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マーケティングニュースまとめ Vol.35:「Instagramで年齢登録必須に」など

日本

未来のアパレルではマーケティングが消滅する?

少し前にこのnoteでもご紹介したSheinという中国のアパレル企業のビジネスモデルから、将来のアパレル産業の見通しを立てている記事です。
Sheinについては、記事の要約から直接以下に引用させていただきます。

・中国本土の広州など、工場、素材、付属供給業者の産業集積地区(産業クラスター)に生産拠点をかまえ、素材や付属などに困ることはない
・物流はFedExなどクーリエを活用、世界中の目的地に48時間以内に到着させている
・企画においては、人の「思う」、「感じる」を徹底排除し、自社の顧客の購買動向、いわゆるビッグデータを活用している
・SNSなどを使い、世界中のZ世代を中心にプロモーションを行っている
・バリューチェーンは、工場とウエブ(小売)のダイレクトトゥーコンスーマ、いわゆるD2Cであり、日本の長く複雑なサプライチェーンと比較して比べものにならないほどシンプルである

この記事では「マーケティングが消滅する」と仰々しい書き方になっていますが、ここで消滅するのは狭義のマーケティングだと思います。つまり、売上の傾向をから大きいマーケットを切り分けて商品計画を立てる旧来の手法から、ユーザー個人個人にフォーカスをあて高度なパーソナライズを行う流行りの手法に取って代わっているそうです。
アパレル業界に明るいわけではないのでどこまで業界構造が変わるのか判断できません。ただし、ブランド価値や品質の良さに対する嗜好が一朝一夕で変わるとは考えづらく、そことの兼ね合いはビジネスモデルが変わってもしばらくは重要な要素になるのではないかと思います。
s.a

LGBTQ+調査からわかるマジョリティーの無関心さ

電通報に掲載されている記事で、電通が行った「LGBTQ+調査2020」にある、ストレート層のクラスター分析に基づいて識者がディスカッションしています。ストレート層つまり、社会的にはマジョリティーとされる人々がLGBTQ+に対してどのような態度をとっているのか、定量的に把握できるだけでも興味深いです。
LGBTQ+に関心のある人、関心のない人、批判的な人など様々ですが、現在では「知識のある他人事層」が34%で多数派になっています。記事でも論じられていますが、彼らは知識があるのに無関心なのは、「自分には関係の無いことだ」と考えているからでは無いかと思います。「自分は中立的な考えを持っている」と思い込んでいる人でも、自分の世界と関わりを持つことに対しては消極的になってしまうのが現状なのかなを考えさせられます。
それが良いかのか悪いのかはさておき、そうした態度が世の中にありふれている(加担している)ことに、マジョリティー側の人間は気づきづらいのかもしれません。
こうした状況は個人の悪意が形作っているのではなく、環境によって得てきた知識や経験の差が関係してそうです。ジェンダー論に関わらず、カテゴリー的・主観的な思考だけでなくタグ的・メタ的な思考へ拡大することこそがこうしたわだかまりをほぐす鍵になるのではないかと思います。広告業界の責任もより大きくなりそうですね。
s.a

Instagramが年齢未登録のユーザーを利用停止の方針

タイトルの通り、Instagramが年齢登録を必須にしていく方針のようです。
その理由としては未成年者の保護で、成年者が彼らにDMをすることも禁止になるようです。はじめは自己申告に頼るそうですが、AIで「怪しい」と判定されたアカウントに関しては年齢確認を促したり、未成年者と関わることができないようにして形にしてオペレーションの負荷を減らしていくようです。小耳にはさんだ話で確かめているわけではないですが、最近の若年層はLINEでなくInstagramのDMで友達とやりとりする人も増えているそうなので、日本でも危険の芽を積んでくれる形になります。
未成年者の保護はさておき、これでInstagramもFacebookにより近い精度の高いユーザー情報を獲得できるようになりそうです。
s.a

海外

韓国がAppleやGoogleの手数料強制を制限する世界初の法案を承認

最近Appleの手数料に対する訴訟について、和解したニュースが話題になっていましたが、それにも関連するニュースです。そちらのニュースでは他の決済手段を通知しやすくなったにとどまり、Appleの実質的な勝利という見方をするメディアもあったそうです。
こちらのニュースでは、AppleやGoogleがアプリ開発者に支払いシステムを利用するように強制したり、支払いシステムを利用しないことによる報復行為を禁止する内容の法案が韓国で承認されたとのことです。彼らの独占的なビジネスモデルに対する政治的圧力がかかった結果と言えそうですね。
こうした内容の法案が承認されたのは世界初だそうです。この動きがうまく機能した場合は、今後他の国でも似たような働きかけが行われる可能性もあるのではないでしょうか。
s.a

アンチインフルエンサー

JCペニー(JCPenney)の新しいパートナーで、ビューティeコマースのスタートアップであるサーティーンルーン(Thirteen Lune)という会社は、インフルエンサープロモーションを実行しているが、全て無償で実行しているという。
サーティーンルーンが独自につくったバンガードという、ファンコミュニティーを形成しており、オンラインにて無償でサーティーンルーンを支持している。(そのメンバーは非常に豪華であり、女優のセルマ・ブレアやナオミ・ワッツ、メイクアップアーティストのケイティ・ジェーン・ヒューズやモニカ・ブランダーのほか、モデル、テックエクゼクティブ、ブランド創業者などが名を連ねている。)そのほとんどが、サーティーンルーンへの投資家となるそうだが、そうではない、単純なファンもいるとのこと。そういったファンから無償で投稿してもらい、結果的にインフルエンサーマーケになる、みたいな仕組み。インフルエンサーマーケのみではなく、テストマーケとしても活用できる。単純な対価を払うのではなく、ブランドへの文脈的なメリットから、行動や感情を支払うというマーケットのあり方は今後も重要視されそうな予感。
k.t

アスリートのメンタルヘルスをサポートする、SweetGreenの展開

女子テニスの大坂なおみ、アメリカ女子体操選手のシモーネバイルズなど、近年アスリートのメンタルヘルスを高らかに訴え、スポーツビジネスの根底的な問題を指摘するスポーツ選手たち注目されつつある。サラダを中心とした、ファストカジュアルレストランチェーンである、SweetGreen社は、初のナショナルアスリートアンバサダーに就任した大坂選手が、メンタルヘルスの問題で一時的に競技から退いた後も、大坂選手をサポートし続けてきた。(全仏オープンの出場を辞退した後も、スポンサー契約を切ることがなかった。)そして、USオープンへの参加決定と並走する形で、新たなキャンペーンを展開。心と体に焦点を当てたウェルネスへのホリスティックなアプローチを強調するSweetgreenのブランドアイデンティと、大坂なおみの問題意識をマッチさせた広告となっている。もはや自社製品のアピールとして機能するのではなく、誰かの主張を後押しする形での広告として機能している。そんな自分たちを主語としないプロモーションがこれからは当たり前になるのだろうか。
k.t

Spotifyの再生トレンドが、株価予想に使える?

金融市場における株価は、大方合理的な計算に基づいて動いていると言われている。が、しかし、完璧な数理モデルがいまだに出現しないわけで、どうしても人間の複雑な感情面の影響が、我々では予測もしない結果へと導いていくといった歴史を何度も繰り返してきている。そんな予測できないモデル問題に対して、風穴を開けそうなのが、なんとSpotifyである。
Spotifyは、国全体のリスニングデータを集約して提供するとともに、各楽曲のポジティブさやネガティブさを分類するアルゴリズムを提供している。このデータを活用し、国全体の今の感情的なデータを算出し、株価予想に活用するというのだ。(音楽のセンチメント=感情数値が高いほど、同じ週のある国の株式市場のリターンが高くなる結果がでたらしい。)
消費者信頼度、GDP成長率、失業率、コロナウイルスの感染者数や死亡者数など、多くの自然指標が、株価に影響を与えるというファクトはだいぶ前から言われていることではあるが、その指標を音楽から抽出するとは見事。株価だけではなく、世の中のトレンドをマーケティング調査する際に、雰囲気を掴むため、音楽からリサーチをかけるなんてこともありえるのかもしれない。
k.t