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AIが宿題をできる時代に①~課題の捉え方を再考する~

本日は 
先生に根掘り葉掘り聞いてみたラジオ 第25回
「AI時代の課題の出し方とは?」
と関連した文を書いていきます。


「英作文をGoogle翻訳でやってくる生徒が増えて困っている…」
なんていう声は英語科の先生の中では昔からありましたが、
ChatGPTの出現により、あらゆる科目で生徒の課題の出し方や指導の方法に工夫が求められるようになりました。

AI時代には、その気になれば教科書にあるような問題は大抵AIに代わりに解いてもらうことが可能です。
英語で言えば英作文だろうが4択問題だろうが、並べ替えだろうが和訳であろうが、パソコンかスマホがあれば一瞬で片付きます。
国語でもちょっとした意見文や感想文なら書いてもらえるでしょうし、
数学や理科の問題なんてお手の物でしょう。
社会の知識を問うものは言うまでもありません。

正答を導いて、それを書き込んで提出させるという類の物は、
AIが代替「できる」時代になってきたことは間違いない事実です。

それでは教師である私たちがするべきことは何であるか。
それは、この事実を受け入れ、その上で
「課題=学習とは、何のために行うものであるか」を再考し、
どのような課題が有効であるかを考え続け、
そのねらいを生徒に対しても明確に伝えられるようになることだと考えます。

①課題=学習とは、何のために行うものであるのか?
人間そのものができることを増やすために必要な知識や技能、思考方法を身に付けることこそが、これからの学習の目的であると考えます。

「あれ、それでは今までとあまり変わらないのでは…?」
と言われてしまうかもしれません。
「知識はコンピュータのデータベースの方が上」「それを元にAIが様々なものを生み出せる」「人間に知識や技能が不要になる側面があるはずだ」との声もあるでしょう。

確かに「正しい知識」を扱うだけであれば、人間よりもコンピュータの方が正確かつ速く生成できることは言うまでもありません。
それらを元に何かを生み出す創造的な分野においても、AIが参入し始めているのも事実です。
人間がしなくてもよいものは日に日に増えています。

それでは
「知識」「技能」「思考」いずれにおいてもコンピュータに勝てなくなる現代~未来においては、
人間は学習を行う必要がなくなるのでしょうか?
私はそうではない、と考えています。

なぜなら、私たち人間は、これからもAIとともに「生きていく」からです。
AIの力を頼りながら、社会の課題や問題と向き合い「生きていく」のです。
その主体である人間が、自身の脳そのものやそれを元に何かを生み出す能力を磨くことは必要不可欠であるはずです。

「人間にできることをAIがやってくれるようになる」という客体的な視点ではあまりにも弱いです。
AIの力 × 人間の力 → これからの問題解決や創造 という構図になるのではないかと思います。

②どのような課題が有効なのか
上記に書いたように生徒の「脳」そのものを鍛えていくことが主眼に置かれていくので、単に「答え」を書いてくればよいという課題は有効でなくなる可能性が高いです。
もちろん知識を増強することは学習の基本として良いことです。作業的な課題を通して、知識や技能の運用が「自動化」できているほど、人間の知的な行動は促進されていきます。
また、「自分で考えるプロセス」が発生する課題を用いることは言うまでもなく有効となるでしょう。
AIに知識を補助されても作文例を提示されても、
最終的には「自分で考えて」表現や回答を決定する必要がある課題は、AIを運用していく主体である人間そのものを育てる効果を発揮するのではないでしょうか。
・自分の意見をまとめる
・自分で論理関係を組み立てる
・自分で情報を選別し、要約する
・自分の発想を元に創造する
このようなものが「自分で考えるプロセス」を発生させる課題の例となります。

③課題のねらいを生徒に明確に伝える
AIがおよその課題を代理できてしまう時代だからこそ、
課題のねらいを明確にし、
そのねらいを生徒に明確に伝えることが大切になると感じています。
例えばドリル的な宿題1つとっても、「これはあなた自身の知識や理解度を強化するための課題だよ」ということを伝えるかどうかで生徒の課題に対する心構えは変わってくるはずです。
・AIとあえて距離を置く課題
・AIを使いながら問題解決する課題
そのどちらもありだと思います。

しかしながら、国語や英語であれば言語感覚を、数学であれば数的処理や論理的思考を育てるといったように、各教科には学問として向き合ってほしいポイントがあります。そこと向き合わせてその教科ならではの生徒の成長が起こるということにはくれぐれも留意しておきたいものです。

「AIを育てるのか、自分を育てるのか、どちらを大切にするかを考えて行動するんだよ」

という言葉は昨年度一緒に指導に当たってくださったNative Speaker Teacherの言葉です。
AIでできることをAIに任せて何が悪い、という声もあるかもしれませんが、
上述の通り自分の知識や技能、思考方法や表現力を磨いていくことが人間の学習の基本であることは間違いありません。

脳という人間のCPUそのものが鍛えられていくことが、よりよくAIを利用したりAIと共存したりするための基盤となることを大切に考えて、生徒の学習をデザインしていきたいものです。

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