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【COVID-19】多言語支援プロジェクトで目指すことと価値観

この記事では、「COVID-19 多言語支援プロジェクト 第2期」が、どんな問題に取り組むのか何を目標としているのか、またそのためにどんな活動をするのか、そしてどんな価値観を大事にして活動にあたるのかを記載しています。
このプロジェクトに関心を持ってくださった一般の方々や、プロジェクトのボランティアスタッフに応募する方々向けの記事となります。

このプロジェクトで取り組む問題

新型コロナウイルスの感染が再拡大しつつあるいま、私たちの生活の仕方や政府や自治体の対応、生活が困窮した方への支援の内容などは変化し続けています。そんななか、言語の壁や社会文化的背景の違いから、今後の状況の変化について正確な情報を十分に得ることが難しく、自らどのような対応をとるべきか適切な判断ができずにいる在留外国人の方々がいることが明らかになっています。

例えば、本国への帰国が困難な技能実習生の在留資格変更を許可する通達が、出入国在留管理庁より出されていますが、この通達の存在を知らない当事者が多くいます。また、入国制限が段階的に緩和されていますが、今後は感染再拡大に伴う制限内容の変更等が予想され、在留資格に関連する混乱が収束したとは言いがたい状況が続いています。
また、ウイルスに対する予防法や、具合が悪くなった際の病院への連絡の仕方についての情報は、その多くは日本語で伝えられています。仮に自分が感染しているかもしれないと思い、保健所や病院に電話しようとしても、自分の症状を日本語で説明するのはハードルが高く、結果的に連絡しないまま我慢してしまう人がいます。

2020年4月7日に首都圏を始め各地に緊急事態宣言が発出された際には、対象地域の拡大や解除が立て続けに行われましたが、外出自粛の要請や、生活に必要な店舗や公共施設、交通機関の取扱いについての情報は、十分に伝わっていませんでした。
その他、特別定額給付金などの経済対策が発表されたり、感染拡大が一旦落ち着いていた夏頃からは日常生活の中に感染予防のための行動を盛り込んだ「新しい生活様式」の実践が求められたりするなど、私たちの生活に大きく関わってくるような社会の動きが多く見られます。しかし、関連情報(支援自体の存在や申請方法など)の多くは、日本語で提供されています。

このような状況下で、言語の違いによって必要な情報を得ることにハードルのある在留外国人の方々にとっては、ウイルスから自分自身と周りの人の身を守り、安全にかつ安心して日本での生活を続けることが難しい状況が続いています。また、「日本政府が何か言っていて、何か気を付けなければいけないのは分かっているが、具体的にいつ何をすればいいのか / 何をしてはいけないのか、よく分からない」という状況下で毎日過ごすのは、相当なストレスがかかっていると想像できます。

行政による多言語での情報発信の枠組みは、十分に整備されているとは言えません。仮に情報発信が行われていても、その存在や情報にたどり着くまでの導線が周知されておらず、媒体も見づらいものが多くなっています。多言語での情報発信を行う民間団体やメディアは既に存在しますが、更新頻度が高いとは言えず、変化する行政の対応等については追いつけていないのが実情です。

プロジェクトの目標

このプロジェクトでは、以下の2つのことを目標としています。

1:在留外国人が必要な情報を手に入れ、安全・安心な日本での生活を実現する
新型コロナウイルスの感染拡大の状況や、それ伴う生活環境の変化、政府からの要請・支援制度について、日本語での情報取得が十分にできない外国人の方々から必要とされている情報を多言語に翻訳し、迅速に届けます。在留外国人の方々が、自分自身や周りの方の身を守り、日本での生活を続けるための行動を、自力でとれるよう促すための情報発信を行います。 
加えて、多言語翻訳の元となる日本語原稿も掲載します。これによって情報の出処を明確にし、記事を目にしたプロジェクト外の在留外国人支援の担い手の方に、当プロジェクトで発信する情報を役立てていただけるようにします。

2:多文化共生社会実現のため、多言語発信について議論を起こす/担い手を増やす
特に現在の非常事態下において、在留外国人の方々がどのような情報障壁にどのような原因でぶつかるのかを調査します。その上で、多文化共生という言葉を知っているなど、関連のトピックに高い関心を持っている層をターゲットに、多言語での情報発信の重要性とそのあり方をはじめとした多文化共生社会の身近さ・重要性について周知し、議論のきっかけを作ります。

目標を達成するために行う活動

上記の目標を達成するために、我々は具体的に以下の活動を行います。

1-1. 主に首都圏において政府や自治体、メディアが発信する情報の中で、在留外国人の方々が今後安全にかつ安心して生活を続けるために必要な情報を収集し、整理する。
1-2. 上記の情報を多言語(※)に翻訳し、ウェブサイト上に目的別に掲載する。
1-3. ウェブサイトに掲載した情報を、TwitterFacebookで拡散する。その際、在留外国人の方々との繋がりがある日本人の手を借りながら、情報を必要とする当事者の方々の元まで届ける。 

2-1. 現在日本に滞在している外国人の方々が安全にかつ安心して生活を続けるためにどのような情報を必要としているのか、またその情報を取得したり、助けてくれる人を見つけるためにどのような困難を抱えているのか、アンケートを用いて調査する。
2-2. 在留外国人の方々がコミュニティの中で訪れる場所(日本語教室/保育園/職場など継続的に通う場所)の地域住民に、行政が運営する外国人相談事業を知ってもらう。そして地域住民の方々に、情報を必要とする在留外国人の方々を相談事業へつなげていただく、という草の根的な取り組みへの参加を促進する。
2-3. 2-1の調査で分かったことや、情報収集および翻訳活動を通して得られた知見をレポートにまとめたり、noteやTwitter、Facebook上で報告したりする。このような報告を通して、非常時における在留外国人の方々への情報発信の重要性について一般に広く周知する。

※ 2020年4月21日のウェブサイト公開時点では「やさしい日本語」と英語にのみ対応していましたが、同年5月10日には韓国語、簡体字、繁体字、フランス語、スペイン語、イベリアポルトガル語、アラビア語、ベトナム語を、同年5月16日にはドイツ語とタガログ語を、同年5月21日にはインドネシア語、同年6月2日にはブラジルポルトガル語、同年6月10日にはウルドゥー語を加えた、合計16言語で情報発信を行ってきました。第2期では、発信言語の整理・追加を行う予定です。

活動を通じて大事にする価値観

以上の活動を通じて、我々は以下のことを守るべき価値観として設定し、活動やその成果がこれらに反していないか常に気にかけます。

◆我々はメディアではない
我々はメディアのように現在の状況や政府の対応などについて、評価や批判を行うことを目的としていません。政府や自治体、メディアが発信した情報の中で、在留外国人の方々が生活を営むために必要なものを、そのまま意味を変えずに正確に翻訳し、届けるのが役割です。

情報の正確さを最優先する
必要な情報をできる限り迅速に届けられるように努力しますが、情報の正確さ(factfulness)に勝る価値はありません。不正確な情報を受け取った人は間違った行動をし、その結果として誰かの命を危うくすることさえあるということを常に肝に銘じます。
大手のメディアが発信した情報でも、できる限り政府や行政機関が発信した一次ソースにあたって内容を確認します。逆に、政府や行政機関が発信した情報でもその内容についてメディアから疑問が呈されている場合にはその経緯を確認した上で、掲載の判断を行います。また、政治的に中立であることを心がけ、イデオロギーに引っ張られてファクトを曲げることが無いようにします。さらに、科学的・政策的に議論が分かれていること、何が正しいのかまだよく分かっていないこと(例えば、新型コロナウイルスに何の薬が最も効くのか、各国で感染拡大のスピードが違うのは何故か、といったこと)については扱いを控えます。
記事の掲載にあたっては、内容に誤りが無いかプロジェクトの運営リーダーによるチェックを行います。また、翻訳においても文法や語彙に誤りが無いか、伝わる意味やニュアンスに齟齬がないか、ネイティブスピーカーやネイティブレベルの語学力をもったスタッフによるチェックを行います。
※ 情報の正確性を確保するために我々が行っている取り組みについては、この記事からご覧いただけます。

謙虚に、外部にオープンでいる
このプロジェクトの中核は、東京外国語大学の学生や、卒業したばかりの若者により運営されています。
プロジェクトで目指していることや活動の内容を積極的に外部に公開し、指摘や批判に真摯に耳を傾けることで、プロジェクトを継続的に改善します。また、他団体・機関様方からの支援の申し出も素直に受け入れ、プロジェクトをさらに充実させていくための協働にも取り組んでいきます。

もしここでの内容に疑問や指摘したい点がある場合には、以下までご連絡いただけますと幸いです。
メール:covid19.multilingual.jp@gmail.com
宛先:COVID-19 多言語支援プロジェクト
代表 加藤 万結(かとう まゆ)

完全ボランティアワークですが、ウェブサイトの運営に少額ながらかかる費用を賄うため、ほんの少しだけご支援いただけますと幸いです。首都圏に住む外国人の方が周囲にいらっしゃれば、ウェブサイトやTwitter、Facebookを拡散いただけるだけでも大きな助けになります。