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悩めるコンサル1年目の気持ちの持ちよう

コンサル1年目で成果が出ずに毎日悩んでいるなら、多分やるべきはビジネススキルの向上じゃない。まずは自分の気持ちを楽にするためのアクションをとり続けることだ。

この記事の位置づけ

もしコンサルタントの基礎スキルや心得を知りたければ、書店には元コンサルタントの書いたビジネス書が大量に並んでいる。日々の業務を通じてスキルアップを実感し、それが周りからも認められて、さらにできることが増える…という好循環に乗って人には、それらの本の助言は、さらにうまく仕事を進めるうえで役に立つ。

しかし、コンサルタントという仕事を始めて1年目に悪循環に陥り困っている人には、ちょっと違う角度からのアドバイスが必要だと感じている。悪循環とは、具体的には以下のような状態だ。

チームの中で、どうもうまく動けない→こんなこともできないのか、と自分を責める気持ちが強まり、よりケアレスミスが増える→次第に信頼を失い、チームの中にも居づらくなる→マネージャーにマイクロマネジメント(業務への過干渉)をされ、さらにミスが増える→…

僕も1年目に苦労したが、マネージャーとなって以降、その時の自分と同じような悩み方をしている新入社員が案外多いことに気付いた。特に最近はリモートワークが増えチーム内のコミュニケーションを以前ほど取れる状況ではないため、一度悪循環に入るとなかなか抜け出せないケースもあるようだ。

対象読者

1年目で成果が出ずに悩んでいる、次のように真面目すぎる面のある方
・ 自分は着実に物事を進めるのは得意だが自己アピールするのは苦手だ
・ 成長のために、自分のできていないところばかり振り返っている
・ 自分はもっとうまくやれるはずなのに、うまくいってない自覚がある
・ 自分の評価が気になっており、このままのパフォーマンスだと首になるかも、と思っている

苦い経験談

僕もコンサル1年目の時に悪循環に入り、大変つらい思いをしたことがある。あるプロジェクトで、チーム内で「できないやつ」とみなされる状況になった。そうなったら、私に対するマネージャーからの信用がさらに低下するのに、そう時間はかからなかった。マネージャーは数十分おきに私の作業進捗を確認するようになり、そのプレッシャーで私の動きはさらに悪くなる…という悪循環に陥ってしまった。

時は過ぎ…マネージャーの立場から悪戦苦闘している新入社員と話す中で感じたのは、このような悪循環に落ち込むのはレアケースではないということだ。そして、悪循環にはまりやすい動き方・思考のクセというものがあり、それがまさに、この記事の対象読者として挙げた性質だ。

悪循環から抜け出すために

悪循環から抜け出すために必要なことは、自分自身の心の状態をポジティブに保つこと、そのためにも周囲からの自分の評価を上げること、この2つだ。そしてそれを実現するために、具体的には次の3つの視点を持ちながら行動するとよいと思う。

1. 自信があるように振る舞う
2. 自分を責めない
3. 自分が活躍しやすい環境を自分で作る
4. 悩んでいるのは自分だけじゃないと知る

1. 自信があるように振る舞う

人は、自信を持った人間のことを信じる。たとえ言っていることが間違っていても。

1-1. ポジションを取って言い切る

ポジションを取ることは非常に重要だ。実際に正しいことを言っているかどうかではなく、自信満々に主張できているかどうかで、自分の主張内容、また自分自身のパフォーマンスはしばしば判断される。

あるMBAコースでは、51% の確信しかない場合でも自信をもって主張し意思決定すべき、と説いているという話を聞いた。特に元研究者などは90%確信が持てるときはしっかり意見を言えるが60%位の確信しか持てないと、ごにょごにょと分かりにくい説明をしてしまう傾向がある。

シンプルに説明できなさそうな状況であっても、まずはポジションを取って言い切り、補足事項は一呼吸おいて説明するような話し方を心がけると分かりやすくなるはずだ。

1-2. ペルソナ (職業人格)を持つ

ペルソナ(職業人格)を持つことで、生身の自分だと言われると傷つくようなことを言われてもひょうひょうと受け流すことができたり、本来の自分だったら遠慮してしまうタイミングでもストレスなく発言できたりする。

例えば、結構きつい意見を言われても、「これは○○社の●●さん(自分)に言われているご意見」と受けられるようになる。そうすると結構楽になるし、案外そのように気楽に受けとめることで、相手の発言に対して適切にリアクションすることができる。

2. 自分を責めない

悪循環から抜け出すには、自分で自分を追い詰めないことも非常に大事だ。過度なストレスがかかる環境下では、そうでないときに比べてパフォーマンスが大きく低下するためだ。

2-1. 頑張ればなんとかできる、という万能感を捨てる

全ての結果を自分の責任だと思うのがプロフェッショナルだ、という主張には私も大きくうなずく。しかし、悪循環に入ってしまっている人は、自責の念や成長しなければならないという強迫観念が強すぎるかもしれない。

プロ意識を説く本は本来責任感のない人たちに向けられたものだとでも思って、悪循環に入っている間は過度に気にしない方がいい。

自分自身の努力で今の状況を改善できる、という発想は逆説的だが万能感が強すぎる。既に「頑張れば出来てしかるべき仕事をこなせない自分はダメだ」という切羽詰まった気持ちになってしまっているのであれば、その強すぎる万能感を捨てることを、まずは意識すべきだと思う。

2-2. 性格診断を言い訳に使う

自分を一人称で責めるのではなく、自分の性格や考え方の傾向を働きかけの対象としてとらえるようになると楽になる。そのためのいい道具が性格診断だ。性格診断にはいろいろなものがあるが、例えばこんなものだ

これは自分がどういう考え方・行動をするかという質問に答えることで「あなたの性格を表す記号はこれだよ」という類型化をするものだ。誕生日などから「もしかしてこんな性格でしょ」「わー当たってるー」と言い当てる星座/動物占いとは少し毛色が違う。

僕の所属するファームでは、上記とは別の診断だが、社員全員が自分の性格タイプを知っており共通言語化されているので、チーム組成時に下のような会話がなされている。

「私はこの性格タイプで深く考える必要があるので一人の時間をとりたい。なので考えているときに話しかけられて、無視したらすみません」
「私はこの性格タイプなので、臨機応変に状況に対応するのは得意。でも逆に計画を立てられないので、サポートをしてほしい」

この会話の面白いところは、自分の性格タイプを他人にわかりやすく伝える(私のトリセツ)以上に、自分の至らなさを性格タイプという外部化された概念になすりつけているところだ。

これは、悪循環に入ったときに自分の行動を振り返る際にも大変役に立つ考え方だ。例えば、「私は今回○○できなかった。もっと反省して頑張らないと」という思考から「今回は、●●という性格タイプのせいで○○できなかった。●●っていう性格タイプはほんとに乗りこなすのが大変」という思考に切り替えることができる。

案外○○自体は、普段の落ち着いた環境下ではこなせるはずのものだったりする。そのため、悪循環に入っているときは、いかに○○をできるようになるかを考えるよりも、いかに自分のメンタルに負担をかけない思考に切り替えるか、の方が大切だ。

2-3. 自分が大事と思ったことが大事だと信じる

「自分自身が重要と思ったことが重要。抜けもれがあったらダメだなどと考えすぎず、楽観的に進めよう」という思考はとても大切だ。

どうしてもチェックリスト形式に陥りやすいひとはいる。例えば、会議の議事録をものすごくきれいに取らなければならないと思っている人。ある判断をするときに、今まで出てきたすべての論点の取り漏れがないかクライアントとのメールをすべて遡って確認する人。

でもそれは、あなたが覚えていないなら重要ではない。あなたの仕事の成果はその仕事に不備があったかどうかで判断されるのではなく、その仕事が結果的にもたらした変化によって評価されるのだ。全てを漏れなくやることではなく、物事を前に進める上で重要だと思うことに気持ちを向かわせよう。

3. 自分が活躍しやすい環境を自分で作る

3-1. 勝てるところで戦う

プロジェクトの組成時には、において有利なポジションを取り、有利になる戦い方をする (評価されるワークストリームを取る)。

そのチームの環境では活躍するのが難しいと思ったら、思い切ってチームを変える。コンサルはこれができるのがいいところ。外資系企業であれば人事チームと面談し”We have bad chemistry”だから、あの人とは一緒にやれないとか、あの環境では活躍できない、と理由付きで主張できればたいてい意図を汲んでもらえる。

3-2. メンターを見つける

何かをしたいときに支えてもらえるように。本当に弱ったときにアドバイスをくれる人がいるのは大事。コロナ下で難しい状況だからこそ、社内で1on1を依頼したり、社内の仕組みを利用してメンターを見つけるようにしよう。メンターは同世代よりも役職が自分より数レイヤー上の人のほうがいい。

4. 悩んでいるのは自分だけじゃないと知る

最後になるが、コンサルティングファームに意気揚々と入社したものの、思うように成果が出ずに焦っているのは自分だけではない、ということを知り、気持ちを楽に持とう。

コンサルティングファームの先輩たちも、うまくいかなかった時期を振り返り、その気持ちを吐露してる。

南場) コンサルタントとしての仕事が思うように出来なかったので、逃げるようにハーバードへ行きました。今思えば、アウトプットが出せない理由として、すごく非効率だったことが挙げられます。ビジネスの基本を全く理解していませんでした。それで焦ってしまい、仕事に落ち着いて取り組むことが出来ていなかったんです。(中略)
戻って最初のプロジェクトが留学前と同様に、上手くいかず、辞めようと思っていました。(中略)
せめて最後のプロジェクトくらいはと、これが最後の恩返しと思って働きました。
そうしたらこれがうまくいったんです。どうして上手くいったのかと言うと、もう辞めようと思っていたので、自分の出来、不出来に意識が全くいかなかった。そして自分が本当に役に立てているのかどうかなど、全く気にならなくなったんです。出来ないことをさらけ出し、皆に助けてもらいながら、仕事を進めることだけに集中出来た。
それで上手くいくようになりました。きっかけをつかめたことで、以降はとんとん拍子で仕事が楽しくなりました。

上記引用: https://gaishishukatsu.com/archives/37146

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自分のメンター、あるいは相談できる先輩に話を聞いてみると、案外多くの人が似たようなつらい時期を過ごしてきた、という話を披露してくれるはずだ。


以上の行動指針は全て、自分自身の心の状態をポジティブに保つことに繋がっている。本稿で延べた細かいポイントを全て実践するという思考になるのは本末転倒だが、悩んでいる方の参考になれば嬉しく思う。