安定した安心感が包みその後注意引きを繰り返したくなるような欲求自体を下げてくれることが期待されます。

よくある不安: 「愛情不足になったりしないのか?」

なお、中には「子どもがかまってと求めている時に応じないのはかわいそう」もしくは「愛情不足になってしまうのではないか」と心配される方もいらっしゃるかもしれません。

ごもっともなご心配ですが、基本的にはそこは大丈夫だと私は考えています。なぜなら今回の方法は,「かまって」となった時にそれへの反応として伝えている愛情や想いを、それ以外の場面にそのまま割り振って伝えているだけだからです。

イメージとしては、子どもとの触れ合いの時間全体は減らさずに,ただ伝えるタイミングを工夫することで、「言われたからやった感」を出さないようにしていると考えていただくと良いかもしれません。

前編まとめ

以上、前編では、【問題行動が起こっていない時に関わることがなぜ大事か】という点についてをまずはご説明しました。
続く後編では、「じゃぁ実際どういう風に関わったらいいの?」という点について解説してみたいと思います。

なお、後編でご説明する実際の関わり方について要点だけお示ししておくと、問題行動が起こっていない時の関わりは「叱り・嫌味・注意【ではない】関わり】を増やす」ことを目指していただき、必ずしも「褒めなきゃ!」と気にしすぎる必要はありません。
その具体的な内容を後編でご説明致します。

後編記事は↓から

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不適切な注意ひきや「みてみて」への対応のコツ(後編) : 『平和な時こそ花束を』作戦 【ABAで発達支援】


 なにかご質問等ございましたらコメント、DM等にてお知らせください。個別にお答えしきれるかはわかりませんが、優先的に記事化するなど,何らかの形でお答えができるようにしたいと思います。

当noteでは今後も,ABAを中心とした発達支援のコツを最小限の専門用語で解説していく予定です。ご興味あればフォロー等お願いします。もちろん,「こういう内容について扱ってほしい!」なども大歓迎です!

それではまた後編でお会いしましょう!


【今回のABA・心理学キーワード】

※今回のお話に関連する専門的な用語を以下にご紹介しておきます。

・確立操作
・動員低減
(・計画的無視)
(・代替行動強化)

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