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数学科の人間が、苦手な理科を4年間指導してきた話

私は大学生の頃から集団授業の塾でアルバイトをしてきました。

高校生の頃は高等学校の数学の先生になりたかったので、大学は数学科に進学し、授業の経験値を積む意味で集団授業のアルバイトを始めました。

そのため数学の授業を持つイメージしかなかったのですが、実際は中学3年生の理科を4年間指導してきました。

現在は大学受験科事業部に在籍しており、数学の授業をメインで持っていますが、物理の授業も持っています。私の周りでも、専門ではない科目の授業を持つことは結構当たり前に起こっています。

今回はこちらのテーマについて、実体験をベースにお話ししようと思います。


なぜ専門でない科目を持たされるのか

あえて「持たされる」と表現しているのは、普通に嫌だからです笑

塾講師と学校の教員との違いは多岐に渡りますが、その一つは

「塾講師は教える科目が1つではない」

という点です。ただ、本当に1本だけで勝負している先生もいますので、あくまで可能性があるだけですが、私の周りの塾講師のうち、9割はの講師は掛け持ち(理科と数学、社会と英語など)をしています。

新人だろうとベテランだろうと、本人が希望したかしてないか、に関わらずです。(実際私も「理科の授業を持ちたい」とは一言も言っていませんでした。)

現在の大学受験の部署でも同じようなことが起こっているのですが、

理由は圧倒的な人手不足です。

人材がとにかくいない。でも授業は設置しないといけない。だから専門ではない人間に担当してもらう。

こうしたことが一部の塾では常習化してしまっています。

これによって講師への負担が大きくなり、どんどん離職していき、どんどん人手不足になっていく……という悪循環があるのですが、その話はまた今度、、、

とにかく、人手が足りないので専門でもない科目を”仕方なく”担当するということがよく起こっています。


理科を担当した初年度

私は中学校の理科とか全く覚えていませんでしたし、そもそも理科は苦手でした。高校では物理・化学の先生が好きだったので、教科自体は嫌いではなかったですが、苦手意識は受験の時までずっとありました。地学に至っては全く記憶にございません状態でしたし、天体なんてイメージでするのが難しすぎて全然できるようになりませんでした。

「そんな私が受験生を担当していいのだろうか?」という不安が頭の中にずっとありました。

生徒からの質問を受けて初めて気づいたことや、自分でもなかなか理解できないことが多く、覚えることも多くて大変でした。というか本当に嫌でした。

受験生の指導には入試対策もあります。入試問題を分析して、それに対してどんなアプローチをするのかを体系的に教える必要があります。

理解することと、問題が解けることは違いますが、

問題が解けることと、教えることもまた大きく違います。

私はとにかくボロが出ないように、授業ごとにその単元を学び、問題を解けるようにし、教えられるようにしました。初年度はその時なりに精一杯やったつもりでしたが、4年指導した今から思うと、まだまだな部分は多かったと思います。

そしてこの年、私が受け持った生徒は9割近い合格率を叩き出しましたが、1割の落ちてしまった子に対して申し訳ない気持ちがずっと消えなかったです。

そして私が次の年度に向けて思ったことは

「もう金輪際理科はやらない」

ではなく

「次は絶対に全員合格させる」

でした。

理科を1年間担当して、知識はある程度ついてきましたが、正直まだあやふやな部分もありました。それでも、手応えを感じる部分はありましたし、何よりも自分の授業で合格させたいという気持ちが強かったので、引き続き理科の担当をすることにしました。


専門外の理科を4年間指導した今、思うこと

4年間授業をしてきて、年数を重ねるごとに知識についてはかなり深くまで身についていったという感覚があります。それは単純に、4年前は全く出来なかったことができるようになったという自信にもなりました。

自分は高校受験までであれば理科の授業にはかなり自信があります。半年前に1度しかしていない授業の内容でも生徒はきちんと覚えてくれています。どんなに理科が苦手な子でも理解してもらえるように授業を組み立てています。

なぜ、そんな風に授業を組み立てることができたかというと、私が理科がわからない生徒の気持ちを誰よりも理解することができたからです。

自分で勉強をしているとわからないこと、覚えなくちゃいけない用語、反応などがたくさん出てきて嫌になります。でも、自分が嫌に思っているのなら、どのように工夫すれば理解してもらえるか、覚えてもらえるかを考えることができます

常に生徒(聞き手)の頭の中を想像し、どの順序で話そうか、どの具体例を持ってくるか、どのように伝えるかを考えることが、わかりやすい授業をするコツだと思います。

自分が専門的に研究している分野だと、生徒が「わからないです」と持ってくるところを「こんなの当たり前じゃない?」と思ってしまいます。

学校の授業で、先生が当たり前だと思っている部分は、簡単にしか触れられなかったり、「教科書読んでおいて」と流されてしまった経験はありませんか?(特に数学の先生に多い印象があります。)

でも、生徒は「先生が当たり前だと思っているところ」に『?』を浮かべます。

この点は高校生に数学を教えている今でも大事にしています。数学が苦手な生徒が多いクラスでは、生徒の表情を見て、本当に理解できているかを常に確認しながら授業をするようにしています。

「わからない生徒の気持ちを理解する」ということは、『先生』と呼ばれる立場の方はよく理解しておくべきだと思います。


塾講師を始めようとしている方へ

これから塾講師を始めようと思っている方。もしかしたら自分の専門外の授業を持たされそうになるかもしれません。

私は結果的に理科の指導に自信がつきましたが、基本的には専門知識のある人がやるべきだと思います。(間違ったことを教える可能性があるので)

それなりに知識があり、指導に自信があるのであれば引き受けてもいいと思います。

自信がなくても、自分のできることの幅を広げていきたい、生徒を絶対に合格させたいと思えるなら、大変ですが引き受けてもいいと思います。

そうでない場合は頼まれてもお断りしましょう。

生徒にとっては一生に一度の受験です。他人の人生がかかっているのですから、アルバイトであろうと正社員であろうとそこに対して責任を負う覚悟がないのであれば担当するべきではないですよね。

もし断っても無理やり押し付けようとしてくる人がいたのなら、そんな塾は辞めましょう。社員を大切にできない会社は生徒も大切にできません。もっといい会社・教室はあります。自分が頑張りたいと思える環境でベストを尽くしましょう。


最後に、塾講師は楽しいです。

自分の授業は誰にも邪魔されません。

準備してきたものを生徒に提供し、その場でレスポンスが得られます。

成績を上げることができ、生徒がそれを笑顔で報告してくれると本当に嬉しいです。

どうかその楽しさを実感できることを願っております。




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