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視覚障がい者との共創。知らない世界へ導く人たち │インクルーシブデザインワークショップ

1日目のワークショップでは視覚障がいへの理解を深め、牛乳石鹸が新たな商品、サービスを開発するためのヒントを得るためお風呂場を見せてもらいました。今回の2日目では、いよいよテーマを決めてアイデア出しのワークをします。

前回の記事はこちら

視覚障がいの方に商品をつかってもらう

実は1日目と2日目の間には2週間ほど時間があいていて、視覚障がいの方々に牛乳石鹸の商品を実際に使っていただいていました。商品は赤箱と青箱、ボディソープ、入浴剤、保湿ローション、メイク落としなどなど。感想をインタビューします。

使ってもらった牛乳石鹸の商品

視覚障がい者っぽい感想がいいですか?それとも率直な感想がいいですか?なんて前置きがあったりしながら、感想をいただきました。赤箱と青箱の香りの違いが分からなかった、入浴剤の甘い香りがソーダのお風呂に入っているような感覚になった、など香りに関することが多くありました。もしかしたら目が見えないことで香りに敏感になる??(勝手な憶測ですみません!)

そしてもうひとつ気づいたこと。商品を使ってもらうにあたって、使用方法が分からないんじゃないかとか、すべって転んだりしたら危ないんじゃないかとか、いろんな心配をしていました。しかし、目が見えずとも問題なく使用されていて、こちらが思い込みで決めつけていたのだと気づかされました。

商品のフィードバック&インタビュー

そしてアイデア創発のグループワーク

それではグループワークのテーマをどうするか?これまでお風呂場を見せてもらったり、商品を使った感想を聞いたりしている中で、マイナスをプラスに改善するだけでなく、プラスをさらに伸ばしていく視点でアイデアを出していくことになりました。

発表されたテーマ案

テーマごとにグループに分かれて視覚障がいの方にヒアリングをしながらアイデアを考えます。お客様相談室、総務部やシステム部など、普段は商品開発に携わっていないメンバーも今回は頭を捻ります。

アイデアが出てこずに行き詰まった場面では、視覚障がいの方から「できるかどうか一旦おいといて、思いついたことをどんどん言っていきましょう!」と言っていただいたり、牛乳石鹸メンバーよりもたくさんアイデアを出してくれたりなど、心強い場面がたくさんありました。

グループワークの様子

ワークショップ中にタイピングなど別の作業に集中すると、一時的に会話がストップする瞬間があります。目が見える人達はそのことに何か思うことはありませんが、目が見えなければ状況がどうなっているのか分かりません。きちんと言葉を交わさなければ相手に伝えられないため、今回参加された視覚障がいの方たちは、会話が丁寧だし、コミュニケーションが非常に上手だと感じました。

発表、そしてワークショップを終えて

制限時間は40分という非常に短い時間でしたが、各グループなんとかアイデアをまとめ終えました。香りでイメージを膨らませて入る入浴剤、お湯に入れたら音のする入浴剤、目が見える、見えない関係なく楽しめるユニークなアイデアばかり。実現できるかはさておき、今後に活かせそうなヒントが詰まっている気がしました。

発表されたアイデアの一部

今回のように色んな部署からたくさんの人が集まってワークショップを開催することは初めてでした。それぞれの部署で働くメンバーが、一つの目標に向かっていくという体験ができたことも私たちにとってはかけがえのない事だったと思います。

最後には視覚障がいの方たちからの感想をいただきました。「目だけでなく、耳をふさいでみると新しいヒントがあるかもしれない」「商品開発に行き詰まった時、マイノリティの声に耳を傾けることで突破できるかも」「地味だけど、点字をつけるだけでも目が見えないと便利になる。マイノリティに対する取り組みもしてくれたら嬉しい」。直接的に視覚障がいの方の声を聴く機会はほとんどありません。出会うきっかけもないし、そもそも声を聴くという発想すらありませんでした。インクルーシブという新しい視点を得られたことに大きな価値があると感じています。

リードユーザー

2回にわたってワークショップの様子をお届けしました。その文章中では「視覚障がいの方」と表記していましたが、実際にはリードユーザーという立場で参加していただきました。

リードユーザー
未知の未来に導いてくれる人。視覚障害者は光のない世界、聴覚障害者は音のない世界、車椅子ユーザーは移動の専門家であり、リードユーザーとの共創によってイノベーションが創出される。

PLAYWORKS株式会社

まさしくリードする立場として参加していただき、積極的に発言したり、グループ内での進行役を務めるなどしていただきました。私たちはそんなリードユーザーの皆さんに「光のない世界」を案内していただいたのです。

目が見える人は一時的に視界をさえぎって作業をすることはできますが、視覚がない状態で生活を送ることはできません(しようと思えばできるかもしれませんが)。目の見えない人たちしか、その世界を知りません。耳が聞こえないのもそう。足を動かせないのもそう。インクルーシブデザインワークショップとは、そういった知らない世界の人たちと共に創り出すこと。たった2日間という短い時間でしたが、多くの学びがありました。牛乳石鹸として、どのようにインクルーシブな取り組みができるのか、今回のワークショップをきっかけに、少しでも前へ進んでいきたいと思います。