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情報の正確性確保の取り組みについて

私たちは新型コロナウイルスに関する情報を多言語化して発信しています。極めて多種多様の情報がやりとりされるこの時代、こと病気については真偽不明の多様な言説がインターネットで流布されています。新型コロナウイルス感染症を含む病気についての情報発信は、人の生死に関わるものです。私たちは、人の命をも左右しうる情報を発信するということの社会的・道義的責任に真剣に向き合うため、以下のような取り組みを通じて情報の正確性を確保することに努めています。


1.私たちは行政機関や大手メディアが発信した情報の中で正確なものを、そのまま忠実に訳しています

私たちは新聞やニュースサイトのような、いわゆる「メディア」ではありません。私たちのウェブサイトは、国や自治体、大手メディアが公式に発信した情報をまとめたものを掲載しています。日本に住んでいる外国人の方々を支えるため、私たちはそうした情報をわかりやすい形にし、翻訳しています。感染症に関する知識も乏しい一般人である私たちは、学者や専門家たちのように「見解を発表する」ことや「将来の予測を立てる」といったことを決して行いません。批判や必要以上の解説は行わず、情報をそのまま正確に訳し、伝達するのが私たちの役割です。私たちは政治的な議論に立ち入ることもありません。執筆する記事も政治的に中立であることを心がけています。

また、大手メディアに記載されている内容であっても、その内容の元となっている政府や自治体の公式な発表を可能な限り確認しています。さらには、政府が発表した情報であっても、複数のメディアから疑義を呈せられている場合は、経緯を確認した上でサイトへの掲載の可否を判断しています。

掲載される内容は、本プロジェクトの運営メンバーによる複数回のチェックを経たのちに、翻訳・公開されています。翻訳それ自体についても、誤解が起こることのないよう必ずネイティブスピーカー、もしくはその言語に熟達したスタッフ(CEFR C1 以上の有資格者)によるチェックを行っています。

2.私たちは無理な情報発信を行いません

このプロジェクト及び、そのウェブサイト「COVID-19 多言語情報ポータル」は有志のボランティアによって運営されています。私たちは、普段は社会人や学生として生活しており、感染症のエキスパートや医療従事者ではありません。よって、私たちは、高度に専門的な情報は発信しません。具体的には、感染拡大状況の予測や、新型コロナウイルス感染症にどのような薬が有効かといった専門的な議論などです。また、私たちは科学的・政策的に議論が分かれている事柄も、扱いません。ましてや、そうした情報の真偽を判断することもありません。

3.私たちは、執筆者の管理と研修を行っています

発信する情報の選定や、翻訳といった作業は厳密に構造化・マニュアル化されています。個人による無責任な情報の発信がなされることがないよう、執筆者は自らが書いた原稿をそのままサイトに掲載することはできません。プロジェクトの中心的な運営メンバーが責任を持って確認したあとで初めて、オンライン上で発信することができます。
 
また、執筆にあたるメンバーは、新型コロナウイルスについて情報発信することの責任を十分に理解している人物だけで構成されています。私たちは「学生の単なる思いつき」で行動しているのではありません。プロジェクトの運営にあたっては、noteの他の記事からもご覧いただける通り、中心メンバーが指針を決定し、それをプロジェクト全体で共有して動いています。グループのメンバーには、ここにあるようなプロジェクトのコアとなる価値観、特に情報の正確性を大切にすることに関して同意をしてもらった上で、それぞれの作業をお願いしています。
 
こうした指針は記事の執筆の段階においても存在しています。私たちは上記に掲げるような取り組みが遵守されるよう、情報収集・整理から翻訳までの作業にあたるメンバー全員の研修を行っています。執筆や翻訳で注意すべき点をガイドライン化し、全員が作業やその責任について一度学習した後に筆をとることになっています。


私たちは以上の取り組みを、ウェブサイトにおいて発信する情報の正確性を担保するために行っています。


理解することのできる言語で書かれた情報が存在し、その情報が正確であるということは、日本に住む外国人の方々にとって重要であるとともに、私たち日本人にとっても大切なことです。

新型コロナウイルスの感染が拡大し、世の中が混乱している今、既に述べた通り誤った情報は命取りともなりかねないものです。それによって外国人の方々が危機的な状況に陥ってしまったら、それは日本という国が国際的な信用を失うばかりでなく、国民である私たち一人ひとりに対する世界の信頼が失われることにつながりかねません。

外国人の方々は、私たちと共に日本という国や社会を形作る一員です。新型コロナウイルスが猛威をふるう以前、多くの外国人観光客が日本を訪れていました。現在でも建設業や農業、漁業、サービス業といった国の基幹となる産業で、多くの外国人が働いています。彼らは、事実、私たちとおなじように日本という国を支えているのです。そう考えると、彼らが安心できる環境であることが、お互いにとっていかに大切であるか理解できます。

日本に住む外国人の方々に向けて「正確な情報発信をする」ということは、日本という国が、そして私たち自身が国際社会と真剣に向き合っているということです。さらにそれは、国際社会の一員として、「誰も取り残さない世界」を実現しようという姿勢の表れでもあります。外国人であってもこのような状況下で安心して暮らせる環境であることは、この混迷を極める時代において大きな魅力として世界の人々の目に映るでしょう。
 
私たちがそうして得るものは、しかし単なる国際的な評判にとどまらないはずです。文化や言語が異なる人々と手をとりあい、共に苦難を乗り越えられるということは、何よりもまず私たちの人間的な気高さの証明であるはずだからです。

多文化共生社会の構築、すなわち「自らとは異なる背景を持った他者に自らを開く」ということは、何も日本人と外国人という関係性に限った話ではありません。私たち自身の内にも存在しているはずの多様さを受け入れられるかどうかが、この新型コロナウイルスの一連の事態を乗り越えられるか否かにかかっている、と私たちは信じています。


完全ボランティアワークですが、ウェブサイトの運営に少額ながらかかる費用を賄うため、ほんの少しだけご支援いただけますと幸いです。首都圏に住む外国人の方が周囲にいらっしゃれば、ウェブサイトやTwitter、Facebookを拡散いただけるだけでも大きな助けになります。