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2023版!授業構造フォーマット

本日もお読みいただきありがとうございます。
今回は授業づくりに役立つ授業構造フォーマットのアイディアについて書きます。

私が公立教員になりたての時に、
教育委員会からもらった資料に書いてあった授業のフォーマットは
「導入5分→展開40分→まとめ5分」というものでした。
大枠としてこれに従って授業を作ることに大反対!という立場ではないのですが、例えば展開40分ずっと講義をするわけにもいかないはずですし、授業づくりの拠り所としては粗いフォーマットであることは否めません。

今回はこのフォーマットを深掘りしていき、それぞれの部分にどう意味を持たせていくかも再定義することで授業づくりのお手伝いができればと考えました。

まずは以下の表をご覧ください。

2月15日 授業改善セミナースライドより

「導入・展開・まとめ」という大枠を細分化・役割の再定義を行った表になります。
以下ではそれぞれのセクションがどのような意図で細分化されたのかについて書いていきます。


1 導入① Warm-Up     その後の活動への参加度を左右する重要部
2 導入② ゴール設定 「知的好奇心」か「課題解決意欲」を刺激する
3 展開       「失敗経験」と「目的あるインプット」のサイクル
4 まとめ       導入②とのリンクで学習状況・達成度の振り返り

1 導入① Warm-Up     

授業の冒頭で生徒の集中力を高め、その後の活動への参加度を左右する重要部となります。

ここで前時の復習に関する内容を、先生がさらりと話してから入る授業が多いですが、
私は「ペアで」「かならず手か口を動かす」という作業的・活動的要素を取り入れることをお勧めします。
それは、①心理的障壁の緩和 と ②教科的準備運動による集中力の向上のためです。
①心理的障壁の緩和に必要なことは「心のエンジン」をかけるということです。
生徒は授業冒頭部では、
考えたことを自分の言葉にして発言するなどを行うには気後れする、すなわち心が温まっていない状態にあります。
この状態で授業中に生徒個人に発言を促すのは、身体的な負担に例えるなら準備運動なしで100メートルを全力で走るのを強いているようなものです。自発的な発言はまず望めないですし、無理やり指名して話させても心理的障壁がMAXの状態なので発言することそのものを単なる不快体験にしてしまい、生徒にとっては恥ずかしい経験をさせられた→もう発言したくないとなり一層発言のない教室になるいうまでもありません。

この状態を打破するために必要なものこそが、ペアでの作業的準備運動なのです。
発言や発表を行う際の心理的障壁は
ペア→グループ→クラス単位の順番で大きくなります。よって小さいほうから順番に取り入れていくことがこの障壁を緩和していくためには有効となります。ペアでの意見交換や会話が授業冒頭にあると、適切な「ざわざわ空間」が発生し、教室内の生徒みんなが声を出しているために、生徒1人1人にとって声を出すことがかなり気軽なものになっていきます。
(学問的背景としてはこちらをどうぞhttps://note.com/cozy_sensei/n/nf5e27b220a46

https://note.com/cozy_sensei/n/ncaaecdc66def

②授業の冒頭は生徒はまだ休み時間や他教科の学習から切り替えられておらず、その授業に集中できる状況ではありません。
よって授業の冒頭部では「考える」+「読む・書く・話す・聴く」という活動を行い、その科目に対して必要な「頭脳のエンジン」をかけます。
たとえば英語であれば、その授業にスピーキングを行うのであれば、声を出すことや、ちょっとした口頭でのやり取りを取り入れるとその後の活動への準備になりますし、
膨大な計算を求める理系科目であれば、冒頭で易しめな計算問題を高速で解かせるなども良いWarm-Upになるでしょう。
もちろん前時の復習を行って本時の活動へのつながりを意識させるのもよいと思いますが、生徒同士で思い出させたり話し合わせたりする活動を取り入れるのがおすすめです。

2 導入② ゴール設定

導入①すなわちWarm-Upが終わったら、次はその授業における学習の到達目標を明示し、「何を」「何のために」学ぶのかを意識づけします。
ここでは生徒の「知的好奇心」か「課題解決への意欲」、あるいはその両方を刺激することが重要です。
以下のスライドをご覧ください。

導入②でするべきこと

冒頭部に授業の目標を見せることは単純ではありますが、学習効果を大きくします。なぜなら、その後の学習活動1つ1つに意味が発生するためです。

上の例でいうと、左側は冒頭で「問い」を見せて、知るべき目標を掲げていますので、授業の目標が「なまはげが子どもを怖がらせる理由」と「なまはげが村人に歓迎される理由」を英語活動を通して知ることとなります。

右側では英作文の採点基準(ルーブリック)を見せて、学習活動の目標を提示しているので、授業の目標は英作文に必要な知識や技能を獲得しながら、自分の作文を基準に合った形で書き上げることになります。

このように授業冒頭の導入部でゴールがはっきりすることで、その後の生徒の活動が「なぜ求められるのか」がはっきりするので、生徒も能動性を持って授業に臨みやすくなります。
こんな単純なことですが、これがあるのとないのとでは大きく違ってきます。目標がわからないまま学ぶことは、教員に付き従って進むのが授業の主となるため、自分で自分の目標を能動的にクリアしようという気持ちは起きにくくなります。

3 展開

いよいよ展開、つまり授業の中核についてです。
導入部で高めた集中力と目的意識(モチベーション)を生かして知識や技能を習得するフェイズですが、
ここも教え方の工夫の前に、授業構造そのものを工夫することで学習効果を高めることができると考えています。

まず初めにお伝えするべきことは、

展開部前半に生徒が「失敗する経験」をすることで、インプットに必然性を持たせる

ということです。まずはこれらに尽きると思います。

「わかりやすい授業のはずなのに、生徒の集中力が切れている(寝ている)」ということが起きる授業、自分や周りに起きているのを見たことありませんか?私は丁寧に1つ1つ伝えている授業のつもりでも、きっちり寝られてしまったことがあります…(今も日々興味を引く授業づくりに苦心しておりますが)
これが起きることの原因として、
生徒が講義を受ける(=知識を伝達される)ことに目的が見いだせないまま、情報を垂れ流されていることがあると考えます。

それではそれを打破するためにどうすればいいのかということですが、
生徒が現状ではできないこと・知らないことがあるということを実感してもらう活動、すなわち「失敗する経験」を取り入れることが有効です。

英語の例にはなりますが、教科書の内容を大まかに理解した後に、
導入②の例にあるようなルーブリックを元に、
「教科書内容を要約する作文をいきなり書かせる」という活動をさせるとどうなるでしょうか。
内容について学んだあとだとしても、自力で表現するための知識(単語や文法)や論理的にまとめる技能が不足しているので、
たいていの場合思い通りに書けないという経験を生徒がすることになります。
そうした経験をした後に、授業の後半にもう一度書くチャンスが与えられることを告知し、生徒のインプットを促進する講義や練習(音読など)を取り入れると、
生徒は失敗の経験から自分に不足していることを強く認識していることにより、インプットの活動にも集中して取り組むようになります。

こうした状態での講義においては生徒の脳は「学びたい」というアクティブな状態になっているので、目的がないまま情報が垂れ流されているときのような受動的な姿勢にはなりにくくなるということです。

このように
「失敗経験」を冒頭にもってきたのちに
生徒の不足を補う「インプット」を行い、
さらに再度「挑戦」し、
さらに足りないことを見つけて「インプット」を行う
というアウトプットとインプットのサイクルで展開する授業を行うことで生徒の集中力を高く保つことが期待できます。

アクティブラーニングの流行により、先生の講義が軽んじられているときがありますが、
講義は生徒の意欲が高まっている状態で行えば、生徒のニーズに応えることができる素晴らしい学習の場を提供することができると考えています。



・アウトプットとインプットをサイクルで行う
・40分ずっと講義を続けず、活動を細かく分ける
・1つ1つの活動をできれば10分以内に収める

この3点に気を付けながら展開部を設計すると、生徒が集中力を保ちながら能動的に学ぶ場を提供しやすくなると考えます。

4 まとめ

授業の終わりに位置するまとめの部分は、展開部が押してしまうと結構駆け足で終わったり、完全になくなってしまったりすることが多い部分でもあります。(私はあります…)

しかしながら、
授業の終わりに生徒自身が自分の学びを自己評価できる場を作ると、
生徒が達成感を感じたり、自分の次の課題が見つかったりするので、
本当はとても大切にしたい場でもあります。

まとめを輝かせるための方法として、簡単に取り入れられるのは、
「導入②とリンクさせる」というものです。

導入②でするべきことを確認
まとめで導入②で提示された目標に対しての達成度を確認

このスライドのように、導入②とリンクさせ、最初に提示された目標をどれくらいクリアできたのかを確認する時間にします。
分からなかったことがわかるようになっている、
できなかったことができるようになっているという実感をダイレクトに感じてもらうことで、
その学習に達成感を持ってもらったり、
次の学習へのモチベーションにつなげていくことができます。

もちろんまだわかっていない・できていないということに気付いてもらうのも大切です。それも復習や次の授業への動機づけとなることが期待できます。


<最後に>
今回は「導入→展開→まとめ」という王道の構造を再構築・再定義することで、授業づくりを振り返るフォーマットを作ることを目指しました。
今回のフォーマットは2023年2月現在・私が使いやすく効果的であると考えているものです。日々の実践を通して来月にはアップデートされるかもしれません。
これらすべてが学術的研究の上に成り立っているのかと言われればそんなことはありませんが、実践を通して生徒の様子や成果物の変遷を分析するなどしながら現在たどり着いた構造です。

皆様には皆様のフォーマットがあり、違いも多々あると思いますが、
授業内の教え方や活動案でなく、授業全体の構造を考えるという授業改善もあるのだということが提案できていれば嬉しいです!

本日は長い文章を読んでくださりありがとうございました。
ぜひスキ・コメント等お気軽にくだされば嬉しいです。次もまた長文に挑戦したくなる動機になります。

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