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【読書感想】さよならの夜食カフェ マカン・マランおしまい

今日も大好きな本の世界へ📖
絵本の合間に読む、気になった本の感想を書きます。



はじめに

古内一絵さんの『マカン・マラン』シリーズお四まいの最終巻。ついに読む時が来てしまった(;_;)
そして図書館の次の人の予約が入ったので、ゆっくりしている猶予はない(>_<)

今日の本

『さよならの夜食カフェ マカン・マランおしまい』

著者 古内一絵
発行所 中央公論新社(2018年)


感じたこと

最終巻の中の4話、どれもこれもビビビとくる内容でした~(>_<)
マカンマランの原点『銀色のマーメイド』も先に読んでおいて良かった~!!

やはり想像していたとおり最終話はシャールさん!本人目線で書かれていて、今までのお話では主人公を導くような役割だったシャールさんの心の内がすべて透けて見え、今までの15話を振り返りながらのシリーズ総括だったように思います。



大小はあるものの誰しも心の中に、人にいう程ではない人に言えない想いを抱えながら生きています。
そのもやもやを気にせずスルーしたり、分かっているけどどうにも出来ないと思い込んで見て見ぬふりをしたり、何かで誤魔化し続けたり・・・って私にもある。
このシリーズではLGBTをメインに色んな人の誰にでも共感できるような心の悩みを取り上げていて、悩める人に時には優しく時には厳しく語るシャールさんの言葉が、いつも私の心をも潤してくれていました。

「友達に限ったことではないわね。親子とか恋人とかでもそうでしょうね。特別な関係になるとつい嬉しくて、相手に多くを期待したくなっちゃうけど、期待って簡単に甘えに変わるから

『さよならの夜食カフェ』
第1話さくらんぼティラミスのエールより


主人公のJKは、グループの友達たちを自分に都合よく勘違いしてしまっていました。「きっと大丈夫。私はみんなに好かれている。私のこと分かってくれている」と。でも本当は自分も相手を傷つけていたことに気付きます。人間関係、やはり一番難しい悩みだと私も思います。

「自分を憐れむのってくせになるの。だって、傷つくのって楽ですもの。自分を憐れむヒマがあったら、私は自分を元気にする方を選ぶわ」

『さよならの夜食カフェ』
第1話さくらんぼティラミスのエールより


ティラミスはイタリア語で、私を元気にしてという意味だそうです。
色々深読みしたり自分を責めたりする時間は、暗いところをさまよっているような辛くてしんどい時間。出来ればその時間変えたいですよね。自分を元気にできるのは、他の誰でもない自分だけ。シャールさんのこの言葉は、どんな人も一瞬で方向転換させてくれます^^




「不安は誰かが解消してくれるものではないの。自分自身で向き合うしかないのよ」

『さよならの夜食カフェ』
第3話 追憶のたまごスープより

普通はつまらない、特別が一番だと思って生きてきた若いセレブ妻。高収入の年上の夫から与えられた贅沢なものが特別だったのか?不安から逃げるために特別を追い求めていただけだったのではないか?と気づくも、シャールさんは・・・、

「難しいわね。(中略)生きていく限り、不安や苦しみがなくなることはないから

『さよならの夜食カフェ』
第3話 追憶のたまごスープより

不安を消すために何かを求めたり誰かにすがったりするのではなく、自分と向き合い、その不安の正体を自分の中に見つけることが解決になる。これは私もタロットや心理学をかじっているのでとても分かります。答えを外に求めても出ないけれど、内に入ると見つかることが殆ど。そしてその不安は一つ解消しても次々と現れ・・・結局は湧き出てくる煩悩と一緒で終わりがない。そう理解出来ていると、それ自体に悩まされなくなりますね。



そして最終話。シャールさんが胸の内を語ります。みんなの心に寄り添い励ましてきたシャールさんでも、悩み考え苦しんできたのは一緒なのだと。エリート商社マンだったNY時代に進行性の病気になるまで、本当の自分を隠して生きてきたのは”間違っているであろう己”を正していたからだと。認知症になった父を看取ったのは、本当の自分ではなく嘘をついた自分で、騙したような想いがずっと抜けきれないでいることも。

身体を壊してはじめて仕事や生活スタイルを見直し、本当の自分でドラァグクイーンとして生きていくことを選択したシャールさん。その周りには、そんなシャールさんに共感し慕う人たちが集まり、それぞれの人がそれぞれで立っている姿があります。そしてそこには、不安や孤独であっても、けっしてひとりではないという信念みたいなものがそれぞれにあり、この先を悩みながら生きていっているような気がします。

本の中に出てきたシャールさんの3つの感嘆もステキです。人生は自分でつくるもの。それは自分がどう感じるか感じているかで作られる。

「人生って、大概が気分じゃないかしら」

『さよならの夜食カフェ』
第4話 旅立ちのガレット・デ・ロワより


最終話のタイトルになったフランス菓子、ガレットデロワ。
私もお正月にケーキ店でオーダーしたものを家族で食べたことがあるのですが、中に入っている陶器のフェーブ。そのフェーブを夜食に来てくれるお客様の人数分仕込んだのもシャールさんの粋なアイディアで、それぞれのエピファニー(顕現)となっているのがステキでした。

エピファニーは、1月6日のキリスト教の祝日である公現祭。日常に何かの本質が突然あらわす瞬間という意味でも合って,ケーキの中に忍ばせてるフェーブはまさにそれです。大晦日、シャールさんがそっと手渡したガレットデロワにあの彼ならきっと意味を見出しているはず(*´꒳`*)


その決断が周囲からどう受け止められたとしても、生きていく限り、人は己の人生の王様だ。すべての采配と責任を一身に受け止めていかなければならない。

『さよならの夜食カフェ』
第4話 旅立ちのガレット・デ・ロワより

シャールさんの考えは、LGBT問題だけでなくあらゆる人、悩みに同じように言い換えられます。

人生は選択の連続。
そしてその選択は人生の主人公である自分で考える決断したい。誰かに言われるがままではなく自分で進んで、誰かのせいにするでもなく成功でも失敗でも全責任は自分で負う、それが王様ですものね。

あぁ~すごい、古内先生!
発刊からの6年。そろそろその後のマカンマラン出版してくれないかなぁ?(笑)
楽しみにしていようと思います(*´ω`*)



*『マカン・マラン』シリーズ



*最終話にも登場する8年前の中学生のお話です^^

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