見出し画像

教師の人材確保・質の向上の行方3~教員養成・研修システムの再考~

文科省の『令和の日本型学校教育』を担う教師の人材確保・質向上プランを読んで考えたことを書いていきます。

https://www.mext.go.jp/content/20210201-mxt_kyoikujinzai01-000012476-1.pdf

前回・前々回はこちら↓

この文科省の教員確保プランについての文章は、
1 35人学級を担う教師の確保
2 社会人等多様な人材の活用
3 教職課程の高度化と研修の充実
4 教員免許更新制の在り方の見直し

という項目に対してのプランが書かれています。

今回は
3 教職課程の高度化と研修の充実
について読んでみました。

このセクションは、教員の質の向上に関するプランであると捉えました。
私個人として最も興味深い「教員養成」に関する部分です。

方策として、以下の4点が挙げられています。

①新しい時代を見据え、教員養成の在り方を大学の自由な発想で検討・構築し、他の大学を先導する。
②一人一台端末が導入される教育環境の変化を踏まえ、教師のICT活用指導力を一層向上させる。
③教職課程を置く大学自身が定期的に自らの課程を見直し、時代やニーズに合った課程を構築する。
④現職教員が学校現場を取り巻く変化に対応して学び続ける環境を充実する。


今回はこの4点について考えたことを書いていきます。

①新しい時代を見据え、教員養成の在り方を大学の自由な発想で検討・構築し、他の大学を先導する。

◆大学が教職課程のカリキュラムを弾力化できる特例の創設による新しい時代の教員養成プログラムの開発(令和3年度に検討及び制度創設、令和4年度から制度開始)
 Society5.0時代に向け、新たに教師に必要となる知識・技能を修得できるような科目を開発し、当該科目を含めた教職課程のカリキュラムの編成が柔軟に行えるような特例制度を設け、 優れた教員養成の実績と構想を有する大学が新しい時代の教員養成プログラムを開発する。

◆複数の大学が、各大学の強みと特色を持ち寄って教職課程を構築できる仕組みの創設(令和2年度に制度改正、令和3年度以降に制度を活用した課程の開始)
 大学等連携推進法人(仮称)に参画する大学が、課程の科目や専任教員を共通化し、各大学の強みと特色を持ち寄った教職課程を構築する。

文部科学省『令和の日本型学校教育』を担う教師の人材確保・質向上プラン②より

「新しい時代」に活躍する「優れた教員」が持つ知識や技能が何であるかを明確化しない限り、大学全体が具体的な科目の設置をするようになるには至らない、というのが気になる点です。
例えば、
・学習効果を上げる授業方法(協働学習・CBLなど)
・個別最適化の学習アプリケーションを利用した指導方法
・新技術(ChatGPTなど)の教育向けの使用方法
・業務効率化を図るアプリケーションの使用方法
・WEB時代の生徒間トラブルの対処方法
など、教職課程時代に学んでおくことで現場で一気に活躍しやすくなる内容は考えればいくらでもはずですし、文科省の具体案も知ってみたいものです。

②一人一台端末が導入される教育環境の変化を踏まえ、教師のICT活用指導力を一層向上させる。

◆養成段階において、ICTに特化した科目を新設(令和3年度に科目新設、令和4年度から課程の開始)
 一人一台端末の活用等により、より充実した授業が実施できるよう、ICT機器を活用する授業の設計や授業の方法等について総論を1単位以上学ぶことを義務化(教科の特性に応じ た指導方法などについては別途修得。)

文部科学省『令和の日本型学校教育』を担う教師の人材確保・質向上プラン②より

すでに上に書いてしまいましたが、ICTに特化した科目があることは非常に大切だと思います。
しかしながら1単位で「アプリケーションやシステムそのものへの知識」「それらを活かした実践方法」「それらを使用した際の想定されるトラブルと対処方法」などを扱うとすると、きわめて概略的なものになると思われる点と、
それらを指導できる専門性と現場感覚を持つ方が各大学に確保されているかという点が、
このプランを実行する上で懸念される事項となってくると考えられます。

①②両プランが現場にて応用される実践的な内容になるためには、
大学の教職課程においても、
ICTに専門性を持つ外部教員の活用と、
指導経験を蓄積している教育現場との連携が必要不可欠になってくるはずです。
小中高だけでなく、大学教育に実学の風が吹いていくことを楽しみにしたいですね。

③教職課程を置く大学自身が定期的に自らの課程を見直し、時代やニーズに合った課程を構築する。

◆大学が自らの課程を見直す仕組みの整備とその全学的な体制の整備の義務化(令和2年度に制度改正、令和4年度から実施)
 教職課程の質の向上を目的に、大学が自らの課程を自己点検・評価する仕組みの整備と、質向上を担う全学的な教職課程の体制の整備を義務付けることにより、各大学が時代の変化 や学生のニーズに合った教職課程を編成する契機となるようにする。

文部科学省『令和の日本型学校教育』を担う教師の人材確保・質向上プラン②より

大学側が現代の教育のニーズに合わせて変わっていく必要があるのは間違いないと思いますし、上記でも私見を書いてみました。日本の教員養成のシステムが変わっていけば、この技術革新に伴って超速で変化する社会に合った教育がより多く実践されるようになっていくことが期待されます。

大学側に「質の向上を目的に」「全学的な教職課程の体制の整備を義務付ける」というのであれば、現状のどの点における質を問題視しているのかであったり、
「こんな科目をカットして、代わりにこのような科目を入れていきましょうよ」という具体案を挙げたりしているものも読んでみたいと思いました。

④現職教員が学校現場を取り巻く変化に対応して学び続ける環境を充実する。

◆(独)教職員支援機構における研修内容の充実と、オンライン研修の拡充(令和3年度より充実・拡充)
 都道府県教育委員会が各学校向けに行う研修のマネジメントを担当する教員等を対象に、 令和の日本型学校教育に対応した研修を充実し、地域での普及促進を図る。
また、従来の対面・集合型研修に、オンライン研修(同時双方向型、オンデマンド型など)を加え、ベストミックスによる効果的な研修実施に向けた検討と実践を進める。 加えて、各学校単位で行われる校内研修等に活用可能な映像コンテンツを整備・拡充する。

文部科学省『令和の日本型学校教育』を担う教師の人材確保・質向上プラン②より

この視点はものすごく大事だと思いました。
教員養成時点で身に付けた知識だけでは足りないと、教員になってから気づかされることは当然ながらあります。

例えば、社会のニーズの変化や、技術の発展の目の当たりにしたときに、それらを教育現場で対応したり取り入れたりするために、新たに学ぶ機会が欲しくなることはものすごくありますし、
昇進や職務年数の経過に伴い、管理や養成を行うという視点が芽生えることもあります。「組織運営」に関する実践的な知識や技能など大学生段階で学ぼうなどとは1ミリも思わないのが普通だと思うので、この場合も学びなおしの機会は基調となります。

従来型に加えて
「オンライン型」(双方向型・オンデマンド型)を取り入れていこうというのはコロナ禍を経た現代ならではの視点であり、ぜひ進めてほしいポイントです。
特に全国各地の教育実践や現場運営テクニックをアーカイブ化して、ニーズに合わせて皆が専門性をシェアできる時代になっていくと、
教育のレベルはさらに上がっていくことが期待できます。
これらが実行されるためには、
・研修動画作成を専門とするチームの立ち上げ
・研修動画作成に協力してくれる先生やチームへの手当の支払い(待遇)
・索引しやすいデータベースの作成
・実践そのものが学校間でシェアされる仕組みづくり
など、具体的な方策をできるだけ多く上げ続けていくことが求められます。

あくまで仕組みづくりに特化し、
「マンパワーからの脱却」に努めることが、
持続可能な取り組みを生むうえでは必要不可欠です。
特に、教育現場においては。


<最後に>
このプランはいずれの項目も、「実行されれば現場にとってありがたい」ものばかりです。
だからこそ、具体的方策を文科省が打ち出し続けてくれると頼もしいなあと感じました。
もちろんあらゆる現場に最適化されるプランを作るのは容易ではないと思いますが、「仕組みづくり」を担うことができる最高機関がハード面でリーダーシップをとって改革していくことが、
日本全国の教育がより発展していくうえで不可欠なのだろうと考えています。


本日もありがとうございました!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?