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【相談事例】小1の息子が知らない人にもスリスリしてしまう【ABAで発達支援】

こんにちは。公認心理師・臨床心理士の江原です。
今回は,Twitter上で保護者の方から寄せられたご質問への回答を記事としてご紹介致します。


 実際のご質問は以下の通りです。こちらのつぶやきの内容についてのコメント依頼をDMにていただきましたので,こちらで回答させていただきます。
(なお,記事としてお答えすることについてはご本人より許可をいただいて掲載させていただいております。)

以下,私からの回答となります。同じような悩みを抱える他の保護者の方にとっても何かお役にたてば幸いです。


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この度はお声掛けありがとうございます。お返事とっても遅くなり申し訳ありません。
 確かに,お子さんのスリスリは家族や親しい人にとっては可愛いものながら、年齢が大きくなっていくと徐々に心配になる部分ですよね。もう既に解決済みかもしれませんが,今後似たようなことがあった場合にもお役に立てばという願いも込めて,主に基本的な解決策の考え方について私からもコメントさせていただきますね。

【伝え方・教え方】

画像1

 とりあえず,伝え方(教え方?)については,Twitterでの皆様の返信がどれも素敵だと感じたので,まいさんの腑に落ちたものから試してみていただければと思います。
 むしろ、私のようなABAの人間は、どう伝えるか以上に、その後実際のところどう反応(行動)しているかの方の話を,どちらかと言うと重視しています。

 一応,Twitterをご覧になっていない方のために私の方でも一例を挙げておきますね。
 基本的には「こうされるともっと嬉しいなぁ」,「スリスリしちゃうとびっくりする人もいるから〜すると良いよ」など、ごく普通な伝え方で最悪大丈夫かなと個人的には思っています。注意点があるとすれば、なるべく否定形にしないということでしょうか。

 その他だと、これもどなたかの例にありましたが、「50cm以上離れる」とか「手を伸ばして当たらないように」などの具体的な数字や目安を入れるというのも良い工夫だと思います。


【一律NGか、家族はOKか」】

 ちなみに、スリスリを「一律NG」にするか「家族だけはOK」にするかについては,お子さんがやれそうであれば後者でも構いません。難しそうなら前者で統一するなど,基本的にはお子さんに合わせる形で良いかと思います。
 ただし,確かに後者のようなTPOに合わせる方針については,若干教えるのが難しい場合はあります(ただし,ASDだからできないとは言い切れないかと思います)。よって、そういう意味でもできそうかどうかに合わせてご検討いただければと思います。


対応を考える基本的な考え方

 最終的にどういう伝え方をするにせよ、実際に教えていく上では『OKな関わり方を伸ばし、不適切なスリスリはなるべく減らしていく』ことが基本方針になると思います。そうなると「どういう関わり方を伸ばして、不適切なものについてはどう対応すべきか」についても考える必要があるので,以下では主にその考え方についてご説明させてください。

ルービックキューブ


まず、対応を考えていく上での基本的な考え方から整理していきましょう。
具体的に対応を考える上で特に検討すべきこととしては以下の通りです。
①今のスリスリで本人は何を得ているか。
②それを得られる他の方法はないか

それぞれの具体的な内容についてみていきます。


【①今のスリスリで本人は何を得ているか】

 既にまいさんの中で検討はついていると思われますが,とても大切な部分なので一応改めて整理させてください。息子さんはスリスリすることで主に何を得ているのでしょうか?

 例えば、スリスリした時の感触や匂いなどかもしれませんし、相手のリアクションや,かまってもらうことかもしれません。この見立てに基づいて次の②を考えるので,ここを正確に捉えることが対応の成否を分ける最初の分かれ道となります。
逆に言えば、色々工夫してもうまくいかない時、この見立てが間違っているという可能性も検討すると良いでしょう。

 なお,考え方のヒントとしては,スリスリをやる相手やする部位,どんな時にはしてどんな時にはしないかなどを整理していただくと,なにかヒントが得られるかもしれません。また、スリスリの途中で怒り出したりしたことがあれば,何をされて怒ったかなどもヒントになるかと思います。なぜなら、得たいものが得られずに怒った可能性があるので。


【②それを得られる他の方法はないか】

 次は,①で推測したものと同じような結果が得られる,モアベターな方法を考えます。ここで重要なのは,まずは「モアベター(まだマシ)」を目指すのであって,「ベスト(こうあるべき)」を目指すのではない,ということです。
 なお,今まで得られていたものに近い,もしくはそれに勝る喜びを得られるものであればあるほど成功率は上がります

 例えば,スリスリがかまってもらう手段,甘えたコミュニケーションを始める手段になっているのであれば,肩をとんとんするとか,見つけた花や小石を見せて注意を引く等々が考えられるかもしれません。ちなみに,ベストとモアベターの違いで言うと,肩をとんとん(ベスト)では本人にとって物足りない場合,肩をトントンした後に指で相手の頬を突っつくイタズラなどをモアベターな行動として一旦経由するのも良いかも知れませんね。


【①,②に基づいて実践】


ここまでで、スリスリの代わりにどうして欲しいかが見えてくると思いますので、後は実践です。大枠として使う原則は,以前私が記事化している「こっちの水は甘いぞ作戦」です。
(参照:「こっちの水は甘いぞ作戦」に関する記事)
https://note.mu/cp_ehara/n/n1b00f83de467

 まずはスリスリに対しては、①で推測した「本人が得ているもの(例:感触、周囲の反応など)」を与えないようにします。
 例えばスリスリがコミュニケーションのきっかけになっているのであれば,スリスリされてる時にはむしろあまり相手にせず,代わりにそれ以外の時にこちらからかまいに行くようにするなどが考えられます。
 なお,スリスリの感触や匂いなどがご褒美になっている場合には,完全にゼロにするのは難しいので,なるべく早く離れたり②で考えた代わりになるものに誘導します。


 次に,②で考えたモアベターな行動(例:肩をトントン、肌触りの良いぬいぐるみや親の服のお古,など)については,それができるように促しつつ,できたらいいことが起こるようにします

 よって例えば,スリスリの時の相手の反応が重要な場合には,スリスリの時は相手にしないけど,肩をとんとんしてきた時にはなるべくかまってあげたり,「お兄さんになったね!」と言いつつハイタッチ,なんてのもありかもしれません。
 感触や匂いについては,こちらの対応でどうにかするのは難しいので,いろいろなものを試しながら,本人の気に入るものが見つかるまで色々試してみるしかない,というのが実際かもしれません。なお,スリスリが実際に減ってくるまでには時間がかかるので,途中経過としてはスリスリされた時にはなるべくその代わりのものが与えられるようにし,「スリスリして怒られたり冷たくあしらわれるよりこちらのほうが良いな」と思えるようにちょっとずつ促すという流れになります。

【まとめ】

私からのコメントは以上となります。

つい,「どう伝えたらわかってくれるんだろう?」という部分が気になってしまいがちなのですが,息子さんの年齢や状態を推測するに,やはり【伝え方以上にその後の実際の対応(行動)】が最終的には重要となる可能性が高いかと思います。


「何度言ってもよくならない」という例の多くは,「○○はいけない、△△は良い」ということを色々な言葉で伝えてみるものの、実際には「○○」の時に反応してしまったりしている、ということが起こりがちです。そうなると、「そうは言っても結局○○が一番だよね」という状況になってしまうのでそれはずっと続いてしまいかねないのです。

 そのため,今回のコツやこれまでの私の記事などもご活用いただきならが「どう伝えるか」以外の「実際,どう対応するか」についてもご検討いただければと思います。


最後に、更に具体的にどうするかについては、実際に上記の①,②の検討結果などをお伺いして考える必要があります。そのため、上記の内容では具体的な対応までたどり着けない場合や,やってみたけど上手くいかない,といった場合には,その経過をお教えいただければ改めて一緒に考えさせていただきますので、お知らせください。

もちろん,今回の回答が的外れで求めていたものとは違う,という場合にもお気軽にご指摘ください。

 この度は,お声掛けいただき誠にありがとうございました。
なにか少しでもお役に立つ部分があると良いのですが・・・。

引き続き何かございましたらどうぞよろしくお願いいたします!


【今回のABAキーワード】

代替行動強化,強化子の選定,機能分析,計画的無視


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