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スタッフインタビュー<第3回>

本プロジェクトにご協力いただいているボランティアの皆様、関心をお寄せいただいている皆様、いつもありがとうございます。

本プロジェクト最大の目標は、新型コロナウイルスに関する情報を多言語で発信することです。これに加え、多文化共生社会実現のため、多言語発信について議論を起こす/担い手を増やすことも目指しています。プロジェクトの目標については、以下の記事もご覧ください。

そのためにはまず、私たちの活動経験を広く発信していくことが大切だと考えます。

そこで新たな試みとして、本プロジェクトの活動や、私達が目指す「多文化共生社会」についてスタッフに話を聞く、インタビュー企画を行っています!
本プロジェクトの理念に共感し、ボランティアとして参加している人が、どのような想いで活動しているか、「多文化共生」「多言語発信」にどのような想いを持っているかをお伝えしていきます。

第3回は、やさしい日本語翻訳スタッフの星澤美衣(ほしざわみえ)さんにお話を伺います。

「やさしい日本語」とはどんな言語なのか、なぜこのプロジェクトで活動されているのか...。台湾留学中の体験談など、学生時代のご経験も交えてお話して頂きました!

3_やさ日_星澤さん

↑インタビューの様子
右:星澤さん(会社員、東京外国語大学卒業生。やさしい日本語翻訳担当)
左:インタビュー担当:本プロジェクトアウトプットチームリーダー

大学生活と台湾留学について


ーまずは自己紹介からお願いします。

やさしい日本語の翻訳担当の星澤美衣です。東京外国語大学の卒業生で、日本語を専攻していました。在学中に1年間台湾に留学したことがあります。卒業後は人材会社、教育事業会社、オンライン英会話スクールなどに勤務し、現在はオンラインに特化した英語学習コーチングスクールで、サービスやカリキュラムの開発をしています。副業としてウェブライターのお仕事もしています。

ー大学時代は東京外国語大学で日本語を専攻されていたということですが、どうして日本語専攻に?


私は小学生の時から海外に憧れる気持ちや留学したいという思いがあったため、英語教育に力を入れている東京の中高一貫校に通っていました。しかし、20年前は留学できる機会も少なかった上に留学費用も高く、今と比べると留学へのハードルが高い時代でした。また、英語で授業が開講されている私立大学は学費が高く、海外大学に長期で通うのも大変な時代でした。大学を探す中で東京外国語大学の日本語専攻を知り、「これだ!」と思い進学を決めました。日本人学生と留学生の割合が1対2で、授業で留学生との関わりが多い環境だったんです。


ー大学在学中に1年間台湾留学をされていますが、どうして台湾に?


私が所属していたゼミがきっかけです。日本語・英語・中国語の対照言語学のゼミだったのですが、ゼミの教授が中国語が堪能な方だったため、中国人留学生が非常に多いゼミでした。私は大学で、「日本にいながら日本人である自分がマイノリティになる経験をしてみたい」と思っていたため、そのゼミに入りました。中国人留学生の方々と一緒に学んでいたので中国語を聞く機会が多く、中国語は私自身も少し学んでみて興味のある言語だったので、さらに学びたいと思うようになり台湾に留学しました。

ー台湾での留学はいかがでしたか?

長期留学だったので9月から翌年8月までの約1年間の滞在予定だったのですが、実は私が留学した年は、SARSが流行した年だったんです。3月頃から流行り始めたので、現在の新型コロナウイルス感染症と状況が似ていますよね。感染防止のためマスクをして大学に通わなければならず発音練習もしづらい状況だったので、予定よりも少し早く帰国することにしました。
でもSARSは2、3ヶ月で収まったので、8月に再び台湾に1週間渡航して荷物整理をしたり友人と再会したりもできましたね。


「やさしい日本語」とは?

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ー星澤さんは本プロジェクトではやさしい日本語の翻訳をされていますが、どんなきっかけでお知りになったのですか?


実は、やさしい日本語は比較的歴史が浅く、私の大学在学中はその概念すらもありませんでした。
私が以前勤めていた教育事業会社が日本語教育を推進しており、やさしい日本語と関わりがあったんです。私自身は直接関わっていませんでしたが、そこで初めてやさしい日本語の存在を知りましたね。
やさしい日本語は1995年の阪神・淡路大震災発生時に、被災された外国人の方が適切な行動が取れるように、と考え出されました。まだまだ新しい取り組みで知名度が高くないので、個人的に普及活動もしています(笑)。 英語が苦手だけれども、外国人を支援したいと思う方に教えたり。また、やさしい日本語はその性質上、日本人の外国語学習者にとっても役に立つ言語なんです。語彙が限られているので普通の日本語よりも英語に変換しやすいんですよね。


ー日本語からやさしい日本語にはどのように翻訳されるのですか?


明確なプロセスがある訳ではなく、翻訳前の日本語の文章を見て「この日本語を外国の方に伝えるにはどうしたら良いか?」を考え、適宜表現を変えていきます。「やさしい日本語・入門」という本や、他の翻訳スタッフさんの翻訳方法を参考にしてはいますが、「意味するところを曲げずに伝える」ことが目的なので、決まった翻訳方法に完全に従うというよりは、「どうしたら通じるか?」を常に自分の頭で考えて翻訳しています。

ー本プロジェクトの記事は新型コロナウイルス感染症に関するものなので長い単語が多く、翻訳が難しそうという印象がありますが...

そうですね。ただ、長い単語というよりも、コロナ禍で生まれた新しい概念の翻訳が難しいです。「特別定額給付金」などですね。「全員10万円もらえます」のように説明が必要になります。逆に、長い単語でも「技能実習生」などは読者が当事者なので伝わりやすいんです。また、「保証人」「利子」「社会福祉協議会」などの、日常生活で使う基本語彙ではない高級語彙は伝わりやすいよう注意して翻訳しています。例えば、「収入」は「会社などで 働いて もらえるお金」になりますね。

ー本プロジェクトでの翻訳活動のやりがいや、そもそも参加されたきっかけは?

まず、「誰かの役に立っていればいいな」という気持ちですね。私が現在勤めている会社のミッションが「外国人にやさしい社会」なのですが、仕事の場だけではなくプライベートでもそうした活動をしたいと思ったタイミングで、本プロジェクトがスタッフを募集していると知りました。ボランティア団体の中でも、本プロジェクトはオンライン活動なので仕事と両立しやすいと思い参加しました。


「台湾のような、言語学習をしやすい環境作りがしたい」


ー本プロジェクトの目指す「多文化共生」についてどう思われますか?


シンプルな答えになりますが、多文化共生を進めるには、助けたいという気持ちがある人ができる範囲でできることをするしかないと思っています。街中で困っている人を見かけたら話しかけて、自分ができる範囲で助ける、などの小さなことから。


ー「多文化共生」「多言語対応」という観点で言うと、星澤さんが留学されていた台湾はいかがでしたか?

台湾に留学していなかったら、今のように言語に関わる仕事はしていなかったと思うほど、留学の影響は大きいですね。
台湾では、公共の場では国語の繁体字中国語を、家では台湾語(閩南語)を使うことが多いです。少数言語話者など、中国語が母語ではない人も多いので、教育言語である国語を学んで使っている人も多く、言語学習者に理解がある環境でした。私が話すのを待ってくれたり、ゆっくり喋ってくれたり、日本語で話してくれる人もいたりと、言語障壁で嫌な思いをすることが全くありませんでした。街で安心して中国語を練習できる環境だったんです。この経験から、学習している言語を安心して話せる環境を日本でも実現したいと思うようになりました。

例えば、以前勤めていたオンライン英会話スクールでは、日本人の英語学習者が英語を安心して練習しできる環境づくりを担当していました。そのスクールでは、日本人の英語学習者がフィリピン人の講師とオンラインでマンツーマンの英会話レッスンを受講するのですが、「まずはなんとか話せた!」という達成感を味わってもらうために、テキスト作りを工夫しました。レッスンの25分間、「とりあえずこのテキスト通りに進めれば最後まで会話ができる」と思えるようなテキストを作りましたね。まずは「なんとかなった!通じた!」という満足感や達成感を受講生の方に味わって欲しいという思いがありました。
このお仕事以外にも、言語に関わるお仕事をいくつか経験してきましたが、留学を経て生まれた「安心して外国語を話せる環境を作りたい」という思いをずっと持ち続けています。


私たち「COVID-19 多言語支援プロジェクト」は、14言語で新型コロナウイルスに関する情報を発信しています。発信ページはこちら:

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代表 岡本さわこ





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