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不登校の生徒との一年


 2021年01月26日から
小中学生への学習支援で得た知見を基に
色々書き始めて118回目になりました。
 また、2021年03月15日から
毎週連続投稿を始めて115回目です。

 先週から、今年度の学習支援が始まりました。
毎年新しい生徒に巡り合える機会が増え、
そのたびに、生徒の抱える問題の複雑さと、
繊細な心に突き刺さるトゲの深さに思い悩んでいました。
 いつまでたっても、どれだけ伴走しても
決して埋めることのできない、
大きな谷間があることに気がつかされました。

 いささか抽象的になってしまいましたが
要するに、生徒と全く同じ経験はできないために
追体験から得られるであろう処方は有り得ず、
こうした意味での
不登校という問題の根源的解決は望めないのです。
 だから、現実の生徒と向き合って、
今何ができるのだろうかを考えるようになりました。

 そうすると不登校を解消し登校することが
全ての問題を解決するのだろうかという点が気になってきました。
 結論から言うと、よくわからない原因を探ったり
学校教育だけが、生徒に希望を与える場ではないということです。
 もちろん、義務教育は、それなりの体系を持って生徒に対応する
素晴らしい手法ですが、一方で集団教育であるために限界を示します。
 少なくとも、私が昨年度一年間向きあった生徒は、
素敵になるだろう個性の発露を示してくれていました。
 しかし、そうした自分自身を見出すことなく、
ただただ一斉授業の義務教育を拒否していた状況でした。
 
 最初の出会いの時、
自分の周りに防波堤のように纏っていた衣はかなり強固で、
拭い難い様相でしたが、
勉強するより、大好きな「絵を描く」ことを通して
次第に変化してゆきました。

 最初は「星の子カービーのモノマネ」だったのが
設定を変えたり、ストーリを考えたりし始め、
小説的なものを書き始めたりしています。
 昨日、今年度初の学習会があったのですが
「三時間かけた!」と「推しの子」の絵を持ってきていました。
顔の向きとか、指の方向はこれでいいのかなど
考察を加えており、単純な写し絵の範疇を超え始めていました。

 あれほど嫌がっていた、自分の将来について
「いくつか学校を見に行ったよ」
「絵を描いて暮らしたい」
なんて希望を話してくれていました。
 今年が中三なので、次のステップを目指し
学校に行っていないから得られていない学力を補完することと
夢を実現できるような筋道を考えることが
今年の目標になりそうです。

保護者の皆さんや 子どもたちの学習に関与している方々へ 

 不登校は、生徒にとって精一杯の自己表現です。
そして、否定したり、登校を促すことだけが対応策ではありません。
 一人一人の心のうちに寄り添い伴走し
本音を探ることで、その先が見えてくるようです。

 一番生徒に近い存在で、関係性が成立している皆さんは、
生徒の嗜好や、どんなことに興味を持ちやすいかとか、
具体的な手段を見つけやすい立場にいます。

良い相談相手として、また善き話し相手として
身近にいてくださることを願っております。

07.JUNE.2023.ARAI