私たちは植物のように愛し合った③

もともとひとつのこの世界は、ひとつのままでは理解が難しいみたいだ。
だから二つにする。
私たちの意識はだいたい二元の世界なのだ。

例えば、好きと嫌い。
これの元々一つだった状態って、どう?
どっちでもいい、じゃないかな。
それは疲れたお母さんに嫌われるお返事です。
今日の夜、何食べたい?
どっちでもいい。
それ、どういう事?困るわぁ、何食べたいか聞いてるのに答えになってない。
そういう時、あの男は、成長して答えを決めていた。あらかじめどんなふうに答えて機嫌悪くされても聞かれるのがわかっていたからだ。
たいてい、夜になる前に夜を運んでくるやや冷たい風が、窓を軽く2度叩く。
カレーライス。
いっつもカレーライスだよ。
何度も同じ事を聞き、何度も同じ答えを聞く。
あの男のお母さんは、苦い顔でいつも笑ったそうだ。そしてネギを刻んでたそうだ。
カレーライスじゃいつもなかったそうだ。

この感じが、好きと嫌いが一つだった状態。

さっぱりわからない、わけでもない。

πのパイのぱい。

夕方、スーパーに行く。
あの男の居るスーパーに、食材を買いに行く。
もう二人は一緒に暮らしているから、スーパーは漂流した宇宙船です。
毎日必要っぽい食材を、あんまり必要じゃないのに調達する、アスファルトの道を何度も踏んで。
ああ、私達は便利だ。
便利さしかしらない、自分の生命すら便利な生物。

だいたいおんなじ姿でおんなじ格好でおんなじ考えをしている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?