見出し画像

上司の指示でつくる謎資料の作り方

1.  眠れない日を続け、泣きを入れる日を迎える

仕事でパワーポイントを使って資料をつくることがある。多くの場合上司からの指示が起点となる。上司の指示を聞いた時は何を書くべきかを理解していたつもりだった。良い印象をもって欲しくて、つい元気よく「わかりました」と答えてしまう。しかしその後パソコンに向かい、パワーポイントを立ち上げ、いざ作ろうとしても、何を書いてどう書いてよいかわらかない。

ノートに少し書き出してみたり、パワーポイントに少し書き出してみたりするが、やはり何を書いてどう書いてよいかわらかない。時間だけが過ぎる指示を受けた時に「わかりました」と答えてしまったため上司に聞きづらい。アドバイスをくれる先輩はいるが、結局自分でやらないといけない。でもどうして良いかわららない。上司に見せる日が近づいてきて焦る。眠れない

画像1


こんな経験はないだろうか。私は死ぬほどある。結局上司に泣きを入れる。
「す、すみません。わかったつもりでいたのですが、わかっていませんでした。教えてください。」

何度このセリフを言っただろうか。思い出すだけでも辛い。
しかしながら単に泣きを入れていただけではない。毎回「どうしたらよかったのか」を考えた。うっすらと。
泣きを入れた回数は本当に多く、結果として適切な対応がわかってきた。
それを何度も実践し有効性を確認した。本記事はその対応方法を記載する。

2.  基本的な3つの考え

謎資料を作る際の基本的な考え方が3つある。資料作りにおいてこれを思い出せるようにしておくと「上司に泣きを入れる」場面がぐんと減る。

今まで誰も作ったことがない資料は絶対に存在しない

完全に同じ資料は存在しないが、似たような資料は過去に必ず誰かが作っている。目次や構成も含めて似たような資料は必ず存在する。社内のファイルサーバー上司や先輩のパソコンもしくは頭の中ネットにあがっている資料、これのいずれかに必ずある。絶対にある間違いなくある。それらの資料は複数の人によりチェックされているものであり、すでに一定の品質が担保されているものである。まずそれを見つけ出すことが必要である。

謎資料に必要な情報を明確にすべし

似たような資料を見つけたとしても、「似たような」ものであり、今回つくる資料ではない。似たような資料を参考にしながら「新しい資料」をつくらないといけない。「新しい資料」にするためには「新たな情報」が必要である。似た資料を見つけ出すに次にやるべきことは謎資料をつくるために必要な「新たな情報」を特定入手することである。
「似たような資料」と「新たな情報」が入手できれば、あとは簡単である。「似たような資料」をコピーして、上司が望むかたちに変更しつつ「新たな情報」に更新・追加するだけである。これにより、ほとんど悩まずに上司のレビューに耐えられるドラフトを作ることができる。

指示をうけた直後の動きが最も重要

「似たような資料」と「新たな情報」を特定する最初のタイミングは指示を受けた直後である。このタイミングは上司に聞きやすく、かつ上司も答えやすい。しかもこの時点である程度論理的な質問を部下がすることで上司を安心させ、部下たる自身の信頼を高めることもできる。逆にこのタイミングで十分に聞けないと後で悲惨なことになる。必ずこのタイミングでできるだけ多く引き出すべきである。

以上が基本的な考えである。3つをつなげると
  指示を受けた時点で、
  上司にある程度論理的な質問をして
  「似た資料」と「新たな情報」を特定する

ことが、謎資料を作る上で基本的な考えであり行動すべきことである。

3.  指示を受けた時点の動き方

上司の指示を受けた直後は、謎資料を迷いなく作成するための最初で最大のチャンスである。この大切なチャンスでやるべき動きは2つある。

【1つ目】アウトプットの具体化に挑戦する

必ずやるべきことは、アウトプットの具体化に挑戦することである。可能な限り細部にわたり具体的に確認する。具体的な内容を上司と確認できれば、後はそれを作るだけ、いわゆる”作業”に落とすことができる。”挑戦”としたのは場合によって嫌な顔をする上司もいるためである。それも踏まえて必ず”挑戦”するべきである。以降具体的なやり方を記載する。

やりかた①:白い紙を持ち込み手書きで書きながら確認する
コピー用紙など白い紙を複数枚持ち込み、スライド1枚1枚について上司と「まずタイトルは○○で、メッセージは○○で、ここに○○を書いて…」といったように意識合わせをする。

画像4

確認するための十分な時間がない場合は「この後、○○から30分から1時間ほどお時間をいただけないでしょうか。自分の認識が間違えていないか不安な点があり可能であれば意識合わせをさせていただきたいのですが」というように上司にお願いする。私はA4のコピー用紙を複数枚クリアフォルダにいれて上司の指示に臨むようにしている。ここでの重要なことは、間違えていても良いから必ず自分から「ここに○○を書いて…」と話はじめることである。上司は少しでも認識が違うのであれば、必ず指摘してくる。その指摘も必ず忘れずメモるようにする。以前の私の上司には、事前にコピー用紙にざっと書いてくれていて、私に指示をする際にその紙を使って説明してくれる人もいた。ただし「ざっと」感がひどく、何を書いているのか全く読めかった。そのためその指示における一言一句をメモるようにしていた。
重要なことは”手書き”である。これをパワーポイントを立ち上げてやりはじめると非常に時間がかかる。手書きならではの適当な修正・即時修正が非常に有効に機能する。

画像2

やりかた②:「過去に似た資料があれば頂戴できませんか」
白い紙を持ち込み手書きで確認するのを嫌がる上司はかなりいる。理由は「めんどくさい」と思ったのか、上司本人に具体的なイメージがないかのどちらかが多い。上司に嫌われては本末転倒である。そのため少しでも上司が嫌がるそぶりを見せた場合「過去に似た資料があれば頂戴できませんか」を言ってみることである。(白い紙を持ち込み手書きで確認できた場合もこのセリフを言っても良い。)多くの場合上司は「あとで送るよ」といってその場を立ち去る。似た資料を入手した後はそれを印刷しスライドごとにどこをどう修正するかを書いてみる。その後それをもって上司と意識合わせをする。これも手書きで行う。上司との意識合わせは、指示を受けてからカレンダーで3日以内がよい。そうしないと指示内容やその本意がかわっている可能性があり、似た資料が似ていない資料になることがあるからである。

やりかた③:「すみません、明日イメージを意識合わせさせてください」
過去の似た資料を送ってこない上司もいる。リマインドをしても多くの場合は送られて来ず、時間が過ぎて結果的に自分を苦しめることになる。そのため、似た資料が送られてくるかどうかに関わらず「すみません、明日イメージを意識合わせさせていただけませんか」を言って、できるだけ早く上司とイメージ合わせをする時間を設ける。”明日”にしたのは、自分が”イメージ”を作る時間を設けるためである。
このイメージ合わせまでやることは2つある。
準備1:似た資料を自力で探す
1つ目に自ら「似た資料」を探すことである。社内のファイルサーバーを検索する、過去の類似の作業をしたことがありそうな先輩や同僚に相談する、インターネットを検索する(パワーポイントの資料、pdf化された資料などかなりの数をみつけることができる)。社内のファイルサーバーやインターネットを検索する際には、検索する時間とキーワードをあらかじめ決めておく。そうしないとダラダラ検索をしてしまう、同じようなキーワードで検索してしまう、といった生産性の高くない作業に時間を費やしてまう。
準備2:たたかれ台をつくる(印刷し順番と修正箇所を手書きで記入する)2つ目は、似た資料を印刷し、指示を実現するために、スライドの順番を入れ替え、指示にあわせて修正・追加する箇所を赤字でメモを記入することである。もし「似た資料」を見つけられない場合は白い紙に手書きで次の3スライド(場合によっては3スライド以上でも良い)を用意していく。1スライド目のタイトルは「背景」。上司の指示の背景と思われるものを書く。もし目的のようなものが指示にあればそれも書く。2スライド目は指示にあった内容を適当に書く。3スライド目は指示の内容による結論や効果を適当に書く。何度も「適当」と言ったのは時間を多く費やして考えてはいけない。上司の指示に対してはずれていないことを思いつきレベルで書けば良い。重要なことは上司との意識合わせの際に物理的なたたき台があることである。この指示を受けた翌日の時点では内容は間違えていても良い。上司に「違う」と思わせることが重要であり、「違う」と思った上司は自分が思った正しいイメージを具体的に話始めるからである。物理的なたたき台がないと上司は「違う」とさえ思うことができずに、具体的なイメージが浮かばず、指示も曖昧になってしまう。そのため違ってても良いので、当たらずしも遠からずのたたき台をつくる。

【2つ目】資料の品質向上曲線を意識してレビューの日を設定する

資料の品質向上曲線は以下のようなイメージを目指す。

プレゼンテーション2

上司の指示を受けた際のアウトプットイメージがどれだけ具体的だったのかによって、レビューは3から4回ほど設定する。上司の指示を受ける日には初回のレビューの日時を決める。上司が忙しい状況の場合は2回目、3回目のレビューの日も同時に仮設定する。”仮”にしたのは上司に「都合が悪ければリスケしますので、とりあえず設定だけさせてください」というメッセージを伝えるためである。
初回のレビュー自分がストレスなく余裕をもって品質を30%まであげられる日程の中で一番最短の日を設定する。指示を受けた日に近ければ近いほど良いが、完成度を一定レベルまであげられていないと、十分な指示を受けられない。
2回目のレビュー初回レビューでの指摘全て自分がストレスなく余裕をもって対応できる日程の中で一番最短の日を設定する。2回目のレビューも初回レビューの日っから近ければ近いほど良い。これは初回レビュー時点の上司の考えの変化が起きないようにするためである。
3回目のレビューは、このタイミングで指摘をうけても納期までに対応できそうな日とする。いままでは指示を受けた日を基準にしたフォワードでレビュー日を設定するが、3回目は納期日を基準にたバックワードで設定する。これは納期を意識し上司の考えの変化をできるだけ最小限の工数で対応するためである。

4.  資料作りにおいて心に留めておくこと

決して迷わない・考え込まない

資料作りでは迷わないこと・考え込まないことが非常に重要である。5分でも考え込んでしまったら、考え込むのをやめるべきである。決して考えても出てこない。時間の無駄である。必ず残業をしたあげく十分な資料ができずに怒られることになる。書けない理由は、参考となる情報が足りないためであり、やるべき事は「どの情報があれば書けるのか」を特定し「その情報をどこから入手するのか」である。多くの場合「どの情報があれば書けるのか」は過去の類似資料の中で構成がわかる資料となる。入手したら、該当スライドをそのままコピーして必要な修正する。それも難しい場合は、上司に「軽く相談させてください」と話しかけ、参考になる情報を入手すべきである。

上司の指示は変わるもの

指示との時とレビューの時で上司の考えが変わっていない場合もあるが、多くの場合は変わっており、たちが悪いことに変わったことを自覚していない。そのため指示通りの資料をつくってきても、レビューで指摘されることがある。そういった場合は決して「前に言ったことと違う」「コロコロ変わりすぎだよ」などと思ってはいけない。無駄にストレスをためるだけである。指示を受けた当初と今とでは上司を取り巻く環境も変わっており、加えて見聞きしたことも増えている。そのため上司の頭の中では非常に都合よく変換がなされてしまっている。やるべき事は「どれくらいコロコロ変わっているのか」を慎重に判断し、手戻りがない範囲を確実に仕上げていくことと、資料の納期からみて「指示の変更を吸収できる最後の日」を想定し、レビューの日を設定することである

5.  最後に

ここまで上司の指示でつくる謎資料の作り方を紹介してきた。結局は上司と信頼関係であり、それは蜜で効果的なコミュニケーションによるものだと思う。上司も度々聞いてこられると困るが、ある程度の頻度で有効だと思われる質問をしてくる部下はかわいいものである。そのため、うまくコミュニケーションを行うことで、必要な情報を入手でき上司の満足する資料が作れるようになると考える。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?