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散文 日の暮れと僕の場所

山に足を運んだ。
川に足を運んだ。
なんて文章から始まる意味がわかると怖い話を思い出した。
桜がまだ咲いていない山を歩く。
梅が散った山を歩く。
僕はただ歩いているだけ。死体なんて運んでいない。まあ、1人でこんな場所を歩いているだなんて変な人と思われるのだろう。黒のスーツに、革靴、もう日は昏れる頃だ。
不審者とでも思われてるのかな。
いやいや、そもそも誰もいないじゃないか。なんだここ、1本道を間違えただけでこんな場所に来るのか。
ああ、もう、こんなことになるのなら電車に乗らなければよかった。
ふと、道の端に細い坂が見えた。脇道にそれることができ、その先は、林。
竹やぶ?林のような、場所。
そこに置かれた花束と緑色のお菓子、きっとコアラのマーチだ、それが並んでいた。
心臓がキュッとした。
ギュッと、嫌な気持ち、そうだ、ここは。
僕は目を背けながら、心の中で手を合わせた。一瞬だけ。いっぱい祈ると取り憑かれそうな気がしたから。
一時期ニュースを騒がせた少年はここにはいないのだろうか。いないでいてほしいな。
僕は、会社に戻る。少し早足で、駆け抜けた。

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