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転職時に必要なアンラーニング(学習棄却)

転職後に成果が上がらないときは、前職での成功の型から抜け出そう。

コンサルティングファームで働いていると、前職で成果を上げて転職してきた方が、なかなかコンサルタントとして思うように成果を上げられず、半年~1年近く悩んでいるという状況に遭遇する。

ここ1-2年はリモートワークが進み、社内のちょっとした関係性を作りづらくなっている。人事の方と話していると、そんななか仕事に慣れるのに苦労しているのも、新卒社員よりもむしろ中途の方々らしい。

この記事は、コンサルティングファームに転職したが思ったように成果が出ない方に向けて書いたが、新しい環境で仕事を始める際の超基本ポイントとしてより広く役立てば幸甚。

仕事に慣れる上で新卒と中途の違い

仕事に慣れる上で、新卒と中途の方との条件の違いは主に以下の3つ

・コミュニティ: 新卒は(自分の積極性にかかわらず)所属する同期コミュニティがあるが、中途は意識的に動かないと横のつながりが弱い
・これまでの経験
: 中途はアンラーニングが必要だが、なかなかリモート下でそのような経験は難しい。アンラーニングとは、前の環境での成功パターン(考え方・行動)は新しい環境での成功パターンとは異なることを認識し、やり方を変えること
・年齢: 経験の長いコンサルタント(マネージャー手前のポジション)が、自分より年上の新入コンサルタントに厳しいアドバイスをするのを遠慮しがち

経験上、中途入社したグループでも特にアンラーニングに苦労しているのは、研究職出身者や、メーカーの事務職で高い評価を受け、転職してきた生真面目な方々だ。苦労の背景は、業務の進め方が、それらの企業・職種とコンサルティングファームとで大きく (時には180°!)違うためだと思う。

これまで私が見てきた、アンラーニングに苦労してきた方に共通するポイントを挙げてみる。

× 「業務拝承!」→すぐに作業にとりかかるのでなく目的を問う

マネージャーからやるように言われた作業をうまくこなして報告したら、なんでこんなことやったのか説明してと言われて戸惑う…こんなシーンをしばしば見かける。

大企業で、業務の進め方や出したいアウトプットの具体的な部分まで上司から指示されていた、という方に特に注意してほしいのは、その作業の目的を自分の言葉で説明できない作業はしないということだ。

ある作業を振られたときに
「今依頼された作業は何のためにやるんですか?」
「それが目的ならほかのやり方のほうがいいですよね?」
「その目的なら、この作業にそこまでの精度はいらないですよね」
など、ゴールを踏まえたうえで作業内容を提案する姿勢を持つように心がけたい。

× 「持ち帰って検討します」→持ち帰らずにその場で確認する

進め方が今一つわからない作業を振られた際に「はい (後でやり方を自分で調べよう)」「ちょっと考えてみます」と引き取って、数時間後にずれている成果物を出してしまう…これも慣れないうちはやりがちな失敗だ。そうならないために、成果物のイメージが持てない作業はしないことを心がける。

成果物のイメージを持てないなら、作業を振られる際に
「進め方はこうこうこういうイメージですが合っていますか?」
「ホワイトボードでアウトプットイメージを合意しましょう」
とか、あるいはまったくイメージわかなければ
「今回は進め方のイメージがわかないので、どう進めるか相談させてください」などと食い下がるべきだ。

× 「まずは情報収取しよう」→仮説ドリブンで進める

特に戦略策定やデューデリジェンスといったプロジェクトであるあるなケースが、まず網羅的に情報を集めてから(自分にとってわかりやすく)整理し、それから解を考えよう、というアプローチをとってしまうことだ。本来は、(既に広く知られているように) まずはイシューを理解し、仮説を立て、その仮説を証明するために必要な情報を探しに行く必要がある。

さらにコミュニケーション上、自分が見つけた情報は、今解いている問いに対して仮説を証明/反証するための情報か、それとも問いの立て方自体を見直す直す必要があることを示唆する情報か、チームと共有する際には切り分けて伝えるべきだ。このあたりが、あまり慣れてない方との社内会議で議論がごちゃつきやすい。

問いの立て方を見直すべきと示唆する情報を見つけたときは、その重要性に気分が高まり、会議の中ですぐにその情報の共有を始めたくなる。しかし、周りはみな既存の論点整理に則って考えているので、いきなりそんな話をされても理解できない。

なので、まず期待されている情報をサクッと出して、そのうえで重要な情報をチームに共有すると受け入れられやすい。もちろん、「これは問いの立て方自体を変更したほういいことを示唆している」のように、その会話の位置づけを明示的に伝えることが必要。

× 「ある程度完成度を上げよう」→早く相談し何回しもする

特に前職が研究職の方に多いのだが、担当する作業の完成度が90点に高まるまでは、自分だけで責任をもって進めようとしてしまう。しかしむしろ、コンサルファームの働き方では、60点の時点で一度チームで議論し、問題があれば方向性を修正することが大事だ。これは職種による進め方の違いに起因するので、周りのチームメンバーがどの程度の段階の成果物をマネージャーに見せているか見ると学べるはずだ。

質が低いものを持っていくとできないやつだと思われそうだ、という恐れを最初に持つ人もいるかもしれない。しかし、コンサル業務では、自分自身で90点を出すことよりも、人をうまく使ってより早く90点に到達するほうが評価されるので、そのような恐れを持つ必要はない。

最初のうちは、完成度ではなくて時間で区切り、マネージャーとの議論を持つようにするのもいいやり方だと思う。

まとめ

一般的に、業務を進める上で期待されるスピード感や、どの程度まで自分で内容を詰めた後に上司と議論するか(また、その背景にある個人の業務範囲や権限・責任)というのは、企業や職種によってばらつきが大きい。

だからこそ、転職後に成果が上がらないときは、前職での成功の型から抜け出すこと、つまり自分の行動指針を、古い環境で学んだものから、新しい環境で期待されているものに意識的に切り替えることが必要なのだと思う。