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演劇はコミュ力と、語学力を上げるらしい

ピアノ、水泳、お絵かき教室、バレエ、最近ではプログラミング教室など、様々な習い事があるが、演劇を本格的にやっているという人にはあまり会ったことがない。せいぜい、芸能事務所の養成所や専門学校で少し取り扱いがある程度であろう。

日本においては、演劇というものの扱いは非常に小さく、芸能界などに興味がある一部の人たちのサブカルチャーであり、普通の人は小学校の学芸会や演劇部でちょっと体験するものという扱いである。しかし、海外(特に米英)ではそうでもない。演劇部は人気の部活で、入部のためにオーディションが開かれるほどだという。

ハワイで語学学校を営む、船津徹氏は、著書の中で次のように語っている。

(アメリカやイギリスで)演劇が教育の場で人気なのは、コミュニケーション力を高めてくれるからです。人前で堂々と話す技術、表情、身ぶり手ぶりを使って意思疎通する方法、相手に伝わりやすい発声・発音の方法、相手に親しみを与える話術など、コミュニケーションスキルのすべてが演劇を通して身につくのです。日本でも、兵庫県の豊岡市では市内のすべての小中学校で演劇を用いた「コミュニケーション教育」を導入しています。(中略)演劇経験者は「英語習得が早い」という特徴があります。私は日米で25年以上英語を教えていますが、稀に英語を超特急で身につける人に出会うことがあります。そんな人の多くは、不思議なことに「演劇経験者」なのです

調べたところ、演劇は(1)コミュニケーション能力を高める(2)語学力を高めるという効果が実証されているのだという。

イギリスでは演劇(drama)が正式な科目である

長年イギリスに暮らし、現地の中学校に息子さんを通わせているブレイディみかこ さんのエッセイ「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」では、次のように述べられている。

英国の中学校教育には「ドラマ(演劇)」というれっきとした教科がある。演劇は中等学校教育の一環としてカリキュラムに組み込まれており、(中略)全国統一試験GCSEの受験科目の一つにも入っている(大学進学希望者は一般に8〜10科目を受験)。とはいえ、別に英国は俳優を大量養成するために学校で演劇を教えているわけではない。日常的な生活の中での言葉を使った自己表現能力、創造性、コミュニケーション力を高めるための教科なのである。

端的にいうと、イギリスは国民のコミュ力を上げるために、演劇を正式な科目として採用しているらしい。

フレディさんによると、演劇は未就学児教育にさえも重視されているという。例えば、うれしい時にはどういう顔をするか、怒っている時にはどういう顔をするかなどと、4歳程度の幼児に教えるカリキュラムがあるのだという。これは、自分の感情に合わせた表情ができるようにすることで、自分の感情を正しく他者に伝えられるようにするためだという。

怒った時に怒った顔をするのは、非常に当たり前なことのように思える。しかし、DV、依存症などの問題を抱えた家庭の子どもは、表情に乏しくて他者に感情をうまく伝えられないことが多く、逆に他人の感情を読み取るのも苦手だという。そのため、他者が辛そうな顔をしていたり、嫌がって泣き始めても、それが「ストップ」のサインだとわからないため、問題行動を起こしがちなのであるという。イギリスでは、こうしたコミュニケーションの問題を改善するためにも、幼児期から演劇が教育に組み込まれている

演劇経験者は英語の上達が早い

演劇で得られる技術は、第二言語の習得にも役立つと、海外の研究者は盛んに述べている*注)。演劇は、現実的にありうる状況の会話文が多く、会話の文脈に沿った語彙やイントネーション、発音、身振りなどを全て含めて練習できるからだ。

また、外国語の練習では、間違った言葉使いをしてしまうことは当たり前にあることだが、演劇の練習に参加することは、人前で間違いを犯すことへの恐れを克服するのに役立ち、生徒に外国語を使う際の自信をつけるという。語彙や文法だけでなく、アウトプットに対する精神面もまた、外国語の学習に大事だという。

「人前で堂々と話すのが恥ずかしい」ことは性格の問題もあるが、訓練することによってある程度、克服することは可能である。その訓練方法が、欧米の教育では体系的に整理されているように思う。欧米人が堂々としたスピーチをするように見えるのは、意識してその練習をするからである。その訓練の手法のひとつが演劇なのである。

演劇を語学学習にいかすには

ミニゲーム的に演劇のテクニックを英語のクラスで取り入れる方法を示した書籍を以下に何点かあげる。

例えば、円陣をくんだ生徒たちにボールをお互いにパスさせ、ボールを受け取った人が「My name is ... 趣味は...」というような自己紹介をして、次の人にボールをパスするというような、ミニゲーム感覚の遊びなどが紹介されている。英会話教室のネタ作りなどにいいかもしれない。

*注) 参考文献

Boudreault, Chris. "The benefits of using drama in the ESL/EFL classroom." The Internet TESL Journal 16.1 (2010): 1-5.

Atas, Mine. "The reduction of speaking anxiety in EFL learners through drama techniques." Procedia-Social and Behavioral Sciences 176 (2015): 961-969.

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