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「六甲のふもと 百年の詩人」 B-side:本の制作ノート

誰かに届けたい本を、自分でつくってみる。仕事ではなく、ただつくりたくて。そうして手づくりした本の、制作ノートです。

どんな本?

詩人 八木重吉が神戸に住んで、来年(2021年)でちょうど百年。神戸の人にもっと八木重吉の詩にふれてもらう機会になればと、八木重吉の詩のなかから、「神戸らしさ」が感じられる詩を本(ブックレット)にまとめました。私はとてもこの詩人が好きなのです。

六甲のふもと 百年の詩人ー八木重吉の詩 神戸篇-

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表紙と、裏表紙。

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中身の例。これはオリジナルのページ。

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ここからは制作過程です。こうやってつくりました。

1 まずは計画から

どんな本にするか(内容、体裁、構成、デザイン)の計画を最初に決めます。予算は1万円程度。

2 掲載詩を選ぶ

「八木重吉全集第一巻」(筑摩書房)に、神戸在住期につくられた詩が収載されています。これを底本として読みこんで、詩を選びました。八木重吉の詩は死後50年以上がすぎ著作権が消滅したパブリックドメインです。

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選びたい詩に付箋をつけていくとすごい数に。選ぶのに悩みました。

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3 詩の掲載順を決める

ようやく厳選した22の詩。次は、しっくりくる並べ方をいろいろ試します。

4 オリジナルページをつくる

八木重吉を初めて知る人のために、神戸と八木重吉の関わりについて紹介するオリジナルページをつくることにしました。

八木重吉にまつわる地図をつくり、神戸在住時期のできごとを調べて年表にします。当時の神戸の世相をイメージしやすくするため、神戸の年表も加えて。

そこに載せるため、詩碑の写真撮影へも出かけました。夙川公園と御影中学にあります。御影中学は敷地内なので許可が必要です。
(これはオフショット↓)

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5 タイトルを決める

タイトルは「六甲のふもと 百年の詩人 ー八木重吉の詩 神戸篇ー」に決めました。八木重吉の詩を紹介する編集本であることがわかるように気をつけました。「六甲のふもと」は詩の表現を借りています。

6 組版する

組版ソフトを持っていないので、組版はPowerPointを使いました。PowerPointの機能を駆使すれば、そこそこ組版できるというのが発見でした。

時短のコツは、フォーマットページを最初に作成しておくこと。

読みやすさのコツは、フォント選び。縦書きで見やすく、本の雰囲気にあうフォントを探しました。そして、文字サイズと、行間、字間(広め)を設定します。PDF変換後にはフォントの埋め込みを確認します。

困ったのは、PowerPointの縦書きの字崩れでした。字崩れしやすい「カッコ・3点リーダー・数字」部分は横書きにしました。

スクリーンショット 2020-09-08 9.19.10

7 表紙をつくる

装画は、水彩木版画で作成しました。八木重吉が住んでいた、百年前の石屋川をイメージしています。版画が難しかったです。

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なんとかできた木版画は、スキャンして、本文同様にPowerPointに配置しました。

タイトル文字は、フォントに微妙にかすれの効果を加えてレトロっぽく。小さなこだわりです。

入稿用 2


8 校正・チェックする

八木重吉への尊敬の念を込めて、間違いのないよう、校正とチェックはぬかりなく。詩の表記のチェック、年表や場所などの事実確認、体裁上のチェック(フォントの文字化け、ノンブルの位置、レイアウトなど)です。

校正紙を印刷して確認しました。家にプリンタがないのでコンビニ印刷を活用していますが、セブンイレブンのプリンタの小冊子印刷の機能が便利でした(1部あたり本文140円+表紙100円)。

9 いよいよ、印刷と製本

印刷製本は、ネット印刷サービスの「冊子印刷工房」を利用しました。PDF入稿です。丁寧で、価格帯も良心的。

・A5正方形 148mm×148mm(かわいく手にとりやすい形に)
・本文28ページ
・無線綴じ(本ぽくしたいので)
・右綴じ(詩が縦書きなので)
・紙は上質紙(本文90g、表紙は180g)。PPなし(ナチュラル質感を重視)
・遊び紙あり 水色(詩のイメージにあわせて)
・表1・2は4色印刷、ほかモノクロ印刷(経費削減)

手作り製本も検討しましたが、手間とクオリティを考えてやめました。

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おわりに

ただいま育休中。子どもが寝ている深夜や早朝に少しずつすすめました。しょっちゅう授乳で呼ばれるし、睡眠を削って寝不足にもなりましたが、育児以外のことに集中できる時間をつくるのは、よい気晴らしにもなりました。

なにより、この本をつくるあいだ八木重吉の詩に浸り、新たに知ることもあり、とても充実でした。

出来上がった本を手にして、とてもうれしかったです。
子が大きくなったら、一緒に読めるといいなあ。

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少部数しかありませんが、もし関心をもってくださった方がいれば、メッセージ等いただけたらうれしいです。

・本の紹介記事も書きました




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